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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
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58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2025/06/22 (Sun)
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2001/12/31 (Mon)
窓の外に桜が咲く頃
また会いに来ますという約束も

果たせぬまま
あなたは煙になりました

季節の移ろいとともに
桜は散るというのに
あの日の約束は散ることもせず

僕は嘘つきとして
生きています
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2001/12/30 (Sun)
「ふ」を付けただけで
不幸せになるのなら
最初から幸せなんていらない

「む」を付けただけで
秩序を失ってしまうような世界は
多分まぼろし

「み」を付けただけで
来るのだろうか
未来は

僕の中に広がっている荒野
「こ」が「ぼ」になったら

冬の波止場で
抱きしめてあげる

2001/12/30 (Sun)
昔々
あなたからもらった
魚の形をしたキーホルダーは

いつの間にか
泳いで行ってしまいました

だって私のポケットは
海とつながっていますから
2001/12/30 (Sun)
通勤電車の吊革につかまりながら
毎日午前3時に起床し
競馬の予想をしている
父のことを思う

書類を書く手をふと止めて
バイクで転倒し
右腕を骨折した
母のことを思う

遅い昼飯をとりながら
製薬会社の研究室で
しかめっ面をしている兄と
34で初めて身篭った
兄嫁のことを思う

故郷を思う時に浮かぶのはいつも
雨上がりの
濡れたアスファルト
2001/12/28 (Fri)
長い階段を降りて
一番深いところにある
3番線のプラットホームに立って

今日も僕は
列車に乗ることをしなかった

さっきの列車が
アメリカ行きだったら乗っていたのに
乗っていたのになあ
2001/12/26 (Wed)
矛盾した水槽の住人は
矛盾した椅子に腰掛け
矛盾したテーブルにクロスをかけ
矛盾したグラスで
矛盾したワインを飲む

矛盾した水槽の住人は
毎日が矛盾しているから
その矛盾した世界の中で
何が矛盾しているのかわからない

矛盾した水槽の外では
雪が降る
雪が降る
雪が雪として降る

こんなに雪の降る夜は
僕は矛盾した水槽の住人に
この白さを見せてあげたい
見せてあげたいのさ

あっ
あっ
あー
水槽に水を入れないで
入れないでください

魚がみんな溺れてしまいます


2001/12/23 (Sun)
開いている左目で
鼻の稜線に焦点を合わせ

瞑っている右目で
瞼の裏の模様をなぞれたとき

僕は
自身を知ることが
できるだろうか
2001/12/23 (Sun)
「うみ」
と書けば
白い波が寄せて返し

「そら」
と書けば
どこもでも青く

「もり」
と書けば
木々が香り

「とり」
と書けば
それは翼をもって飛びまわり

「まち」
と書けば
ああ、いろんな人が歩いているね

「いえ」
と書けば
小さなあかりが灯り
家族の笑い声がし

「かなしい」
と書けば
涙が止まらず

「あい」
と書けば
君がいつも側にいる

そんな魔法の「 」があったなら
僕はもう
詩なんて書かなくてすむのに



「 」は言葉を入れるところです
お風呂と間違えて裸で入ろうとしないでください
ゴミを捨てようとしないでください
カレーを作ろうとしないでください、鍋ではありませんよ
穴は決して空けないでくださいね
言葉が全部流れ出してしまいますから



ある日、泥棒がこっそりお金持ちの金庫から
「 」を盗み出しました
どんな財宝が入っているのか
わくわくしながら覗いたのですが
中に入っていたのは
「○▲*◎◇」
腰を抜かして動けないところを
警察に捕まっちゃったそうです
ちゃんちゃら可笑しいや



「よる」
が来て
空には大きな
「つき」
と煌く
「ほし」

あなたはどんな夢が見たいですか
「 」に入れてみましょう
僕は
「かいぞくせんにすみつくねずみになりたい」

2001/12/22 (Sat)
ビールを初めて飲んだのは
12の夏のことでした

親父と行ったナイターで
初めてビールを飲んだのです

さてさて、9回裏ツーアウト走者2、3塁
当たっている3番打者を敬遠だ
迎えるは最近不審気味の4番打者

僕が食べてたせんべいを
ひょいと取り上げバリバリと

代わりにビールをこの僕に
飲めと渡してくれたのです

さあ、プライドを傷つけられたバッターは
キッと投手を睨み付けます
押さえの切り札はマウンド上で仁王立ち

どうしていいのかわからずに
しばらく黙っていたけれど

親父が飲めと言ったので
ちょぴっと舐めてみたのです

おっと、ボール
9回裏ツーアウト満塁
ツーストライク スリーボール
いよいよゲームも大詰めです

初めて舐めたその味は
とっても苦いものでした

苦い苦いという僕に
親父は笑って言いました

「それが大人の味だ」

ピッチャー投げました
おおっと、これは

そして湧き上がる歓声とため息

あれから何年たっただろう
大人の苦さも少しはわかり
今日も生きてはいくけれど

ビールを飲むと思い出す
12の夏のあの夜を

今年の夏は休みをとって
もう一度行こうかナイターに


親父と二人で

ビールを飲みながら
2001/12/17 (Mon)
カウンターに腰掛けて
窓から差す夕日を
白いカップの中で転がしながら

紅茶を入れるのが得意な君は
僕の知らない紅茶の名前をつらつらと並べて
さあ、どれにする、なんて

そうだねダージリンがいいね
僕はいつもの一つ覚え
そうだわセイロンにしましょう
二人の他愛もない会話

白いカップのなかの夕日は
徐々に夜の色をまとい
ねえ、紅茶ができるまで少し寝かせてよ

そしてカウンターにうつぶせて
白いカップの中で
いつも後悔を転がす

君もおいしい紅茶も
失ってしまったんだ、と
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* ILLUSTRATION BY nyao *