プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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牛のお肉が
ぴとぴとと
月の光に貼りついてる
生きているときは草をよく食み
くるぶしも美しかった
のだと思う
わたしのお肉もきっと同じ色をして
人のことをかつて愛したのも
この肉の中でだった
ぴとぴとと
月の光に貼りついてる
生きているときは草をよく食み
くるぶしも美しかった
のだと思う
わたしのお肉もきっと同じ色をして
人のことをかつて愛したのも
この肉の中でだった
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虹を食べ過ぎてしまったか
のように少し大きい女の人が
愛という字を
消しゴムで消し続けている
あの鉄橋を渡れば私の故郷があるのよ
と指差す先には
窓がないので
景色の良く見える庭まで
長い廊下を歩く
庭に出ると
正体の淋しいものが遠くまでかかっていて
足元には珍しい草があった
のように少し大きい女の人が
愛という字を
消しゴムで消し続けている
あの鉄橋を渡れば私の故郷があるのよ
と指差す先には
窓がないので
景色の良く見える庭まで
長い廊下を歩く
庭に出ると
正体の淋しいものが遠くまでかかっていて
足元には珍しい草があった


弁当を開けると
中に海が広がっている
故郷の海のように
凪いできれいだった
朝の静かな台所で
君がどんなふうにこれを作ったのか
想像しようとしても
後姿しか目に浮かばない
帰れない場所があるわけではなく
帰れない時があるのだ、と
とてもありふれた
僕らの空腹がある
中に海が広がっている
故郷の海のように
凪いできれいだった
朝の静かな台所で
君がどんなふうにこれを作ったのか
想像しようとしても
後姿しか目に浮かばない
帰れない場所があるわけではなく
帰れない時があるのだ、と
とてもありふれた
僕らの空腹がある


頭の上に
鳥が卵を落としていった
やがて卵は孵り
駅が産まれた
列車が到着しても
人のざわめきもない
さびしい駅だった
かすかに潮の香りのする
海沿いの駅だった
その重さで首が少し
めりこんで痛い
夕方の太陽に
僕と駅の影が長く伸びて
またひとつ
言い訳が増えた
鳥が卵を落としていった
やがて卵は孵り
駅が産まれた
列車が到着しても
人のざわめきもない
さびしい駅だった
かすかに潮の香りのする
海沿いの駅だった
その重さで首が少し
めりこんで痛い
夕方の太陽に
僕と駅の影が長く伸びて
またひとつ
言い訳が増えた


駅前で兄を探していたら
母と会った
隣に父がいた
移動の最中だった
兄の居場所を尋ねると
二人ともよく笑った
私もいっしょになって
昔のように笑った
父が小さな扉を指差したので
開けて中に入った
途中小指のしもやけに気づき
少しかいた
階段は数えながら上った
それより多いものを
すぐには思い出せなかった
一番上は駅のホームになっていて
生まれ育った街が見おろせた
私が覚えている以上に
街は細かいところまできちんとあった
汚れた壁の前で
両親と兄とが手を振っていた
本当は私の旅立ちなのだと知った
母と会った
隣に父がいた
移動の最中だった
兄の居場所を尋ねると
二人ともよく笑った
私もいっしょになって
昔のように笑った
父が小さな扉を指差したので
開けて中に入った
途中小指のしもやけに気づき
少しかいた
階段は数えながら上った
それより多いものを
すぐには思い出せなかった
一番上は駅のホームになっていて
生まれ育った街が見おろせた
私が覚えている以上に
街は細かいところまできちんとあった
汚れた壁の前で
両親と兄とが手を振っていた
本当は私の旅立ちなのだと知った


脈を取ると指先に
セミの鳴き声が
伝わってくる
僕らの身体の中にも
駆け抜けていく夏があったのだ
どうかお元気で
手を振り
手を降り返したあなた
あの日に
友だちでいてくれて良かった
セミの鳴き声が
伝わってくる
僕らの身体の中にも
駆け抜けていく夏があったのだ
どうかお元気で
手を振り
手を降り返したあなた
あの日に
友だちでいてくれて良かった


交差点の向こう側で
指揮者がタクトを振っている
その動きに合わせて
たくさんの仔猫たちが
次々に海へと入っていくのが見える
カタクチイワシの群れが来ているのだ
胡麻漬け
卯の花漬け
つみれにしても美味しいなあ
食べ方は思いつくのに
忘れてはいけない人の名前だけは
どうしても思い出せない
こうして信号待ちしている間に
きっと僕も歳をとっていくんだろう
書き損ねた遺書のように
今日も空ばかり高くて
指揮者がタクトを振っている
その動きに合わせて
たくさんの仔猫たちが
次々に海へと入っていくのが見える
カタクチイワシの群れが来ているのだ
胡麻漬け
卯の花漬け
つみれにしても美味しいなあ
食べ方は思いつくのに
忘れてはいけない人の名前だけは
どうしても思い出せない
こうして信号待ちしている間に
きっと僕も歳をとっていくんだろう
書き損ねた遺書のように
今日も空ばかり高くて


家に帰ると
なかったはずの、が
いて
言わなかったはずの
おかえりを
言ってくれる
それから
なかったはずの
夕食の支度が始まる
なかったはずの、は
キッチンで月の光のように
つるつるとしている
なかったはずの、が
あまりにきれいなので
僕らはあこがれ
すべてを
なかったはずの、
ことにしてきた
なかったはずの、は
大きくなって
部屋にいたはず、の
君も僕も
もう見えなくなってる
なかったはずの、が
いて
言わなかったはずの
おかえりを
言ってくれる
それから
なかったはずの
夕食の支度が始まる
なかったはずの、は
キッチンで月の光のように
つるつるとしている
なかったはずの、が
あまりにきれいなので
僕らはあこがれ
すべてを
なかったはずの、
ことにしてきた
なかったはずの、は
大きくなって
部屋にいたはず、の
君も僕も
もう見えなくなってる


母とふたり
ブランコを引きずって歩く
強い陽射しに皮膚は焼かれていく
健康に良いことだ
母は教えてくれた
たくさんの人とすれ違う
みな一様に微笑んでくれる
支柱が肩に食い込んで痛いと言うと
母は困った顔をするけれど
それはいつも
悲しい顔とちがう
公園では親子連れが
ブランコ遊びをしている
その姿は喜びと幸せに満ちている
流れ落ちる汗に溺れそうな僕らも
多分そう見えたことだろう
夏に関していえば
今もそれより他の夏を知らない
ひとり
母の死体を引きずって歩く
ブランコを引きずって歩く
強い陽射しに皮膚は焼かれていく
健康に良いことだ
母は教えてくれた
たくさんの人とすれ違う
みな一様に微笑んでくれる
支柱が肩に食い込んで痛いと言うと
母は困った顔をするけれど
それはいつも
悲しい顔とちがう
公園では親子連れが
ブランコ遊びをしている
その姿は喜びと幸せに満ちている
流れ落ちる汗に溺れそうな僕らも
多分そう見えたことだろう
夏に関していえば
今もそれより他の夏を知らない
ひとり
母の死体を引きずって歩く