プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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雨やみて雲雀の飛んだ水たまり
何を見て驚いたのか鯉のぼり
紫陽花がたくさんのいろ人みたい
桃をむく香りと北へ寝台車
空目指し向日葵たちが背比べ
アリが来てわたしの足を踏んでいる
夏の雲人の形を忘れた日
行く夏に音だけ残すオートバイ
通過する台風の目を犬と見た
朝きのこは静かに胞子を蒔いて
泥だらけ初めて作った雪だるま
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光合成が不得意の僕らにまた夏の陽が降り注ぐだろう
屋上のベンチに座り互いの塩分濃度を確かめ合った
生き物の忘れていった生ものが機体の上で腐りかけてる
メデューサが美容院に行き蛇たちの凄惨な夏は始まった
自分の名前をうまく並べかえると夏のものになれた気がする
絶滅した動植物をノートに書き連ねた真夏の記念日
お母さあん!叫びは誰が届けたのか碑の前でわたし呟く


バスに乗る
名前だけが剥がれていく
何かの間違い、というより
むしろ略式でも正しいことであるかのように
良かった、わたしたちは
バスに乗られることがなくて
席に座り
バスの一番柔らかいところを
かじるわたしたちは
軽くなった分、どこか許された気がするけれど
内緒の話をしている時みたいに
口に広がる幸せは
いつも恥ずかしい
窓を開ける
景色だけがあり
他には何もないことを
ひきつづき景色と呼んだ
毎朝生まれ変わり
それでもわずか百数十センチの背の高さから
地面に落ちることを恐れなければならない
良かった、わたしたちは
窓に開けられることがなくて
それからともすると
降車ボタンは赤く光り
わたしたちを降りていく人が
少しずついるのだった
名前だけが剥がれていく
何かの間違い、というより
むしろ略式でも正しいことであるかのように
良かった、わたしたちは
バスに乗られることがなくて
席に座り
バスの一番柔らかいところを
かじるわたしたちは
軽くなった分、どこか許された気がするけれど
内緒の話をしている時みたいに
口に広がる幸せは
いつも恥ずかしい
窓を開ける
景色だけがあり
他には何もないことを
ひきつづき景色と呼んだ
毎朝生まれ変わり
それでもわずか百数十センチの背の高さから
地面に落ちることを恐れなければならない
良かった、わたしたちは
窓に開けられることがなくて
それからともすると
降車ボタンは赤く光り
わたしたちを降りていく人が
少しずついるのだった


玄関に傘が一本
ギロチンのように
あった
昔こんなもので
人が酷い目にあったのだ
と信じられないくらいに
静かな朝だった
やがて傘は
扉を開けると
仕事机のような格好になり
走って行ってしまった
そのことをいくら説明しても
わたしの言っていることが
言葉であると
誰も信じてなどは
くれてなかった
ギロチンのように
あった
昔こんなもので
人が酷い目にあったのだ
と信じられないくらいに
静かな朝だった
やがて傘は
扉を開けると
仕事机のような格好になり
走って行ってしまった
そのことをいくら説明しても
わたしの言っていることが
言葉であると
誰も信じてなどは
くれてなかった


水底に
動物園はあった
かつての
檻や
岩山を
そのままにして
いくつかの動物の名は
まだ読めたけれど
散り散りの記憶のように
意味を残してなかった
あなたは月に一度の
刊行物を待つ
かのように
郵便受けの方を
眺めている
穏やかな日和
園内を見て歩く
二人の手は
同じくらいの体温で
繋がっていた
動物園を沈めたのは
ぼくだ
動物園はあった
かつての
檻や
岩山を
そのままにして
いくつかの動物の名は
まだ読めたけれど
散り散りの記憶のように
意味を残してなかった
あなたは月に一度の
刊行物を待つ
かのように
郵便受けの方を
眺めている
穏やかな日和
園内を見て歩く
二人の手は
同じくらいの体温で
繋がっていた
動物園を沈めたのは
ぼくだ


キリンは新婚カップルの取材を担当した
ツルとカメは生き証人として
動物園の歴史を書いた
シロクマは環境問題に
ゾウは動物虐待の実態に
鋭い論調でメスを入れた
羊たちは眠れない子供のために
ただひたすら自分たちのイラストを描いた
月刊「動物園」は
一年と数ヶ月で廃刊となった
編集長のゴリラの投げた灰皿がライオンに当たり
怒ったライオンが隣にいたインパラを
食べてしまったからだった
インパラは朝から喉が痛いと言っていた
ライオンは歯磨きの時に
目を瞑る癖があった
母親に逸れて久しかった
ツルとカメは生き証人として
動物園の歴史を書いた
シロクマは環境問題に
ゾウは動物虐待の実態に
鋭い論調でメスを入れた
羊たちは眠れない子供のために
ただひたすら自分たちのイラストを描いた
月刊「動物園」は
一年と数ヶ月で廃刊となった
編集長のゴリラの投げた灰皿がライオンに当たり
怒ったライオンが隣にいたインパラを
食べてしまったからだった
インパラは朝から喉が痛いと言っていた
ライオンは歯磨きの時に
目を瞑る癖があった
母親に逸れて久しかった


静かな言葉に騙されて
武器を売り続けた
いくつもの春を泳ぎ
疲れれば
もの言わぬ記号に似ていた
河口に人の死体が流れてくる
知らない人ばかりだった
知っていたとしても
損傷が激しくてよくわからなかった
武器は尖ったところなど
ひとつもないのに
簡単に人を傷つけるのだった
武器を売り続けた
いくつもの春を泳ぎ
疲れれば
もの言わぬ記号に似ていた
河口に人の死体が流れてくる
知らない人ばかりだった
知っていたとしても
損傷が激しくてよくわからなかった
武器は尖ったところなど
ひとつもないのに
簡単に人を傷つけるのだった


一年ぶりにルゾンに行った
エリーはまだいた
胸元の開いた黒いドレス
すっきりと鎖骨があった
その間からはるか遠く
エッフェル塔が見えた
エリーは携帯で撮った
子供の写真を見せてくれた
子の父である日本人は認知したが
養育費は払ってくれてなかった
家庭があった
エリーにも子供と二人きりの家庭があった
他に何もいらないのにね
エリーは言った
他に何もいらないのにね
マニラにエッフェル塔はなかった
この国にもあるはずなかった
エリーはまだいた
胸元の開いた黒いドレス
すっきりと鎖骨があった
その間からはるか遠く
エッフェル塔が見えた
エリーは携帯で撮った
子供の写真を見せてくれた
子の父である日本人は認知したが
養育費は払ってくれてなかった
家庭があった
エリーにも子供と二人きりの家庭があった
他に何もいらないのにね
エリーは言った
他に何もいらないのにね
マニラにエッフェル塔はなかった
この国にもあるはずなかった


小さなバス停を飼った
小さい割にはよく食べた
それでも店員の言ったとおり
あまり大きくはならなかった
一日に数本小さなバスが停まった
行先はどこでもよかった
夜、明かりを消して床に着くころ
最終バスの到着する音と
癖なのだろうか、発車する間際の
運転手の小さな咳が
聞こえてくる
小さい割にはよく食べた
それでも店員の言ったとおり
あまり大きくはならなかった
一日に数本小さなバスが停まった
行先はどこでもよかった
夜、明かりを消して床に着くころ
最終バスの到着する音と
癖なのだろうか、発車する間際の
運転手の小さな咳が
聞こえてくる


デパートに難破船が漂着する
甲板をいじくり
あなたは指の先を切った
立体駐車場から汗など
生活、の匂いがする
立体であることはいつも淋しい
家具売り場でかくれんぼをしている間に
誰にも見つかることなく
僕らは大人になった
屋上から見おろすと
高さと命の境目は曖昧に続き
人は空を飛んではならなかった
気がつけばエレベーターしかないデパートで
夏が未完のまま終わっている
甲板をいじくり
あなたは指の先を切った
立体駐車場から汗など
生活、の匂いがする
立体であることはいつも淋しい
家具売り場でかくれんぼをしている間に
誰にも見つかることなく
僕らは大人になった
屋上から見おろすと
高さと命の境目は曖昧に続き
人は空を飛んではならなかった
気がつけばエレベーターしかないデパートで
夏が未完のまま終わっている