プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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列車の出入り口近く
一番混みあうところ
何かの手違いか
小さな花が咲いてる
どんなに混んでも
人は花を踏まないようにしている
もしこれが花ではなく
うんこだったとしても
誰も踏まなかっただろう
ゆっくりと死んでいくように
毎日を生きている、その
表層の薄い膜のようなところに
花もうんこもある
何かの手違いで
踏みつけられてしまうまで
一番混みあうところ
何かの手違いか
小さな花が咲いてる
どんなに混んでも
人は花を踏まないようにしている
もしこれが花ではなく
うんこだったとしても
誰も踏まなかっただろう
ゆっくりと死んでいくように
毎日を生きている、その
表層の薄い膜のようなところに
花もうんこもある
何かの手違いで
踏みつけられてしまうまで
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ある日ふとあなたは
わたしの優しい母となり
慣れないヒールの高い靴を履いたまま
図書館のカウンターのはるか内側
シチューを煮込んでいる
戸外、三角ポールの静かな
駐車禁止区域に来館者は
車を次々と止め
それでもあなたは笑い
笑い返し
順番にシチューを振る舞い
わたしは背表紙の古い小説の本と
海と間違えて
海洋生物の生態について、を
借りたのだった
本当はわたしがあなたを
産んであげたかった
と、いつまでも言いそびれている
いつかやがて夜になり
瞼と嘘の区別がつかなくなっても
あなたが夢の中で死なないように
見ていると思う
わたしの優しい母となり
慣れないヒールの高い靴を履いたまま
図書館のカウンターのはるか内側
シチューを煮込んでいる
戸外、三角ポールの静かな
駐車禁止区域に来館者は
車を次々と止め
それでもあなたは笑い
笑い返し
順番にシチューを振る舞い
わたしは背表紙の古い小説の本と
海と間違えて
海洋生物の生態について、を
借りたのだった
本当はわたしがあなたを
産んであげたかった
と、いつまでも言いそびれている
いつかやがて夜になり
瞼と嘘の区別がつかなくなっても
あなたが夢の中で死なないように
見ていると思う


つぶれたステーキハウスの駐車場に
制服を着た男の子と母親らしき人が立っていた
二人でじゃんけん遊びをしていた
昨日も同じところにいるのをバスから見た
違う遊びを楽しそうにしていた
毎日あのように園の送迎を待っているのだった
一昨日は見なかった
同じ時間に同じ場所にいたのかもしれないが
それを見ている自分がいなかった
喪服を着て違う方面へと向かうバスに乗っていた
その夜は妻に葬儀の話を少しした
特に知っている人でもなかったので
妻は、お疲れさま、とだけ言った
もうその話をすることもないだろう
もししたとしても
平等にやってくる死と同列に並べられ
もはや誰の葬儀かもわからなくなっているのだ
制服を着た男の子と母親らしき人が立っていた
二人でじゃんけん遊びをしていた
昨日も同じところにいるのをバスから見た
違う遊びを楽しそうにしていた
毎日あのように園の送迎を待っているのだった
一昨日は見なかった
同じ時間に同じ場所にいたのかもしれないが
それを見ている自分がいなかった
喪服を着て違う方面へと向かうバスに乗っていた
その夜は妻に葬儀の話を少しした
特に知っている人でもなかったので
妻は、お疲れさま、とだけ言った
もうその話をすることもないだろう
もししたとしても
平等にやってくる死と同列に並べられ
もはや誰の葬儀かもわからなくなっているのだ


今夜半過ぎ
関東から東海地方にかけて
優しいものが降り積もるでしょう
と、予報士は言った
翌朝
優しいものは降った様子だったけれど
予報どおりに積もってはいなかった
私たちはただ跡だけが残る坂道をくだり
お互いの一番優しいところに
触れることはなかった
関東から東海地方にかけて
優しいものが降り積もるでしょう
と、予報士は言った
翌朝
優しいものは降った様子だったけれど
予報どおりに積もってはいなかった
私たちはただ跡だけが残る坂道をくだり
お互いの一番優しいところに
触れることはなかった


コップの中に
クモが死んでいた
窓からは小さな光が
降り注いでいた
懐かしく干からびて
良く見ると
キリンの死体だった
外に運び出さなければ
と思うけれど
大きすぎて
どこからも出せない
もうしません、もうしません、
ノートに書き続けている間に
夏休みのようなものは終わり
宿題を提出する音が
微かにしている
クモが死んでいた
窓からは小さな光が
降り注いでいた
懐かしく干からびて
良く見ると
キリンの死体だった
外に運び出さなければ
と思うけれど
大きすぎて
どこからも出せない
もうしません、もうしません、
ノートに書き続けている間に
夏休みのようなものは終わり
宿題を提出する音が
微かにしている


たくさんの鳥
そして少しの懐かしい人を乗せ
他に何も無いような空港から
飛行機は飛び去って行った
覚えていることと
忘れていないことは
常に等量ではない
夏の敷石の上で見送って
端っこを
ホッチキスで綴じた
そして少しの懐かしい人を乗せ
他に何も無いような空港から
飛行機は飛び去って行った
覚えていることと
忘れていないことは
常に等量ではない
夏の敷石の上で見送って
端っこを
ホッチキスで綴じた


書庫の扉を開ける
水の中になってる
たぶん海なのだと思う
昨日まで資料や本の類だったものが
魚みたいに泳ぎ回っている
手を伸ばして一冊つかまえる
ページを開くようにお腹を指で裂くと
文字が気泡となって水面に昇っていく
公民館のプールで溺れた夏を思い出す
息が出来ないのは苦しいことだと知った
人前で溺れる振りが上手くなったのも
あの日からだった
水の中になってる
たぶん海なのだと思う
昨日まで資料や本の類だったものが
魚みたいに泳ぎ回っている
手を伸ばして一冊つかまえる
ページを開くようにお腹を指で裂くと
文字が気泡となって水面に昇っていく
公民館のプールで溺れた夏を思い出す
息が出来ないのは苦しいことだと知った
人前で溺れる振りが上手くなったのも
あの日からだった


買わなければいけないものがあるのに
あなたはまた、あなたに似たものを買ってしまう
部屋はあなたに似たもので満たされていく
あなたに似たもののほとんどはいらないものなので
あなたに似たものがなくなることはない
あなたに似ても似つかないものばかりがなくなっていく
あなたに似たもののなかには繁殖するものもあり
あなたはあなたに似たものを買い控えたとしても
あなたに似たものは自然に増えていく
あなたがあなたに似たものを見つめると
あなたに似たものはあなたによく似て視線を合わせない
そしてあなたはあなたに似たものの視線を感じる時があっても
目を合わせることをためらってしまう
他の人が思い出すのはあなたのことではなく
あなたに似たもののことではないか、そう思うと
あなたはあなたに似たものの中でふと溺れそうになる
けれどあなたが溺れているのはいつも
あなた自身の中なのだ
あなたはまた、あなたに似たものを買ってしまう
部屋はあなたに似たもので満たされていく
あなたに似たもののほとんどはいらないものなので
あなたに似たものがなくなることはない
あなたに似ても似つかないものばかりがなくなっていく
あなたに似たもののなかには繁殖するものもあり
あなたはあなたに似たものを買い控えたとしても
あなたに似たものは自然に増えていく
あなたがあなたに似たものを見つめると
あなたに似たものはあなたによく似て視線を合わせない
そしてあなたはあなたに似たものの視線を感じる時があっても
目を合わせることをためらってしまう
他の人が思い出すのはあなたのことではなく
あなたに似たもののことではないか、そう思うと
あなたはあなたに似たものの中でふと溺れそうになる
けれどあなたが溺れているのはいつも
あなた自身の中なのだ


弟はいつの間にか
僕の背を追い越していた
身長をたずねると
三メートル五十七センチ
と言って悲しそうにうつむく
明日になれば
弟は遠いところに連れて行かれる
多分頭のてっぺんも見えないくらい
遠いところ
脚立に乗って
しばらく頭を撫でた
僕の背を追い越していた
身長をたずねると
三メートル五十七センチ
と言って悲しそうにうつむく
明日になれば
弟は遠いところに連れて行かれる
多分頭のてっぺんも見えないくらい
遠いところ
脚立に乗って
しばらく頭を撫でた


一番線のホームを
羊の群れが通過していく
海の近くに
美味しい牧草地があるのだ
その後を
羊飼いの少年が
列車でゆっくりと追う
夕暮れ近くになると
列車に羊を乗せて
牧舎へと帰る
二番線を通過しながら
少年は一日分
等しく歳をとり
羊は同じ一日で
その何倍かの歳をとる
時々海の珍しいものを
家族に持って帰る
笑うことにも
最近はよく慣れた
羊の群れが通過していく
海の近くに
美味しい牧草地があるのだ
その後を
羊飼いの少年が
列車でゆっくりと追う
夕暮れ近くになると
列車に羊を乗せて
牧舎へと帰る
二番線を通過しながら
少年は一日分
等しく歳をとり
羊は同じ一日で
その何倍かの歳をとる
時々海の珍しいものを
家族に持って帰る
笑うことにも
最近はよく慣れた