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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2006/01/23 (Mon)
靴下を洗濯籠に投げる
途中、失速して
僕の知らない野原に落ちる

しばらくすると
一匹の美しい横顔の生き物が
くわえて行ってしまった

もう何も無くさないようにと
決めていたのに
気持ちと身体の境目あたりに
痛さのようなものがあって
少し疼いてる

家族の楽しそうな笑い声が
茶の間から聞こえてくる
おそらく楽しいのだろう
あの生き物にも僕にも
帰るべき場所があるのだ

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2006/01/19 (Thu)
何故降り積もったのか
僕らを組成する因子は
間違えることなく
ある日僕らを僕らにした

悲しみは毎日のように語られけれど
掌には幾ばくかの幸せが残されている
まだ誰も本当の悲しみなど
知らないのだから

やがて木々が芽吹く頃になると
解けた雪が地下の水脈を潤すように
僕らはまた僕ら以外のものに
還りたがるのだ
2006/01/19 (Thu)
なくしたものと
もういない人とが
ありえないシーソーで
つりあってる
そんな救いのない話しか
思い出せない
と証言台で男は述べたが
語尾はすでに
空気と区別がつかなかった
街のいたるところに
夏は来ていた
木陰で語られる愛は
いつものように眩いばかりだ

2006/01/15 (Sun)
きみは船長で
ぼくは車掌だった
二人でずっと
夕日のようなものを見ていたけれど
夕日だったのは
きっと僕たちにちがいなかった
海にも線路にも続くことのない
ロープでできた乗り物を最初に降りたのは
同じ悲しみを持たない
ぼくの方だった
2006/01/10 (Tue)
鉄の味が庭先をくるくる泳いで
昔の叔父さんに似ていた
遅すぎたわけではない
かといって早すぎたわけでもない
生まれてこないものも
生まれてくるものと同じくらいに
表札の所有者なのだから
夏の日が暮れる頃になると
もはや誰もが
迷信など信じなくなっていた
2006/01/09 (Mon)
重さ、とは
預かること
預かる、とは
許すこと
許されること

必然的に張り巡らされた
偶然によって
僕の細胞は君の細胞と出会い
やがてまたひとつの
重さとなった

雨が降っていた
雨の話をした
それ以外の話も
出来る限りたくさんした


2006/01/09 (Mon)
ソーダ水で出来た犬が
門扉に挟まり痛がっていた
放っておけばどこまでも
転がって行きそうな僕の身体は
僕の心の中でまだ眠り続けてる

橋を渡る
腐食した金属のようなものが落ちている
昨日も同じ場所にそれはあったが
昨日僕はそれを見ていない

指先の
さらにその先にある
指先について語ろうとすれば
言葉はいつも弱くて
確実に脆い
このバカ野郎めが
キラキラと真夏の日差し
シュワシュワと泡沫
2006/01/09 (Mon)
母さんは夜なべをしていたけれど
手袋の類は編んでくれなかった
やがていつものようにフジヤマがやって来ると
腕相撲やカードの相手をし
それでも決してゲイシャ・ガールみたいに
振舞うことは無かった

その間少し離れたところで
僕は計算ドリルを三ページ進め
それから国語の教科書も上手に朗読した
ボンはお勉強家さんやなあ
フジヤマは何度か声をかけてきたが
僕はスシもテンプラもひどく不得意だった

もうお休みなさい
母さんの言葉に目を閉じる
どこか遠くから空襲警報のサイレンが聞こえ
瞼の向こうにある灯りはすべて消えていった

翌朝、というには
あまりに昔のことのような気がする
母さんと僕の亡骸が
誰もいないジパングの焦土に打ち上げられたのは
2006/01/03 (Tue)
久しぶりに三人で手を繋ぐ
いつもより寒い冬
汗をかいた小さな掌は
どことなく妻に似ていた

歳を聞けば指で
三つや五つを作っていたのに
今では両手の指すべてを使わなければならない
もちろんそんな仕草をすることなく
普通に十歳と答える
年月が経つ、ということには
そういうことまでもが含まれている

縁起をかつぐのが好きな妻が
僕と娘に五円を渡す
恐らくこの日のために取っておいたそれには
昨年の年号が刻印されていて
落ち着かないくらいに光っていた

手を合わせる僕らの背中の方から
他の人たちの声が聞こえる
世界の平和、なんて
どうして願ってしまったのだろう


2006/01/01 (Sun)
リモネン、セプテンバー
君の名で良かった
繋がり
繋がろうとする
僕らの身体は
いつも酸っぱくて
どこかが潔く
欠落している

育った街で
僕らに罪は無い
同じくらい
罪に僕らは無い
リモネン、セプテンバー
生まれた街のことは知らない
何故なら僕らは
まだ生まれてなどいないのだから

飛行機がまっしぐらに飛ぶ
その空は明方近くに
失われていた
誰も聞くことの無かった
ひとすじの悲鳴とともに
リモネン、セプテンバー
僕が君の名で良かった


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* ILLUSTRATION BY nyao *