プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2020/03/17 (Tue)
詩
冷蔵庫を買いに出かけた
途中、空港に寄って
パイロットの友人と会った
友人はペットのモンキーと遊んでいた
モンキーは滑らかに動いていた
餌も食べていた
週末には海に行くと言った
空港の脇道を抜けて
家電量販店に向かった
冷蔵庫売り場にはたくさんの冷蔵庫が並んでいた
店員さんはお勧めの冷蔵庫の前に案内してくれた
それから冷蔵庫の型番を読み上げてくれた
いろいろな型番があったけれど
結局気に入った色のを買うことにした
店員さんも週末に海に行くと言った
面識のない二人が偶然海で会ったら
どんな顔をするのだろうか
冷蔵庫は四、五日以内に届くそうだ
その間に起こりうる不便なことと
不便ではないことをいくつか考えてみた
帰りに遠回りをして書店に寄った
昔ここにいた友人は
今はもういない
冷蔵庫を使うのに役立つ本を買った
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2020/03/16 (Mon)
詩
身体の中に
雨が降る
雨は水になる
集めると
水になる
川の字になって寝る
真ん中は
いつも私だった
結婚し、子どもが産まれ
いつしか右端で
身体を少し曲げながら
寝るようになった
明方、安宿の窓を開ける
川の音がする
誰が名付けたのか
雨が降ってる
2020/03/15 (Sun)
詩
百葉箱に住んでいた校長先生が
退職することとなった
わたしたちはそれを寂しいことと思い
お別れの言葉と
鯖を送ったのだった
美味しい鯖ですね、と
校長先生は美味しそうに食べた
校長先生が鯖を食べるところを初めて見たし
鯖が好きだということも初めて知った
退職後は海の見える百葉箱に引っ越しをするそうだ
これから鯖を見るとみんなのことを思い出します
と言うけれど
わたしたちを見ると鯖のことを思い出すのだろうか
それとも生きることは
みんなに等しく辛いことなのだろうか
遅くならないうちにお帰りなさい
ということを校長先生は言って
わたしたちは適宜解散し
卒業を終えた
2020/03/14 (Sat)
詩
霊安室に母が椅子を並べている
「みんな死んだのよ」
いつこの仕事に就いたのだろう
死んだ体を扱うように
丁寧な手つきで並べていく
手伝おうとすると
「いいのよ、毎日、お仕事、大変でしょう」
と言う
父のことを聞くと
「最初からいないでしょう」
俯いて答える
そんなはずはないと思い
父の特徴を思いだそうとするけれど
すべてが椅子の特徴になってしまう
遊園地にも三人で行ったはずなのに
母と二人で椅子に座ったことしか
もう思いだせない
乾いた木と金属の音が室内に響く
「あなたは人だから」と呟いて
母は下を向いたまま椅子を並べ続ける
胸につけた名札が揺れる
一字違いで花の名前になれない
母は昔からそういう人だった
2020/03/12 (Thu)
詩
上りのエスカレーターに
幽霊が立っていた
ぼんやりとネクタイを締めて
小さな咳をしていた
駆け上がる人が
春のように
体をすり抜けていった
見えない、
それだけで幽霊だった
上の階につくと、今度は
下りのエスカレーターに乗った
おそらく、その繰り返しで
幽霊の一日は過ぎていく
そして今日も私は
誰かの記憶の中で
咳をしているだろう
あやふやになった姿かたちで
それはまた
幽霊とも違うだろう
2020/03/11 (Wed)
詩
都会のカラスが
明方、ゴミをついばむ
世界は汚れる
汚れた世界は
まどろみながら
都会の夢を見る
都会の夢の中で
カラスは増え続ける
唐突に産声
夢は端から破綻し始め
都会は受け入れる
ひとつの命を
2020/03/10 (Tue)
詩
物、その影は
量となり
嵩となる
影という影は
新たな影をつくり
高く目を瞑ると
擬音語のような
か細い音を立てて
雨が降り始める
わたしは先ず
折り急いだ
紙のことを思い
それから
身振り手振りで
花が咲いたことを
あなたに
伝えようと思った
2020/03/08 (Sun)
詩
今日、豆腐は
朝から不在だった
テレビの画面でも
新聞や本などの印刷物でも
その姿を見かけなかったし
豆腐、という言葉すら
出てくることはなかった
妻との他愛もない会話にも
豆腐に関する話題は
何ひとつとしてなかった
寝る前にふと
豆腐のことを思い出して
僕は冷蔵庫を開けた
何をしてるの、
という妻の問いかけに
何でもない、と僕は答え
扉を閉めた
十数年いっしょにいても
解りあえないことのいくつかは
お互いすでに諦めていた
2020/03/07 (Sat)
詩
豆腐のプラモデルを買った
部品が全部そろっているか確認した
思ったよりもたくさんの部品があった
毎日空いた時間に少しずつ組みたてた
その間に何通かのダイレクトメールと
公共料金の請求書が届き
飼い猫は近所の猫と恋に落ちた
数日後、きれいな直方体の豆腐ができた
慣れた人はわざと角などを崩すらしい
薬味はお好みで
と説明書にあったので
ネギと生姜を買いに出かけた
もう会えない人もいるけれど
昨日より少し
幸せな気がした
2020/03/06 (Fri)
詩
水面、生まれたての木漏れ日
酸化していく時計と
ミズスマシのありふれた死
導火線を握ったまま眠る
わたしたちの湿った容器は
身体と呼ばれることに
すっかり慣れてしまった
朽ちかけた桟橋から
手漕ぎの小舟が出航する
数えきれないほどの花粉と
沈黙を積んで
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