プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2020/02/24 (Mon)
詩
明方の台所で
豆腐がひとり
脱皮をしていた
家の者を起こさなように
静かに皮を脱いでいた
すべてを終えると
皮を丁寧に畳み
生ごみのところに捨て
冷蔵庫に入った
夕食は冷奴だった
僕は明方に見た
豆腐の脱皮の光景を
妻に話した
何、それ
と言って妻は笑った
豆腐も笑った
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2020/02/23 (Sun)
詩
炎天下に日傘を差すと
エイだった(魚の方の)
図鑑に書いてあるとおり
危険な棘に注意しながら
そのまま差して歩く
エイは不機嫌な様子で
時々、乱暴にヒレをばたばたさせる
なるべく目を合わせないようにするけれど
エイがわたしの目を探しているのが
雰囲気でわかる
直射日光を浴びて
さすがにエイもぐったりしてきた
休憩するために
一番近くの水族館に入る
係の人に事情を話すと
エイを水槽に放してくれた
わたしには別の水槽を
用意してくれた
2013/03/21 (Thu)
詩
夜更けに植物たちの呼気が肺胞を満たし
ぼくはしずしずと座席におぼれていく
鶏頭の形をした虫みたいな小さな生き物が
呟きのように車内灯に集まり始めている
窓の外では乗り遅れた人が持て余した手で
自分の柔らかい体を触りながら
出発を心待ちにしている様子が見て取れる
かつて駅弁を買うために
真っ暗なホームに一人降り立った父は
二度と帰ることはなかった
後日、配達人になり成功をおさめたと
母の独り言でぼくは知ったのだった
湿った掌で手書きの切符がふやけたまま
最終列車はホームを滑り出す
植物たちは受粉を終え
恍惚の中、一斉に産卵を始める
2013/03/19 (Tue)
詩
ぬかるんだバス停で
いやらしい下半身を
露出した時計
ポピーの花束を持って
佇んでいる
金属製のモノを
口に含むと
すぐに射精し
その異物を手に吐き出せば
様々な言語の断片で
悩んだ跡が
それなりに散見された
果てた時計は
ぐなぐなになり
むしろ
ゴム製のようにも見えたが
曖昧に干からびてのち
植物の茎などとも
見分けがつかなくなった
2013/03/17 (Sun)
詩
ぼくの細胞が裸になった
ストリップもないだろう、と
あわてて上着を被せた
細胞は檸檬のように
ゴルジ体を吐き出し
ミトコンドリアを叩き付け
軒下に吊るされた
今日は誰と
話をしたわけでもないけれど
つまりそれは
ぼくのぼやけた
死体にちがいなかった
2013/03/14 (Thu)
詩
豆腐を食べているうちに
豆腐のことが気になり始めた
豆腐の色はどうだったか
豆腐の形はどうだったか
匂いや味はあったか
どのように崩れ
何を受け入れ
何を拒むのか
すぐにでも豆腐屋に行って
確かめたいけれど
今は豆腐を食べるのに忙しい
いつまでもなくならない豆腐を前に
長梅雨は明ける
2013/03/13 (Wed)
詩
野原に自転車が倒れていた
車輪が外れていたので
持っていたアイロンで
直すことにした
うまく直せないでいると
両親と兄がやってきた
みんなアイロンを持っていた
あれこれしているうちに
いつしかトランプ遊びが始まった
家族でトランプをするなんて
いつ以来だろう
カードがばれないように
うまく隠しながら
蜜柑を好きなだけ食べた
やがて一人、また一人とあがり
順に野原から帰っていった
仕方なく
再び自転車を直し始めた
コンセントが入ってないことも
とうに知っているはずなのに
気づかない振りをして
アイロンを使い続けた
2012/08/03 (Fri)
詩
ぼくの骨が溶けだして
飴玉のような
真っ白な塊になる
飴玉だよ、と
近所の子供にあげると
骨みたいな味がする
そう言って無邪気に笑う
骨の無いぼくは
ぐにゃぐにゃの体で
自転車にも乗れない
それでも明日には慣れて
乗れる気がする
自転車とは
そういうものだ
2012/08/02 (Thu)
詩
深夜、きみが
コップを割ってしまった
きみの夢の中で
思い出の品だったのだろうか
きみは泣き出して
泣き止まなかった
ぼくはきみの夢の中で
ただおろおろするばかりだった
翌朝、夢のことなど
すっかり忘れたかのように
ぼくらは簡素な朝食をとった
食事を終えると
きみは台所に行って
静かにコップを割り始めた
物は思い出ではないし
思い出は物ではない
それで構わない気がした
ぼくも一緒になって
コップを割った
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