ペーパー・シープ（花）

　
靴が発光している
朝の
淋しいところで
　
漁協の職員が
咲いた
　
僕はお花畑の
人みたいに歩く
　　

ペーパー・シープ（鳴き方）

鳴き方を忘れた
紙の羊の代わりに
今日は僕が
鳴いているらしい

窓の外には
長方形のホテル

清掃局の車が
積乱雲を
斜めに横切っていく
　

ペーパー・シープ（休み）

採取した指紋が
すべて蝶になって
飛んでいった
　
鑑識係の実家では
今日も一日中
雨が降ってた
　
妊婦がひとり
味見をしている
長い休みの
か細い台所で

ペーパー・シープ（日傘）

　
夏交番の
日陰
女は
ゼリーに飛び込む

僕はその人を
お母さん、と呼び
誕生日のような日に
日傘を贈った
　
　

ペーパー・シープ（紙の羊）

まだ幼い車掌の
ポケットの中で
紙の羊は
長く生きられない

かつては命の一部として
穏やかな日の光を
浴びていた気もするけれど

めー、と
ひとつ小さく鳴いて
もう誰に
会うこともない

ペーパー・シープ（指）

　
潜水艦の側で
男の子が風に吹かれてる
まるで交差点のように

滑舌が悪いから
今日は何処にも行けない

僕はシオカラトンボを
指で触るのが楽しい