忍者ブログ
こっそりと詩を書く男の人
  プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
  ブログ内検索
  月間アーカイブ

  最新記事
(04/10)
(03/29)
(03/27)
(03/22)
(03/20)
  最新コメント
[09/10 GOKU]
[11/09 つねさん]
[09/20 sechanco]
[06/07 たもつ]
[06/07 宮尾節子]
  最新トラックバック
  投票所
     
クリックで投票
 ↓ ↓ ↓
人気blogランキング
    
  バーコード
  カウンター
[64] [65] [66] [67] [68] [69] [70] [71] [72] [73] [74]
2025/04/23 (Wed)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2007/07/03 (Tue)
列車の出入り口近く
一番混みあうところ
何かの手違いか
小さな花が咲いてる
どんなに混んでも
人は花を踏まないようにしている
もしこれが花ではなく
うんこだったとしても
誰も踏まなかっただろう
ゆっくりと死んでいくように
毎日を生きている、その
表層の薄い膜のようなところに
花もうんこもある
何かの手違いで
踏みつけられてしまうまで
PR
2007/07/02 (Mon)
ある日ふとあなたは
わたしの優しい母となり
慣れないヒールの高い靴を履いたまま
図書館のカウンターのはるか内側
シチューを煮込んでいる

戸外、三角ポールの静かな
駐車禁止区域に来館者は
車を次々と止め
それでもあなたは笑い
笑い返し
順番にシチューを振る舞い
わたしは背表紙の古い小説の本と
海と間違えて
海洋生物の生態について、を
借りたのだった

本当はわたしがあなたを
産んであげたかった
と、いつまでも言いそびれている
いつかやがて夜になり
瞼と嘘の区別がつかなくなっても
あなたが夢の中で死なないように
見ていると思う
2007/06/30 (Sat)
つぶれたステーキハウスの駐車場に
制服を着た男の子と母親らしき人が立っていた
二人でじゃんけん遊びをしていた
昨日も同じところにいるのをバスから見た
違う遊びを楽しそうにしていた
毎日あのように園の送迎を待っているのだった
一昨日は見なかった
同じ時間に同じ場所にいたのかもしれないが
それを見ている自分がいなかった
喪服を着て違う方面へと向かうバスに乗っていた
その夜は妻に葬儀の話を少しした
特に知っている人でもなかったので
妻は、お疲れさま、とだけ言った
もうその話をすることもないだろう
もししたとしても
平等にやってくる死と同列に並べられ
もはや誰の葬儀かもわからなくなっているのだ
 
 
2007/06/27 (Wed)
今夜半過ぎ
関東から東海地方にかけて
優しいものが降り積もるでしょう
と、予報士は言った

翌朝
優しいものは降った様子だったけれど
予報どおりに積もってはいなかった

私たちはただ跡だけが残る坂道をくだり
お互いの一番優しいところに
触れることはなかった

2007/06/23 (Sat)
コップの中に
クモが死んでいた
窓からは小さな光が
降り注いでいた
懐かしく干からびて
良く見ると
キリンの死体だった
外に運び出さなければ
と思うけれど
大きすぎて
どこからも出せない
もうしません、もうしません、
ノートに書き続けている間に
夏休みのようなものは終わり
宿題を提出する音が
微かにしている
 
2007/06/23 (Sat)
たくさんの鳥

そして少しの懐かしい人を乗せ
他に何も無いような空港から
飛行機は飛び去って行った

覚えていることと
忘れていないことは
常に等量ではない

夏の敷石の上で見送って
端っこを
ホッチキスで綴じた
 
2007/06/21 (Thu)
書庫の扉を開ける
水の中になってる
たぶん海なのだと思う
昨日まで資料や本の類だったものが
魚みたいに泳ぎ回っている
手を伸ばして一冊つかまえる
ページを開くようにお腹を指で裂くと
文字が気泡となって水面に昇っていく
公民館のプールで溺れた夏を思い出す
息が出来ないのは苦しいことだと知った
人前で溺れる振りが上手くなったのも
あの日からだった
2007/06/17 (Sun)
買わなければいけないものがあるのに
あなたはまた、あなたに似たものを買ってしまう
部屋はあなたに似たもので満たされていく
あなたに似たもののほとんどはいらないものなので
あなたに似たものがなくなることはない
あなたに似ても似つかないものばかりがなくなっていく
あなたに似たもののなかには繁殖するものもあり
あなたはあなたに似たものを買い控えたとしても
あなたに似たものは自然に増えていく
あなたがあなたに似たものを見つめると
あなたに似たものはあなたによく似て視線を合わせない
そしてあなたはあなたに似たものの視線を感じる時があっても
目を合わせることをためらってしまう
他の人が思い出すのはあなたのことではなく
あなたに似たもののことではないか、そう思うと
あなたはあなたに似たものの中でふと溺れそうになる
けれどあなたが溺れているのはいつも
あなた自身の中なのだ

2007/06/16 (Sat)
弟はいつの間にか
僕の背を追い越していた
身長をたずねると
三メートル五十七センチ
と言って悲しそうにうつむく
明日になれば
弟は遠いところに連れて行かれる
多分頭のてっぺんも見えないくらい
遠いところ
脚立に乗って
しばらく頭を撫でた
2007/06/12 (Tue)
一番線のホームを
羊の群れが通過していく
海の近くに
美味しい牧草地があるのだ
その後を
羊飼いの少年が
列車でゆっくりと追う

夕暮れ近くになると
列車に羊を乗せて
牧舎へと帰る
二番線を通過しながら
少年は一日分
等しく歳をとり
羊は同じ一日で
その何倍かの歳をとる

時々海の珍しいものを
家族に持って帰る
笑うことにも
最近はよく慣れた

忍者ブログ [PR]

* ILLUSTRATION BY nyao *