プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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本が泣いてわたしになる
わたしになってわたしは
栞を探している
手を伸ばすとその向こうで
むかし弟をしていた人が
雑草を抜いている
外には他にも生きものがいて
窓という窓は
その呼吸でくもっている
半年の間町内会の書記を務め
あとは泣かなくなったその人のために
かわいそうなお話を
たくさん作った
抜いた雑草を栞にしてあげる
その人は言ったけれど
最初からそんなものは生えていない、と
わたしだけが知っているので
とても申し訳なく思う
何度も頭を下げ
あとがきを呟いている
わたしの声が聞こえる
わたしになってわたしは
栞を探している
手を伸ばすとその向こうで
むかし弟をしていた人が
雑草を抜いている
外には他にも生きものがいて
窓という窓は
その呼吸でくもっている
半年の間町内会の書記を務め
あとは泣かなくなったその人のために
かわいそうなお話を
たくさん作った
抜いた雑草を栞にしてあげる
その人は言ったけれど
最初からそんなものは生えていない、と
わたしだけが知っているので
とても申し訳なく思う
何度も頭を下げ
あとがきを呟いている
わたしの声が聞こえる
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お花畑のようなものでできた駅に
列車が到着して
たくさんの乗客が降りてくる
小さなホームはやがて人で溢れかえり
それでも乗客は降り続ける
もう車内に
人っ子一人残っていないというのに
もちろん夢の中の話にちがいないのだが
誰が見ている夢かわからないので
いつまでも人は降り続けるしかないのだ
列車が溶けてだして
ナマコみたいなものになると
ようやくどこか遠くの方から
夏に生きる虫たちの
発声が聞こえ始める
列車が到着して
たくさんの乗客が降りてくる
小さなホームはやがて人で溢れかえり
それでも乗客は降り続ける
もう車内に
人っ子一人残っていないというのに
もちろん夢の中の話にちがいないのだが
誰が見ている夢かわからないので
いつまでも人は降り続けるしかないのだ
列車が溶けてだして
ナマコみたいなものになると
ようやくどこか遠くの方から
夏に生きる虫たちの
発声が聞こえ始める


木、その大きな直立
階段でいっしょになって笑い
二段抜かしをした九歳のように
セミの声だけが
音でよかった
根元に座って
レンガらしいレンガばかりを
レンガと呼び
それ以外のものはどこまで届くか
投げて遊んだ
じゃんけんの後出しが得意で
ねこじゃらしをいっぱい集め
珍しい虫や人の話もした
葉、その夕方の揺らめき
覚えている花の名を数えると
足りないのでまた笑った
言葉だけで
すべてが語れる気がしていた
明日見たこともない飛行機が来て
何もかもがなくなっちゃうなんて
知りもしなかった
階段でいっしょになって笑い
二段抜かしをした九歳のように
セミの声だけが
音でよかった
根元に座って
レンガらしいレンガばかりを
レンガと呼び
それ以外のものはどこまで届くか
投げて遊んだ
じゃんけんの後出しが得意で
ねこじゃらしをいっぱい集め
珍しい虫や人の話もした
葉、その夕方の揺らめき
覚えている花の名を数えると
足りないのでまた笑った
言葉だけで
すべてが語れる気がしていた
明日見たこともない飛行機が来て
何もかもがなくなっちゃうなんて
知りもしなかった


香ばしい匂いがして
私を育ててくれた人が
パンになってる
押せばふかふかするくらい
焼きたてだった
少し離れたところに
積まれた下着に向かって
丁寧にお辞儀をしている
どこが手か足かもわからないのに
礼儀だけはいつまでも
忘れることができないのだ
きれいなパンになったんだね
そうなの?きれいなものは皆パンなのね
かつてその人がしてくれたみたいに
下着を一枚一枚たたんだ
さっき見た庭の雑草の類は
明日にでも抜くことにしよう
多分その後で
泣いてしまうんだろう
私を育ててくれた人が
パンになってる
押せばふかふかするくらい
焼きたてだった
少し離れたところに
積まれた下着に向かって
丁寧にお辞儀をしている
どこが手か足かもわからないのに
礼儀だけはいつまでも
忘れることができないのだ
きれいなパンになったんだね
そうなの?きれいなものは皆パンなのね
かつてその人がしてくれたみたいに
下着を一枚一枚たたんだ
さっき見た庭の雑草の類は
明日にでも抜くことにしよう
多分その後で
泣いてしまうんだろう


あなたの古い帽子の色を
新しくし続けている
寂しいことがいつも
正しいこととはかぎらないけれど
もう少し、窓を、開けて
虫たちのお葬式が
時々見えるから
小さな座卓では
行儀の良い子どもが
おもちゃの形を楽しみ
その手は澄みわたってる
新しくし続けている
寂しいことがいつも
正しいこととはかぎらないけれど
もう少し、窓を、開けて
虫たちのお葬式が
時々見えるから
小さな座卓では
行儀の良い子どもが
おもちゃの形を楽しみ
その手は澄みわたってる


僕らは空気を育てた
空気を育て空気と遊んだ
外を連れて歩くと
人はそれを風と呼んだ
空気は僕らを食べて育った
食べられて僕らは
その大きなお腹のようなところで
何度も生まれかわった
何度生まれかわっても
手をつなぐことができた
ある日僕だけが
生まれかわらなかった
君は何度も生まれかわり
僕は何度も生まれかわらなかった
君は小さな石に僕の名を刻んだ
お墓みたいだ
僕は笑ったが
マタニティクリニックへとゆっくり歩く
君の後姿が
朝の空気を伝わってくる
空気を育て空気と遊んだ
外を連れて歩くと
人はそれを風と呼んだ
空気は僕らを食べて育った
食べられて僕らは
その大きなお腹のようなところで
何度も生まれかわった
何度生まれかわっても
手をつなぐことができた
ある日僕だけが
生まれかわらなかった
君は何度も生まれかわり
僕は何度も生まれかわらなかった
君は小さな石に僕の名を刻んだ
お墓みたいだ
僕は笑ったが
マタニティクリニックへとゆっくり歩く
君の後姿が
朝の空気を伝わってくる


昨日は開襟シャツの男が死んだ
今日はスプーンをくわえた女の死体を見ながら
明日もきっと生きているものは逝くのだろう
死は簡単に転がっていて
気づかないふりをして過ごす毎日は
とても息苦しい
こんなことができるのはあなたしかいないんですよ
皆が振り向いたその視線の先にいるのが
自分でなくて良かった
自分が自分であるというアリバイなど
誰にも証明することなどできないのなから
真実は本当にいつもひとつなんだろうか
そんなもの最初からないのかもしれない
忘れられた夕暮れ
のような事実の断片にむかって
ボールをおもいっきり
蹴りこんでやりたくなる
今日はスプーンをくわえた女の死体を見ながら
明日もきっと生きているものは逝くのだろう
死は簡単に転がっていて
気づかないふりをして過ごす毎日は
とても息苦しい
こんなことができるのはあなたしかいないんですよ
皆が振り向いたその視線の先にいるのが
自分でなくて良かった
自分が自分であるというアリバイなど
誰にも証明することなどできないのなから
真実は本当にいつもひとつなんだろうか
そんなもの最初からないのかもしれない
忘れられた夕暮れ
のような事実の断片にむかって
ボールをおもいっきり
蹴りこんでやりたくなる


押入れの中で目覚めると
いつものように優しくなってる
手も足もおもいっきり伸ばして
指先の細かい部品までもが
思いやりに溢れている
感謝の言葉は誰に対しても
正確に発することができる
決して争わない
というプログラムは
本当はそんなに難しいものじゃない
けれどそのコードを
自分たちに書き込む術を知らないので
たくさんの人たちが困っている
メガネをかけた少年が
庭で六月の紫陽花を見ている
これから何度その名を呼ぶのか
およそ百年の後
自分が生まれるときには
もうとっくにいないというのに
いつものように優しくなってる
手も足もおもいっきり伸ばして
指先の細かい部品までもが
思いやりに溢れている
感謝の言葉は誰に対しても
正確に発することができる
決して争わない
というプログラムは
本当はそんなに難しいものじゃない
けれどそのコードを
自分たちに書き込む術を知らないので
たくさんの人たちが困っている
メガネをかけた少年が
庭で六月の紫陽花を見ている
これから何度その名を呼ぶのか
およそ百年の後
自分が生まれるときには
もうとっくにいないというのに


雲しうみへ
おそいひるのひ
おちていくかけ
ひと
めしあげないで
干しのさなかに
えりのひかりに
しすた
えんじん
むし、き
命めくこと
ろめんにかせのね
さみゅえる
こちらへ
まつすぐに
葉きるは
ひるべにねるこ
あかしのなとなり
きみ、いつか
あえてよかった
おそいひるのひ
おちていくかけ
ひと
めしあげないで
干しのさなかに
えりのひかりに
しすた
えんじん
むし、き
命めくこと
ろめんにかせのね
さみゅえる
こちらへ
まつすぐに
葉きるは
ひるべにねるこ
あかしのなとなり
きみ、いつか
あえてよかった