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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
56
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2011/01/08 (Sat)

酢を飲んで 改札口で 待っている


汽車に乗り 行ってみたいな 試着室


犬走る 急行列車を 追いかけて


急行の 窓から見たら 走る犬


試着室 あなたの匂い 酢の匂い


秋雨に 降られて濡れる 試着室


雨が降り あなたは服を 破り捨て
 

掃除機の 裏に住んでる 酢を飲んで
 

明け方に 生命線の 長さ知る
 
 
酢を飲んで むせているうち 夜は明け
 

言葉には できないけれど むせている

 
共通の 言葉で話す 牛と蟻


酢醤油で うどんを食べた 停留所
 
 
停留所 アジの開きが かわいそう
 
 
牛と蟻 並んで撮った レントゲン


レントゲン 骨だけ写す 秋の空
 
 
秋の空 飛行機雲の 夢を見る
 
 
ポチなのに 猫の姿で 呼吸する
 
 
予報士が 天気予報で 泣き崩れ
 
 
唐突に 右の手つかむ 左の手


冷蔵庫 イルカと背丈 比べた日


ループする そして明日へと ワープする


初霜や 交番横の 責任者


試着室 出入禁止の ヒキガエル


たらちねの 母は流れる ナイル川


生きたまま 寝ている人は 目をつぶり


ヒキガエル バッタに化けた 試着室


義理の父 泳いで渡る ミシガン湖


さようなら 酢を飲みながら 手を振った
 
 
新宿の マクドナルドに 眠る象
 
 
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2010/12/14 (Tue)


冷蔵庫 冷やしたいから 冷やしてる


洗濯機 洗いたいから 洗ってる


右を見て 左を見たら 眠ってる


霜月の 雨に降られて 眠ってる


椅子がある ただそれだけで 眠ってる


眠ってる 隣の人は 起きている


イレイザー レーザーだけは 出しません


イレイザー レーサー乗れば イレーサー

 
イチョウの木 胃腸の弱い きみだから
 

門に立つ 男の人が 父でした


ランドリー ドリームだけは 見せません


イレーサー 内緒だけれど 眠ってる


しんぶんし 逆さにすると 読みにくい


コイン入れ ボタンを押すと ジュース出る


コイン入れ ボタンを押すと 切符出る


ジンギスカン 食べているのは チンギス・ハン


ジンギスカン 作っているのは フビライ・ハン


ジンギスカン 売っているのが 父でした


コイン入れ ボタンを押すと ゲップ出る


ゲップ出る 平賀源内 エレキテル


薬師丸 ひろ子に似てる 安達祐実


安達祐実 ひろ子に似てる 薬師丸


鳴かぬなら 鳴くまで待とう 薬師丸


鳴かぬなら 鳴くまでずっと 眠ってる


五枚目の 表彰状が これですか


新しい 駐車場にも 虫がいる


しんぶんし 元にもどせば 読みやすい


ゾウがいて パンダのいない 動物園


動物園 ヒグマの前で 死んだ振り


鳴かぬなら 鳴くまで待とう 本能寺


正解を 答えた途端 朝が来て


満天の 星を見ながら 手をつなぐ


手をつなぎ 二人でずっと 起きている
 
 
いつまでも 忘れないでね 眠っても
 
 
2010/03/26 (Fri)
 
 
人形の折れた手首を持ったまま母の帰りを一人待ってた
 
 
説明しようとして絶命してしまった僕のレジュメが空へと
 
 
深夜、ヒツジが僕を数えている、可愛そうにまだ眠れないのだ
 
 
あと何度さよならを口にするのか、悲しくても悲しくなくても
 
 
不自由な右足をくすぐってみる。父が笑った。僕も笑った。
 
 
犬も歩けば棒に当たるけれどタロウとはもう歩けないだろう
 
 
みんな年を取ったね、おままごとみたいに笑ったり怒ったりして
 
2009/04/06 (Mon)
 
 
生き方の不器用な父がひとりヴァージンロードを駆け抜けていく
 
 
ベッドで遭難などしないように君のいびきを道しるべにする
 
 
ウソツキとキツツキの違いを述べよ、この戦争が終わるまでに
 
 
カマキリになります、両手が鎌になります、探さないでください
 
 
駐車場のように黙っていると車がきて僕をひいてしまう
  
  
子どもが電車ごっこをしている全車両禁煙席なんだろう
 
 
約束を果たすことなく嘘つきのまま生きてるぼく、死んでるきみ
  
 
2008/11/26 (Wed)
 
 
動物園の絵はいつも雨が降ってるあなたと行ったあの日から
 
 
手を繋いで坂道を駆け上ったね下る時に負けぬ速度で
 
 
母と二人ハンバーグをつくる夕日よりもきれいだったひき肉
 
 
ありがとうを言うと許された気がするたった一人星の鳴る夜
 
 
手を振って見送り終えた父がもう眠たい人の形をしてる
  
  
駐車場に牛が並んでいる淋しい僕のお葬式のように
 
 
雨上がりの動物園の匂いが好き。またあなたから生まれたい。
 
  
 
2007/10/06 (Sat)
ブランコに乗って何度も旅をしたね反抗期の君と僕とで


ジャングルジムの骨組みの向こうに君の悲しい生家が見えてる


シーソーしながら語りあった夢の驚くほどあっけない軽さ


愛を囁くカップルの足元に健康そうな犬のうんこが


深夜一人で鉄棒を舐めると金属の錆びた味だけがする


砂場のプリンもいつか乾いて風は歯型をつけて行くのだろう


影踏みも鬼ごっこも君と卒業したあの公園を最後に
2007/09/25 (Tue)
行方不明の洗濯機が二番線のホームで脱水していた


振り返ると家電フロアーの主任が裏口でまだ手を振ってる


今日もレンジの平和を願う君が両手でものを温めている


「いつも利用する乗り物は?」「掃除機!」っていったいそれ何のプレイ


室外機に腰かけて君と世界中のトマトを握りつぶした


冷蔵庫で初めて冷やしたものを誰もがいつか忘れてしまう


開け放たれた窓 消し忘れたテレビの波音 夏だけが終わる


2007/07/18 (Wed)

雨やみて雲雀の飛んだ水たまり

何を見て驚いたのか鯉のぼり

紫陽花がたくさんのいろ人みたい

桃をむく香りと北へ寝台車

空目指し向日葵たちが背比べ

アリが来てわたしの足を踏んでいる

夏の雲人の形を忘れた日

行く夏に音だけ残すオートバイ

通過する台風の目を犬と見た

朝きのこは静かに胞子を蒔いて

泥だらけ初めて作った雪だるま

2007/07/17 (Tue)
 

光合成が不得意の僕らにまた夏の陽が降り注ぐだろう


屋上のベンチに座り互いの塩分濃度を確かめ合った


生き物の忘れていった生ものが機体の上で腐りかけてる


メデューサが美容院に行き蛇たちの凄惨な夏は始まった


自分の名前をうまく並べかえると夏のものになれた気がする


絶滅した動植物をノートに書き連ねた真夏の記念日


お母さあん!叫びは誰が届けたのか碑の前でわたし呟く
 
 
2007/04/27 (Fri)
豚はどうなるんだ、と怒号が飛んだ連休前の特別会議


ファックスのそばに置かれた空き缶は明日誰かが捨てるのだろう


二度目の稟議書が読まれることなく机の上に放置されてる


唾つけてページをめくる指先にいつかは毒を塗ってやりたい


コピー機に隠れた窓の向こうはおそらく冷たい雨が降ってる


詳細は後ほど、と言ったきり夏の間に報告はなかった


課長が一人でシュレッダーの物真似をしているオフィスの休日

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* ILLUSTRATION BY nyao *