忍者ブログ
こっそりと詩を書く男の人
  プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
  ブログ内検索
  月間アーカイブ

  最新記事
(04/10)
(03/29)
(03/27)
(03/22)
(03/20)
  最新コメント
[09/10 GOKU]
[11/09 つねさん]
[09/20 sechanco]
[06/07 たもつ]
[06/07 宮尾節子]
  最新トラックバック
  投票所
     
クリックで投票
 ↓ ↓ ↓
人気blogランキング
    
  バーコード
  カウンター
[54] [55] [56] [57] [58] [59] [60] [61] [62] [63] [64]
2025/04/22 (Tue)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2008/05/19 (Mon)
 
テーブルの向こうには
崖しかないので
わたしは落とさないように
食事をとった

下に海があるということは
波の音でわかるけれど
海鳥の鳴き声ひとつしない
暗く寂しい海だった

残した料理にラップをかけた
それは夜明け前
崖に飛び込んだ
わたしの遺書に違いなかった
 
PR
2008/05/18 (Sun)
 
鉄鉱石の蜜が街に溢れるころ
虫は人の文字の中で
急激に羽化を始める
かじると化学物質の味がして
その年はひどくうがいが流行った
水は水を乾かし
水は水を空席にする
証言台に立った女の瞬きは
速記官によって克明に記録され
翌日、珍しい化石になるのだった
 
2008/05/13 (Tue)
 
 
紙の水面から沈んでいく
鋼鉄の季節、眼はあなた
乾いた舌で皮脂の
履歴が記された頁を朗読する
排水機場の細かい部品が
錆びて赤茶けていく
ざらざら、その過程
時間はあなた
 
 
 
2008/05/11 (Sun)
 
敷石に降り注ぐ、柔らか
少し離れてある、生に弄ばれた
幼いミズカマキリの死
旧道を走る
路線バス、あれには乗れない
ただの声だから
管理人の男はフェンスをくぐる
その先で交差点は息をひそめ
とてもうまくは思い出せない
男は知っていたのだろうか
そこが空の裂け目だった、と
あっけなく吸い込まれ
後に残されたのは短い夏
そして微量の毒薬
  
 
2008/05/09 (Fri)
 
鼓動のように雨戸は共鳴し
残余するものはもう何も無い
火傷の痕は指に育まれ
心の貧しいものだけが
人になることができる
その線をこえてはいけない
黄土色の骨に包まれた肉体
もはやそれは瓦礫
それは言葉
 
2008/05/09 (Fri)
 
レストランの隅々に
手、枝、へと連なる不ぞろいの断面
戦車のキャタピラーは雨上がりの
ふとした地面を踏み固め
人の背中は人を定義しない
使い古した嘘
のように、また息を継ぎ足して
水の菓子を口に含む
 
 
2008/05/07 (Wed)
 
朽ち果てた石
その微かな記憶
落葉樹は閉ざされたが
薄く匂っている
末端という末端に
隙間という隙間に
うずら料理の美味しい店で
わたしは女に求婚した
手の甲の静脈は変わることなく
浮き上がっていた
世界はまだ美しいのか、女は尋ね
知らない、とだけわたしは答えた
夏草の繁茂する河川で護岸工事は続き
明日埋葬される
それは人の形をしていて
確かにわたしたちではなかった
知らない
わたしは繰り返した
  
 
2008/05/06 (Tue)
 
夜中に目が覚めて階下に行った
妻が台所でひとり
豆乳を飲んでいるのが見えた

湿った蛍光灯の下、色白の肌が
必要以上に青白く
そして細く感じられた

声をかけずに再び寝室に戻った
翌日、妻が死んだとしても
おそらく驚きはしなかったろう

2008/05/03 (Sat)
 
砂漠の真ん中に
ペンギンの死体があった
穏やかな光の祝福を受けて
左右非対称に腐れていた
耳をすませば
崩れる音も聞こえた
老いた男はか細い腕で
窓を閉めた
風で砂が入るのを嫌った
 
2008/05/01 (Thu)

言葉の近くで
酸素を見ています
午後に置き忘れた椅子から
ずり落ちているあれは
靴の始まり
裏側を覗くと
もう誰もいません


+


金歯の中に広がる曇り空を
飛行船が飛んで行きます
落ちないように
歯医者は泣き続けて
待合室のソファーの上を
男の子が素足で歩いています
 

+


立っているお巡りさんの影が
風にほどけています
帰らないことは忘れないこと
イルカの足跡を埋める音のそばで
まだ息をしています


+


鉢植えの底で
自分の名前を隠すと
水のように恥ずかしい
埋立地の荷捌場には
春より先にもう
人が来ています


+


水は水の中を流れていきます
太陽の光がゆっくりと反射して
椅子に座っていても
遠いところまで見渡せます
どうして手があるのか
その日はよくわからなかったのです



+


振り返ることなく
本の背表紙だけが
ゼリーのように並んでいます
雨上がりが合図でした
子どもたちは一斉に走り出し
青い陸橋を渡り終える頃には
雲の間から星の匂いがしてきます


+


深夜、童話は考えます
どぶ川に沿って行く
細長い貨物列車の続きを
眠っている人が輪郭を曖昧にするので
おさめようとするのですが
また溢れ出してしまいます
 
 
忍者ブログ [PR]

* ILLUSTRATION BY nyao *