プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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靴下を洗濯籠に投げる
途中、失速して
僕の知らない野原に落ちる
しばらくすると
一匹の美しい横顔の生き物が
くわえて行ってしまった
もう何も無くさないようにと
決めていたのに
気持ちと身体の境目あたりに
痛さのようなものがあって
少し疼いてる
家族の楽しそうな笑い声が
茶の間から聞こえてくる
おそらく楽しいのだろう
あの生き物にも僕にも
帰るべき場所があるのだ
途中、失速して
僕の知らない野原に落ちる
しばらくすると
一匹の美しい横顔の生き物が
くわえて行ってしまった
もう何も無くさないようにと
決めていたのに
気持ちと身体の境目あたりに
痛さのようなものがあって
少し疼いてる
家族の楽しそうな笑い声が
茶の間から聞こえてくる
おそらく楽しいのだろう
あの生き物にも僕にも
帰るべき場所があるのだ
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何故降り積もったのか
僕らを組成する因子は
間違えることなく
ある日僕らを僕らにした
悲しみは毎日のように語られけれど
掌には幾ばくかの幸せが残されている
まだ誰も本当の悲しみなど
知らないのだから
やがて木々が芽吹く頃になると
解けた雪が地下の水脈を潤すように
僕らはまた僕ら以外のものに
還りたがるのだ
僕らを組成する因子は
間違えることなく
ある日僕らを僕らにした
悲しみは毎日のように語られけれど
掌には幾ばくかの幸せが残されている
まだ誰も本当の悲しみなど
知らないのだから
やがて木々が芽吹く頃になると
解けた雪が地下の水脈を潤すように
僕らはまた僕ら以外のものに
還りたがるのだ


なくしたものと
もういない人とが
ありえないシーソーで
つりあってる
そんな救いのない話しか
思い出せない
と証言台で男は述べたが
語尾はすでに
空気と区別がつかなかった
街のいたるところに
夏は来ていた
木陰で語られる愛は
いつものように眩いばかりだ
もういない人とが
ありえないシーソーで
つりあってる
そんな救いのない話しか
思い出せない
と証言台で男は述べたが
語尾はすでに
空気と区別がつかなかった
街のいたるところに
夏は来ていた
木陰で語られる愛は
いつものように眩いばかりだ


きみは船長で
ぼくは車掌だった
二人でずっと
夕日のようなものを見ていたけれど
夕日だったのは
きっと僕たちにちがいなかった
海にも線路にも続くことのない
ロープでできた乗り物を最初に降りたのは
同じ悲しみを持たない
ぼくの方だった
ぼくは車掌だった
二人でずっと
夕日のようなものを見ていたけれど
夕日だったのは
きっと僕たちにちがいなかった
海にも線路にも続くことのない
ロープでできた乗り物を最初に降りたのは
同じ悲しみを持たない
ぼくの方だった


鉄の味が庭先をくるくる泳いで
昔の叔父さんに似ていた
遅すぎたわけではない
かといって早すぎたわけでもない
生まれてこないものも
生まれてくるものと同じくらいに
表札の所有者なのだから
夏の日が暮れる頃になると
もはや誰もが
迷信など信じなくなっていた
昔の叔父さんに似ていた
遅すぎたわけではない
かといって早すぎたわけでもない
生まれてこないものも
生まれてくるものと同じくらいに
表札の所有者なのだから
夏の日が暮れる頃になると
もはや誰もが
迷信など信じなくなっていた


重さ、とは
預かること
預かる、とは
許すこと
許されること
必然的に張り巡らされた
偶然によって
僕の細胞は君の細胞と出会い
やがてまたひとつの
重さとなった
雨が降っていた
雨の話をした
それ以外の話も
出来る限りたくさんした
預かること
預かる、とは
許すこと
許されること
必然的に張り巡らされた
偶然によって
僕の細胞は君の細胞と出会い
やがてまたひとつの
重さとなった
雨が降っていた
雨の話をした
それ以外の話も
出来る限りたくさんした


ソーダ水で出来た犬が
門扉に挟まり痛がっていた
放っておけばどこまでも
転がって行きそうな僕の身体は
僕の心の中でまだ眠り続けてる
橋を渡る
腐食した金属のようなものが落ちている
昨日も同じ場所にそれはあったが
昨日僕はそれを見ていない
指先の
さらにその先にある
指先について語ろうとすれば
言葉はいつも弱くて
確実に脆い
このバカ野郎めが
キラキラと真夏の日差し
シュワシュワと泡沫
門扉に挟まり痛がっていた
放っておけばどこまでも
転がって行きそうな僕の身体は
僕の心の中でまだ眠り続けてる
橋を渡る
腐食した金属のようなものが落ちている
昨日も同じ場所にそれはあったが
昨日僕はそれを見ていない
指先の
さらにその先にある
指先について語ろうとすれば
言葉はいつも弱くて
確実に脆い
このバカ野郎めが
キラキラと真夏の日差し
シュワシュワと泡沫


母さんは夜なべをしていたけれど
手袋の類は編んでくれなかった
やがていつものようにフジヤマがやって来ると
腕相撲やカードの相手をし
それでも決してゲイシャ・ガールみたいに
振舞うことは無かった
その間少し離れたところで
僕は計算ドリルを三ページ進め
それから国語の教科書も上手に朗読した
ボンはお勉強家さんやなあ
フジヤマは何度か声をかけてきたが
僕はスシもテンプラもひどく不得意だった
もうお休みなさい
母さんの言葉に目を閉じる
どこか遠くから空襲警報のサイレンが聞こえ
瞼の向こうにある灯りはすべて消えていった
翌朝、というには
あまりに昔のことのような気がする
母さんと僕の亡骸が
誰もいないジパングの焦土に打ち上げられたのは
手袋の類は編んでくれなかった
やがていつものようにフジヤマがやって来ると
腕相撲やカードの相手をし
それでも決してゲイシャ・ガールみたいに
振舞うことは無かった
その間少し離れたところで
僕は計算ドリルを三ページ進め
それから国語の教科書も上手に朗読した
ボンはお勉強家さんやなあ
フジヤマは何度か声をかけてきたが
僕はスシもテンプラもひどく不得意だった
もうお休みなさい
母さんの言葉に目を閉じる
どこか遠くから空襲警報のサイレンが聞こえ
瞼の向こうにある灯りはすべて消えていった
翌朝、というには
あまりに昔のことのような気がする
母さんと僕の亡骸が
誰もいないジパングの焦土に打ち上げられたのは


久しぶりに三人で手を繋ぐ
いつもより寒い冬
汗をかいた小さな掌は
どことなく妻に似ていた
歳を聞けば指で
三つや五つを作っていたのに
今では両手の指すべてを使わなければならない
もちろんそんな仕草をすることなく
普通に十歳と答える
年月が経つ、ということには
そういうことまでもが含まれている
縁起をかつぐのが好きな妻が
僕と娘に五円を渡す
恐らくこの日のために取っておいたそれには
昨年の年号が刻印されていて
落ち着かないくらいに光っていた
手を合わせる僕らの背中の方から
他の人たちの声が聞こえる
世界の平和、なんて
どうして願ってしまったのだろう
いつもより寒い冬
汗をかいた小さな掌は
どことなく妻に似ていた
歳を聞けば指で
三つや五つを作っていたのに
今では両手の指すべてを使わなければならない
もちろんそんな仕草をすることなく
普通に十歳と答える
年月が経つ、ということには
そういうことまでもが含まれている
縁起をかつぐのが好きな妻が
僕と娘に五円を渡す
恐らくこの日のために取っておいたそれには
昨年の年号が刻印されていて
落ち着かないくらいに光っていた
手を合わせる僕らの背中の方から
他の人たちの声が聞こえる
世界の平和、なんて
どうして願ってしまったのだろう


リモネン、セプテンバー
君の名で良かった
繋がり
繋がろうとする
僕らの身体は
いつも酸っぱくて
どこかが潔く
欠落している
育った街で
僕らに罪は無い
同じくらい
罪に僕らは無い
リモネン、セプテンバー
生まれた街のことは知らない
何故なら僕らは
まだ生まれてなどいないのだから
飛行機がまっしぐらに飛ぶ
その空は明方近くに
失われていた
誰も聞くことの無かった
ひとすじの悲鳴とともに
リモネン、セプテンバー
僕が君の名で良かった
君の名で良かった
繋がり
繋がろうとする
僕らの身体は
いつも酸っぱくて
どこかが潔く
欠落している
育った街で
僕らに罪は無い
同じくらい
罪に僕らは無い
リモネン、セプテンバー
生まれた街のことは知らない
何故なら僕らは
まだ生まれてなどいないのだから
飛行機がまっしぐらに飛ぶ
その空は明方近くに
失われていた
誰も聞くことの無かった
ひとすじの悲鳴とともに
リモネン、セプテンバー
僕が君の名で良かった