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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2025/06/17 (Tue)
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2006/10/26 (Thu)
牛のお肉が
ぴとぴとと
月の光に貼りついてる
生きているときは草をよく食み
くるぶしも美しかった
のだと思う
わたしのお肉もきっと同じ色をして
人のことをかつて愛したのも
この肉の中でだった
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2006/10/22 (Sun)
虹を食べ過ぎてしまったか
のように少し大きい女の人が
愛という字を
消しゴムで消し続けている
あの鉄橋を渡れば私の故郷があるのよ
と指差す先には
窓がないので
景色の良く見える庭まで
長い廊下を歩く
庭に出ると
正体の淋しいものが遠くまでかかっていて
足元には珍しい草があった

2006/10/19 (Thu)
弁当を開けると
中に海が広がっている
故郷の海のように
凪いできれいだった
朝の静かな台所で
君がどんなふうにこれを作ったのか
想像しようとしても
後姿しか目に浮かばない
帰れない場所があるわけではなく
帰れない時があるのだ、と
とてもありふれた
僕らの空腹がある
2006/10/18 (Wed)
頭の上に
鳥が卵を落としていった
やがて卵は孵り
駅が産まれた
列車が到着しても
人のざわめきもない
さびしい駅だった
かすかに潮の香りのする
海沿いの駅だった
その重さで首が少し
めりこんで痛い
夕方の太陽に
僕と駅の影が長く伸びて
またひとつ
言い訳が増えた
2006/10/17 (Tue)
駅前で兄を探していたら
母と会った
隣に父がいた
移動の最中だった
兄の居場所を尋ねると
二人ともよく笑った
私もいっしょになって
昔のように笑った
父が小さな扉を指差したので
開けて中に入った
途中小指のしもやけに気づき
少しかいた
階段は数えながら上った
それより多いものを
すぐには思い出せなかった
一番上は駅のホームになっていて
生まれ育った街が見おろせた
私が覚えている以上に
街は細かいところまできちんとあった
汚れた壁の前で
両親と兄とが手を振っていた
本当は私の旅立ちなのだと知った
2006/10/14 (Sat)
タイも
ヒラメも
マグロも
みんないました
白いお皿の上で
おそろいのお刺身でした
海みたい
子が言いました
まだ海を
見たことのない子でした
2006/10/08 (Sun)
脈を取ると指先に
セミの鳴き声が
伝わってくる
僕らの身体の中にも
駆け抜けていく夏があったのだ
どうかお元気で
手を振り
手を降り返したあなた
あの日に
友だちでいてくれて良かった
2006/10/08 (Sun)
交差点の向こう側で
指揮者がタクトを振っている
その動きに合わせて
たくさんの仔猫たちが
次々に海へと入っていくのが見える
カタクチイワシの群れが来ているのだ
胡麻漬け
卯の花漬け
つみれにしても美味しいなあ
食べ方は思いつくのに
忘れてはいけない人の名前だけは
どうしても思い出せない
こうして信号待ちしている間に
きっと僕も歳をとっていくんだろう
書き損ねた遺書のように
今日も空ばかり高くて

2006/10/01 (Sun)
家に帰ると
なかったはずの、が
いて
言わなかったはずの
おかえりを
言ってくれる
それから
なかったはずの
夕食の支度が始まる
なかったはずの、は
キッチンで月の光のように
つるつるとしている
なかったはずの、が
あまりにきれいなので
僕らはあこがれ
すべてを
なかったはずの、
ことにしてきた
なかったはずの、は
大きくなって
部屋にいたはず、の
君も僕も
もう見えなくなってる


2006/09/28 (Thu)
母とふたり
ブランコを引きずって歩く
強い陽射しに皮膚は焼かれていく
健康に良いことだ
母は教えてくれた

たくさんの人とすれ違う
みな一様に微笑んでくれる
支柱が肩に食い込んで痛いと言うと
母は困った顔をするけれど
それはいつも
悲しい顔とちがう

公園では親子連れが
ブランコ遊びをしている
その姿は喜びと幸せに満ちている
流れ落ちる汗に溺れそうな僕らも
多分そう見えたことだろう

夏に関していえば
今もそれより他の夏を知らない
ひとり
母の死体を引きずって歩く

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* ILLUSTRATION BY nyao *