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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2025/06/18 (Wed)
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2006/02/22 (Wed)
無駄口を叩いている君の側で
僕は電卓を叩いている
端数がうまく積み上がらない
けれど僕の電卓は旧式だから
いつも君の指を叩こうとしてしまう

時計は見たこともない時計回り
僕は長針をかじり
君は短針をかじろうとする
秒針は無いので
それはそのまま
けれど時計は旧式だから
いつも僕らを時間と間違えてしまう


  野原の真ん中近くで名義の無い自転車の車輪は曲がった

  炎天下、ピアノはさぶいぼだらけのピアニカになった

  ヘビのぬいぐるみはある日唐突にお母さんと呼ばれた

  でも実は悲しいお父さんだった

  旧式に過ごされる毎日の中で
  君が失い、僕が忘れてしまった
  いくつかのことと
  すべてのこと


僕らの

 鶏肉は旧式だから
 香ばしい香りをたてて発情してしまう

 椅子は旧式だから
 背もたれと脚はたくさんの人型の型になってしまう

 窓という窓は旧式だから
 窓の外と外はどこまでも繋がっている

 缶切りは旧式だから
 切断面は虹色の天気予報士となる

 さて、その天気予報士といえば旧式だから
 何も予報することなく海底から浮上してこない


ねえ、僕は誰よりも嘘をつくのが得意な子供だった
でもやっぱり旧式だから
まだ生まれてこない君を思い出してしまう


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2006/02/21 (Tue)
濁った色の運河を
僕の手が流れていく
腫れ物に触るように
どこか遠慮がちな様子は
やはり僕の手らしかった

妻を抱き
娘を抱き
椅子の背もたれを掴み
いろいろな手続きをしてきた手
けれどその手は
誰も傷つけたことはない
何故ならいつも必ず
言葉で傷つけてきたから

手を見送りながら
振るべき手も
祈るために合わせるべき手も
持たずに立ち尽くす僕は
遠くから見えた
一本のとげだった

2006/02/20 (Mon)
とげ屋に行った
店には色彩のきれいなとげや
いい匂いのするとげが並べられていた
地味目で自分によく似たものを買うことにしたが
名前はどこか似てない感じだった
店を出ると
空は漫然と晴れていて
少しも当たり所がなかった
夜、家の者が寝静まってから
とげを刺してみる
わずかばかり痛みがあったけれど
それで何かを語ることも
違う気がした
2006/02/20 (Mon)
その浴室には
窓が無かった
窓どころか
シャワーや
バスタブも無かった
それでも入口に
「浴室」
と書かれていたので
男はそこを浴室だと思った
よくしつ
男はゆっくりと発音した
文字を見れば声にして読むのが癖でした
年老いた母親は
喪服姿で泣き崩れた


2006/02/18 (Sat)
裏庭から
雨音に紛れて
犬が落下していく
音が聞こえる
どこまで落ちていくのか
犬にも僕にもわからないまま
犬は落下し続け
僕は音を聞き続けている
少し傲慢に生きてきて
思い出は美しい
だから今でも僕は
思い出以外のものに
優しくなれない
やがて音が止まると
今度は僕の落下が始まる
きちんとお座りをして
僕の落下する音を聞いている犬に
雨のあたっている
音が聞こえる

2006/02/17 (Fri)
フライドポテトを
鉛筆削りで削り続けた
すっかり疲れると
ハンバーガーに
紙やすりをかけた

やがて消えてなくなる
という結果は
すべてにものに等しく訪れる

四日目の早朝
窓を開け放ち
僕の名付け親だった寂しい親戚は
一番遠くの海に飛び込んだ


2006/02/15 (Wed)
右目がポケットに落ちた
左目を瞑るだけで
見なくて済むものは見えなくなったけれど
溜まっていたゴミや砂が入って
右目からは涙が止まらない
あの人のズボン泣いてるみたいだね
と言う男の子の隣で
母親がとても嫌そうな顔で立っている
こんなにもたくさん
身体から水分が出たというのに
何も生まれてこないし
人の絵を描けばきっと
はだ色に塗りつぶすに違いなかった

2006/02/14 (Tue)
風が吹いていた
風のように母は声になった
声のように鳥は空を飛んで
鳥のように私は空腹だった
空腹のように
何も欲するつもりはなかったのに
母についていくつか
願い事をした
2006/02/12 (Sun)
走れなくなったバスを
腕のあるバスが抱えて走っている
耐え切れなくなるまで
そうしているつもりなのだ

男がたった一つの嘘をついて
二台のバスたちは
言葉に回収されてしまった

いたたまれない気持ちになったが
どんなに後悔しても
男は運転手だった
2006/02/11 (Sat)
サメのひれを持った人が
ゾウの鼻を踏んづけたまま
時計の歌を歌った

それで終わる物語に
読み仮名だけが振られている

今日は春も近いのに
誰も二階から降りてこない
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* ILLUSTRATION BY nyao *