プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2010/06/29 (Tue)
詩
窓を開けて欲しい、と男は言った
壁しかない部屋だった
窓を開けた、とわたしは嘘をついた
男は両手を広げると
嘘の窓から青空へと飛び去った
ひとり残され
部屋を丁寧に折りたたみ
ポケットに入れる
歩行者専用の信号が青に変わり
スクランブル交差点の人ごみに
紛れ込んで行ったのは
たぶんわたしだったと思う
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2010/06/23 (Wed)
詩
誰かのための
湿った窓がある
三本の線を反復できずに歩いて渡る
蟹たち
をわたしは避けて
自分の指の形がいつもより気になったので
どこかに忘れてきた雨傘の代わりに
古道具屋で小さな
置時計を買ったのだった
それからノートに
知っている親族の名前を
できる限り書き連ねていく
インクのないペンで
空白だけが増えていく
もしわたしがこのまま紙飛行機になっても
気づく人もいなくなってしまった
湿った窓を開ける
と、いつかきっと
誰かは閉めるのだろう
2010/06/19 (Sat)
詩
白線の内側に下がってお待ちください。
白線は自分で引いてください。
内側と外側は自分で決めてください。
白線の外側を
一匹のシオカラトンボが横切っていく
軟らかくて
きっとあれには乗れない
早く帰りたい
どこにいてもそんなことばかり思う
そういえば
どうしてシオカラトンボというのか
考えたこともなかった
2010/06/12 (Sat)
詩
雨が花の形を整えていく
わたしたちは共通の言葉で話し
共通の言葉で
触れるべき場所に触れる
民家の前にぽつりと置かれたバス停で
傘を差してバスを待つあの二人は
親と子なのだろうか
あんな時もあったね、と
わたしたちは共通の言葉で笑い
あんな時もあったね、と
わたしたちは抜け殻になる
2010/06/10 (Thu)
詩
光は屈折し
やがてその先端は
壁の末期へと続いていく
何かあってはいけないので
あなたは洗面所で
数を数えている
川幅の狭い橋を渡ってきた、と
わたしは告げ
手を握り
ほんの少し
あなたのために生きた
2010/06/07 (Mon)
詩
砂でできた掌が
記憶の水に
崩れていく
そしてそれを受け止めようとする別の
掌がある
赤茶けた鉄路は
臨海の工業地帯へと続き
大きくカーブする
その付近で
群生する草の穂先がそろって頭を垂れ
夏へと向かう風に揺れている
今日一日わたしは
何も見ようとしなかったのだ
聞こうとしなかったのだ
触ることさえしなかったのだ
2010/06/02 (Wed)
詩
あなたに似た人と
あなたの名前に似た名前の人が
あなたに関連のないことを
頁の片隅で語り続けている
数日間降雨の無い乾ききった道を
一台の軽トラックが
砂埃をまきあげて走る
そしてまた頁は捲られ
あなたは今日も不在である
2010/05/26 (Wed)
詩
近所のフランス人が遊びに来て
ニンジンを食べて行った
日本のニンジンはとても美味しい、と
たいそう喜んで
お礼にエッフェル塔の置物をくれた
大きさからしてどう見ても
偽物のエッフェル塔だった
お土産にニンジンを数本持たせると
じゃあこれも、と
凱旋門の置物もくれた
やはりどう見ても
偽物の凱旋門だった
2010/05/23 (Sun)
詩
ワイシャツにアイロンをかけているうちに
見知らぬところまで来てしまった
さっきまでいっしょにいた妻や娘の姿も見えない
どこか淋しい感じのするグラウンドで
赤勝て
白勝て
子どもたちが玉入れを競い合ってる
その真ん中で一人
アイロンをかけ続けている
容赦なく紅白のお手玉が頭や腕にあたる
アイロンをかければかけるほど
ワイシャツは皺だらけになっていく
それでもせっかくかけたのだから、と
皺くちゃになったシャツを
ハンガーにひっかけて吊るしていく
いくらかけてもワイシャツは
山のように積まれ一向に減らない
日が暮れる
沖の方に漁火が見える
もう既に膝のあたりまで海に浸かっている
すっかりくたびれて
このままどこまで行くというのだろう
もしかしたら一生このまま
同じ作業を続けなければならないのではないか
と不安にはなるけれど
自分の一生が明日も続いている、ということには
何の疑念も抱くことなく
時々アイロンの温度を確かめたりする
2010/05/20 (Thu)
詩
ページをめくる
本の中にたくさんの
文字が落ちている
こんなにたくさんの文字を
いったいどこの海から拾ってきたのだろう
時刻表を見ると
海行きの最終列車はもう三分ほど前に
近くの駅を発車してしまった
明日も人に会う用事があって
おそらく他のところには行けない
その人と海の話をしたことはないけれど
姿を見つければ
お互い会釈などすると思う
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