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こっそりと詩を書く男の人
  プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2007/01/30 (Tue)
簡単な申請をして
小さなお役所のソファーで
僕らは順番を待ってる
制度はいつも公平で
人に優しい
前に座っている子供が
しきりに咳きこみ
母親と思しき人が
その背中をさすっている
僕らは待ってる
君の手を握ると
届くものと届かないものとがあって
その愛しさに
泣きたくなってしまう
君に会えて良かった

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2007/01/30 (Tue)
今日は朝から
角を曲がる犬にたくさん会った
いま目の前を歩いているこの犬も
やがては角を曲がるのだ
君にその話をすると
頷きながら聞いてくれたけれど
僕がどれくらいの角を曲がってきたのかは
うまく説明できなかった
僕らいったいいつまで
命の真似事をしてるんだろう
こうしている間にも
どこかで犬が角を曲がってる
そう思ったのは
君の方だったと思う


2007/01/27 (Sat)
脊椎動物として生きる
その悲しみ

そして
珍しく雪が降った
朝の喜び

もし君が生まれてきたら
おもいっきり抱きしめて

そんなことのいくつかを
教えてあげたい
2007/01/25 (Thu)
ランドセルから鉄屑をまき散らし
小学生たちが歩いていく
賞味期限が切れて
生温くなった答案用紙を
噛み砕きながら
テレビで見るホームレスも
ここにはいない
家がなければ居てはいけない
なんて息苦しい
と言えば
君が笑う気がする
やがてみんな息をしなくなるのよ
そう言って
君が笑う気がする
2007/01/21 (Sun)
檻の中には
消しゴムがひとつあった
動かなかった
夜行性
と書かれていた
夜まで待ちたい
君は言ったけれど
その前に
閉園時間になってしまった
帰り道、赤信号で止まった
右左よく見て
二人で走って渡った
2007/01/21 (Sun)
鉛筆を指で回す君
鉛筆に指を回される僕
色の付いた服を着ている先生
お花畑の隣にある工場でつくられた黒板
下手糞なうそ
という言い訳

筆箱を空けると
いつもそこには青い空が広がっていた

みんなみんな
明日卒業です
2007/01/20 (Sat)
僕と同じ温度を保って
こぎ続けられた自転車が
雨を避けておさまってる

一匹の虫がサドルから落ちた
葉っぱしか食べられない虫
それ以外に見当がつかない

貼紙に書かれた
「駐輪場使用に当たっての注意事項」より
僕はきっと速く走ることができるはずだ
自転車なんか使わなくたって

冷蔵庫を買いに行った君が
そろそろ帰ってくる
迎えに来なくてもよい、というので
行かずに待ってる
2007/01/19 (Fri)
一晩中齧り続けていたんだろう
プラスチックの値札にたくさんつけられた
君の歯型

僕は茹でたカニをリュックにつめながら
君に謝る言葉を考えてる

遠く列の先では
レジ係の人が自分の仕事に忙しい
煩雑な手続きが多すぎて
「切ない」までたどりつけない
2007/01/18 (Thu)
改札口の向こうで
ピアノに蟻が集っている
きっと甘いんだろう

ハモニカを忘れてきた駅員が
時刻表に小さな落書をする
間もなく秋が来るのに
量が足りてないのだ

まだ君と僕とが出会う前の話
もしかしたらこれからも
出会わないかもしれない

2007/01/18 (Thu)
コンビニのレジから
僕らのタクシーがあふれ出すから
春はまた息苦しい

行き先も告げずに乗ると
君の家を通過して
犬小屋の屋根を壊してしまう

料金を体温で支払う
少しのおつりが返ってくる
手をつないだだけで伝わるなら
僕らは生まれてくる必要などなかった


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* ILLUSTRATION BY nyao *