プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2020/03/05 (Thu)
詩
カザフスタンから来た
優しい女性看護師が
僕の脚をさすりながら
もう痛くないかと聞く
もう痛くないと言うと
良かったと嬉しそうに言う
カザフスタンはどんなところか聞くと
日本語はよくわからないと言う
いつ退院できるのか聞くと
記録を見ながら
早ければ明後日には退院できると言う
恋人はいるのか聞くと
日本語は難しいけれど
夏の蒸し暑さにはようやく慣れたと言う
夜が白み始めている
忘れるためだけに見る夢を
見ている人がいる
看護師は僕の脚をさすり続けたまま
今年は海に行きたいと言う
誰に教わったのか
クラゲは大丈夫かと言う
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2020/03/04 (Wed)
詩
港で生きてると
いろんなことがあるよ
と、港の猫は言った
港で生きてないと
いろんなことはないの?
と、僕は聞いた
港以外のところで生きてないから
よくわからない
と、猫は答えた
海からの風に
体毛がさざめくのがわかる
今まで起こったことが
いろんなこと、と呼べるのか
考えてみた
猫は小さい
僕は大きい
2020/03/03 (Tue)
詩
食卓の上に
水の入ったコップ
そのすぐ脇を
ランナーたちが走っていく
誰も水を取らないから
ここは
給水所ではないらしい
台所から夕食の支度をする
包丁の音が聞こえる
やがて月が昇れば
台所は再び
冷たくなるだろう
2020/03/02 (Mon)
詩
ウミウシの背丈より
大きくなった僕の子供が
草原に立って
外国人になる
痛みのない蝉が
辞書の中で鳴く
抜け殻でできた橋梁が
丁寧語で崩落を始める
通訳の人は母国語を忘れ
手紙には
空白だけが綴られていく
僕と僕の子供が草刈りを始めると
二人の間に
薄い国境線が引かれる
汗が饒舌に
僕らそのものになる
夏なのに
どちらからともなく
ごめんなさい、と言う
その時の笑顔が
今でも忘れられない
これからも
忘れられない
2020/03/01 (Sun)
詩
テーブルの下に
豆腐が落ちていた
原形がわからないくらいに
ぐちゃぐちゃに崩れていた
世を儚んで
飛び降りたのだ
窓を開ける
初夏の風が吹いて
部屋の中を涼しくする
豆腐を集め
庭の隅に埋めた
豆腐屋でその話をすると
お店の人は黒板の正の字に
一本付け足した
今日のおすすめ品は
厚揚げらしい
2020/02/29 (Sat)
詩
世界は晴れあがっています
わたしたちの頭は禿げあがっています
この頭の表皮に繁茂している
おびただしい髪の毛がすべて
アデランスだと言っても
あなたは信じるでしょう
でも心配はいりません
わたしの頭の中は
アートネイチャーのことで
いっぱいなのですから
髪の毛には海藻が良いと聞きます
聞いたのはわたしたちの耳です
退化していく途中で
声や音しか聞くことのできなくなってしまった
そんな儚い耳です
禿には海藻が良いと聞きます
けれど、海のない所で育ったわたしたちには
何が海藻であるのか
何が海藻でないのか
区別がつきません
区別がついたとしても泳ぐことができません
泳げないので溺れることもできません
ですからそれ以上ひっぱらないでください
禿げあがったわたしの頭皮が反転して
そこにあるのは青い空です
どこまでもずっと青い空です
わたしたちが足を滑らせて
落ちることしかできなかった
世界中のあの晴れた空です
2020/02/28 (Fri)
詩
砂の喫茶店で
椅子を叩いているうちに
夕暮れとなり
列車は少しずつ走っていた
コーヒーのお代わりは半額
けれど労役が発生し
古くからの友だちはみな
去ってしまった
入浴の準備をするために
すいません、と
マスターが犬の散歩にでかける
店番は卵の殻を割り
オムレツを焼いているけれど
誰が食べるのか
何か月経ってもわからない
砂が風に運ばれて
降り積もる音がする間に
湿った喉を雑然と乾かす
構造は海に似ているのに
余りものが出たらしい
という声だけは
よく聞こえた
2020/02/27 (Thu)
詩
区画整理された明方の街を
アフリカゾウと一緒に駆ける
低体温の命を
ひとつずつ持って
やがてぼくらは眠くなり
街は
行き止まりになるだろう
それでも幸せだった
何もかもが片思いだったけれど
幸せだった
2020/02/26 (Wed)
詩
夜、ベッドの中で
妻はいつもより濡れている
ぎゅっと抱きしめると
ぼくの腕の中で
あっけなく崩れていった
豆腐だった
水切りが足りないことに
どうして今まで
気づいてあげられなかったのだろう
そんなやりきれない気持ちになって
明日は朝から
湯豆腐にしようと思う
2020/02/25 (Tue)
詩
喉が渇いたので
醤油を飲んでいたら
目が痛くなった
目薬と間違えて
醤油を差していた
まるで
お寿司のように
空っぽになった
醤油を探して
東京を歩く
薬屋はたくさんあるのに
どうしても
お寿司屋が見つからない
目薬だけが
両手から
溢れそうになる
やがてぬるぬると
東京の日は暮れる
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