プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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校長室には牛がいました
校長先生の牛でした
健康に育ちました
たくさん話かけました
ある日牛が大きなあくびをすると
校長先生はその中にとび込みました
牛だけが後に残されました
旅とはいつでも
大切なものを置いていくものですから
カーテンに開いた穴から
五月下旬の陽が差していました
子供たちの出鱈目な声が響いていました
照れると二の腕をかく癖がありました
楽しいことにはよく笑いました
校長先生の牛でした
健康に育ちました
たくさん話かけました
ある日牛が大きなあくびをすると
校長先生はその中にとび込みました
牛だけが後に残されました
旅とはいつでも
大切なものを置いていくものですから
カーテンに開いた穴から
五月下旬の陽が差していました
子供たちの出鱈目な声が響いていました
照れると二の腕をかく癖がありました
楽しいことにはよく笑いました
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身体の中に高速道路
を抱く女
車の往来があり
多ければ渋滞になった
特にそれは料金所付近で
もちろんETCも使えた
あちらこちら防音壁は壊れ
溢れて久しかった
両の乳房に顔をうずめるぼくに
意気地無し
と言って道路管理者の工事車両の
運転手とねんごろな関係になり
音ずれする虫の羽の
ように会釈をした後は
知らない僕の叔母さんになり
子供をふたりもうけた
時々苦しければ深呼吸を
せめて二、三回でもいいから
何よりも喪服姿が美しかった
を抱く女
車の往来があり
多ければ渋滞になった
特にそれは料金所付近で
もちろんETCも使えた
あちらこちら防音壁は壊れ
溢れて久しかった
両の乳房に顔をうずめるぼくに
意気地無し
と言って道路管理者の工事車両の
運転手とねんごろな関係になり
音ずれする虫の羽の
ように会釈をした後は
知らない僕の叔母さんになり
子供をふたりもうけた
時々苦しければ深呼吸を
せめて二、三回でもいいから
何よりも喪服姿が美しかった


バスに小川が乗ってきた
どこにも流れることのできない小川は
だらしなく床に広がった
立っている人は足を濡らした
座っている人は足を濡らさないように
座席の上に膝を抱えた
大学病院
駅入口
学園前
次々と乗客は降り
小川だけが終点まで乗った
終点は春の野原だった
降りた小川は春の野原を流れた
バスは一匹の魚になると
水の流れにとび込み
運転手だけが後に残された
やがて運転手は製紙工場で働く女性と結婚し
わたしは産声を発した
わたしがもの心ついて
最初に手を振った人だった
どこにも流れることのできない小川は
だらしなく床に広がった
立っている人は足を濡らした
座っている人は足を濡らさないように
座席の上に膝を抱えた
大学病院
駅入口
学園前
次々と乗客は降り
小川だけが終点まで乗った
終点は春の野原だった
降りた小川は春の野原を流れた
バスは一匹の魚になると
水の流れにとび込み
運転手だけが後に残された
やがて運転手は製紙工場で働く女性と結婚し
わたしは産声を発した
わたしがもの心ついて
最初に手を振った人だった


服を買って着替える
着替えている途中にそば屋があったので
天ぷらそばを注文する
持ってきたのは昔の恋人だった
昔のように優しくしてくれた
着替えをしながら自分はそばだけを食べ
天ぷらはあげた
終わらない着替えのまま
交差点で信号待ちをしていると
知らない人に市民会館への行き方と
これからの生き方について聞かれた
前者はなるべく丁寧に答えた
後者は着替えで手一杯だった
入浴中の音が聞こえる家の前を通り過ぎ
きれいな色のプラスチックが並ぶ百円ショップに出る
県道を更に進み
コップを倒し水に濡れる
何かを踏みつけて
足音が想像できなくなる
もういい加減止めたい
でもそれは着替えではないと思う
というより寧ろ思いたいのだと自分に言いきかせたくなる
実家からダンボール箱いっぱいの衣服が届く
おまえは着替えが下手だから
と散々言われてきたのに
おまえは着替えが下手だから
と手紙にも書かれている
ここからも同じくらい美しい空が見えます
嘘の返事を書く
そうこうしているうちに
ただ日ばかりが暮れていく
他に暮れるものなどないのに
着替えだけが何の約束もされることなく
どこまでも続く
着替えている途中にそば屋があったので
天ぷらそばを注文する
持ってきたのは昔の恋人だった
昔のように優しくしてくれた
着替えをしながら自分はそばだけを食べ
天ぷらはあげた
終わらない着替えのまま
交差点で信号待ちをしていると
知らない人に市民会館への行き方と
これからの生き方について聞かれた
前者はなるべく丁寧に答えた
後者は着替えで手一杯だった
入浴中の音が聞こえる家の前を通り過ぎ
きれいな色のプラスチックが並ぶ百円ショップに出る
県道を更に進み
コップを倒し水に濡れる
何かを踏みつけて
足音が想像できなくなる
もういい加減止めたい
でもそれは着替えではないと思う
というより寧ろ思いたいのだと自分に言いきかせたくなる
実家からダンボール箱いっぱいの衣服が届く
おまえは着替えが下手だから
と散々言われてきたのに
おまえは着替えが下手だから
と手紙にも書かれている
ここからも同じくらい美しい空が見えます
嘘の返事を書く
そうこうしているうちに
ただ日ばかりが暮れていく
他に暮れるものなどないのに
着替えだけが何の約束もされることなく
どこまでも続く


真夏日、沿岸部には波浪注意報が発令され
世界中の溝口さんが落下していた
親戚の少女は大きな中華鍋を持って
兄と一緒に家を出て行く
重い、と言うと兄は悲しそうに首を振った
牛の死体を引きずるのに精一杯だったのだ
溢れんばかりの愛が生産され続けている
兵士は砲台に立ち
妻の干した洗濯物が良く乾くように願った
その先に詩などあるはずもない
世界中の溝口さんが落下していた
親戚の少女は大きな中華鍋を持って
兄と一緒に家を出て行く
重い、と言うと兄は悲しそうに首を振った
牛の死体を引きずるのに精一杯だったのだ
溢れんばかりの愛が生産され続けている
兵士は砲台に立ち
妻の干した洗濯物が良く乾くように願った
その先に詩などあるはずもない


鳴く電灯があったので
となりに
鳴かない電灯を置いた
テーブルは墓石のように
きれいに磨かれていた
ほぐれていくね
握った手を開くと指は
どこまでも伸びていかなくて
ヒツジみたいに
あなたを愛した
お伽噺は
いつもそこで終わっている
となりに
鳴かない電灯を置いた
テーブルは墓石のように
きれいに磨かれていた
ほぐれていくね
握った手を開くと指は
どこまでも伸びていかなくて
ヒツジみたいに
あなたを愛した
お伽噺は
いつもそこで終わっている


駅前の商店街で産まれ育った
近くには八幡神社があって
お祭りの時には店の前の広い道路は
歩行者天国になった
ふだん車の往来が激しい道路を歩くと
何だかくすぐったい気持ちになって
誰かの服の端を掴まずにはいられなかった
自転車が欲しいとせがみ
この色しか残ってない、と
赤い自転車を月賦で買ってもらった
月賦で自転車を買ってもらった
親のいる前でもいない前でも
会う人すべてに自慢げに話した
少し歩くと海があり
一人で行くことは禁じられていたけれど
たまに大人に手を引かれて行くことがあった
ビニルだかクラゲだかわからないものが
たくさん浮いていた
そのうちのいくつかは本当のビニルで
いくつかは本当のクラゲだったと思う
その頃まわりには優しい人がいっぱいいて
落し物をすると
拾って届けてくれたりした
近くには八幡神社があって
お祭りの時には店の前の広い道路は
歩行者天国になった
ふだん車の往来が激しい道路を歩くと
何だかくすぐったい気持ちになって
誰かの服の端を掴まずにはいられなかった
自転車が欲しいとせがみ
この色しか残ってない、と
赤い自転車を月賦で買ってもらった
月賦で自転車を買ってもらった
親のいる前でもいない前でも
会う人すべてに自慢げに話した
少し歩くと海があり
一人で行くことは禁じられていたけれど
たまに大人に手を引かれて行くことがあった
ビニルだかクラゲだかわからないものが
たくさん浮いていた
そのうちのいくつかは本当のビニルで
いくつかは本当のクラゲだったと思う
その頃まわりには優しい人がいっぱいいて
落し物をすると
拾って届けてくれたりした


皿の上に電灯があった
鶏肉がなかった、と
きみは言った
どうやって食べるのか聞くと
説明書をくれた
そのとおりに取り付けてみる
電灯はきゅこきゅこ音をたてた
飛べやしないのに
鳥の鳴き声のようだった
電気はきちんとついた
何も間違ってなどないし
もちろん食べてはいけない
とも書いてない
明日、鶏肉買いに行こうね
君は小さく頷き
二、三日生理が遅れている
と言った
鶏肉がなかった、と
きみは言った
どうやって食べるのか聞くと
説明書をくれた
そのとおりに取り付けてみる
電灯はきゅこきゅこ音をたてた
飛べやしないのに
鳥の鳴き声のようだった
電気はきちんとついた
何も間違ってなどないし
もちろん食べてはいけない
とも書いてない
明日、鶏肉買いに行こうね
君は小さく頷き
二、三日生理が遅れている
と言った


僕の名前はヤン坊かもしれない
僕の名前はマー坊かもしれない
二人合わせて
ここにタッチかもしれない
そこにいるのはマナ?
そして隣にいるのはカナ?
二人合わせて
ザ・ピーナッツかもしれない
今日も何秒かに一組
ふたごは生まれている
1たす1は常に2である
ということを証明するためにではない
魂の産声を2倍にし
世界中の空気を
隅々まで震わせるためにだ
僕の名前はマー坊かもしれない
二人合わせて
ここにタッチかもしれない
そこにいるのはマナ?
そして隣にいるのはカナ?
二人合わせて
ザ・ピーナッツかもしれない
今日も何秒かに一組
ふたごは生まれている
1たす1は常に2である
ということを証明するためにではない
魂の産声を2倍にし
世界中の空気を
隅々まで震わせるためにだ