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こっそりと詩を書く男の人
  プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2006/11/12 (Sun)
少年と少女のささやきが
午後いっぱいの光をあびて
牛になる
と、牛飼いの男がやって来て
どこかに連れて行ってしまう
もう少年も少女の
ささやきはしない
語られる愛と
愛に似たものは
いつものように良く似ている
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2006/11/06 (Mon)
わたしの中を
夜の明ける方へと飛ぶ
一羽の鳥がいる
同じころ
一羽の鳥の中を
どこまでも墜落する
わたしがいるのだ
その日最初の列車が
古い踏切を通過していく
建物の窓はひとつ
またひとつと開かれ
雨、と誰かが言う

2006/11/05 (Sun)
色をぬる記憶
人に触れる記憶
僕らの言葉が
キスを学習すると
背中にも匂いがあってよかった
バッタのようなものが
死んでいたよ
あのあたり
空も見ないで
2006/11/02 (Thu)
僕らは縄跳びをします
回数はとっくに僕らの歳を超えて
縄の外、日が暮れていきます
僕らは縄をなくし
それでも縄跳びは終わることなく
気がつけば僕らは形をなくしています
誰もが僕らのことを忘れ
僕らも僕らのことを忘れていきます
縄跳びだけが縄跳びのまま
いつまでも続きます
遠いところから微かに
けれど力強く
産声が聞こえてきます
2006/10/30 (Mon)
夜中、リビングに降りると
テーブルがひとりで
テレビを見ていた
外国の戦争映画だった
たくさんの人が
次々に命を落としていった
リアルなくらい
みな清潔な最後だった
突然テーブルがすすり泣いた
空爆された建物の瓦礫の下に
テーブルの脚らしきものが見えたのだ
2006/10/29 (Sun)
世界の端っこのようなところで
僕と牛とがシーソーをしている
ぎったん、ばっこん、する度に
審判の人が紅白の旗を挙げて
正誤を判定する
あまりにも長すぎたね
どっちがどっちなのか
もう誰もわからなくなってる
本当は何も間違ってないし
何も正しくないのかもしれない
ついでに言えば
僕の感傷が確保されれば
相手が牛である必要もないのかもしれない
もうずっとこのままで構わない
なんて思い始めてる
きみの記憶も
きれいになくなっていく

2006/10/28 (Sat)
すべてを失っても俺はピアノなのだ
鉛筆は言い出した
プラスチックの筆箱の中
いくらなだめても聞く耳を持たない
仕方なく握るところを鍵盤に見立てて
弾く真似をしてみた
もちろん音が出るわけがないので
音階もいっしょに歌った
ああ、俺の音はこんなにも変てこなのか
鉛筆は嘆き悲しんだ
改めてちゃんと歌い直すと
やっと安心して穏やかに笑うようになった
毎日使われ続け鉛筆は短くなり
鍵盤の数を少なくしていったけれど
それを誇りにしていた
やがてわたしに捨てられる日まで


2006/10/27 (Fri)
君が糸電話を作っていた
夕暮れまで
まだ時間があるというのに
いったい誰にかけたかったのか
小学校の図工の時間のように
器用な指先で紙コップの底を切り取り
セロハンを貼っている
糸をなくしてしまったと言うので
二人で買いに出かける
ついでに食材も少し買った
手をつなぐと
体温という言葉が
あって良かったと思う
たぶん糸電話は
僕が壊すことになるんだろう
ごみ箱には
君が捨てるんだろう


2006/10/27 (Fri)
苺ジャムから
苺を引いたら
夕日が残った
誰も地下鉄になど
乗ったことの無い町だった
くすんだ陽射しの中
食品工場の隙間では
猫たちがよく逢い引きをしていた
友だちにもみな両親がいた
愛は算式のように
簡単なものだと思っていた

2006/10/26 (Thu)
夜の明ける頃
苺ジャムの小瓶を積んだ船が
幅広の海へと出港する
その間にも
私たちには忘れていく言葉があり
その言葉を思い出すために
また忘れられていくものがある
産まれてきたしまった
と言う子らにも
幻想とは違う幾ばくかの
幸せを届けてあげたい
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* ILLUSTRATION BY nyao *