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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
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57
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男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2024/12/05 (Thu)
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2005/11/01 (Tue)
中村が集団となって土ぼこりをあげながら
ひなびた温泉街を走る
中村が健脚だとは聞いていたが
この地で生まれ育った番頭ですら
中村がどこに行こうとしているのか知らない
おい、とうろく、ちょいと見ておいで
丁稚奉公のとうろくは何処かに行く途中だったが
日ごろ目をかけてくれている番頭の言いつけならば仕方ない
草履をつっかけて中村の後を追いかけていく
いったい何里走ったことか
中村の脚は次第に鈍り始め
やがて何かの順番を待つかのように
すっかり動かなくなった
とうろくは伸びをしたり飛び跳ねたりしてみたが
自分より背丈のある中村が邪魔になって
先の中村がどうなっているのか様子がわからぬ
ならば、とそこは幼い頃を山の中で過ごしたとうろく、
大きな樫の木に登り
中村の頭、頭、頭、の連なりの先を見晴らしてみる
大きな川が流れていて中村が次々と入水しているのが見える
川を渡るのが目的ではなく、川を流れていくのが目的
であるかのように川に入った中村は
抵抗することもなく流されていく
水を飲みすぎ大きく腹を膨らませながら流れていく中村
大きな岩にぶつかりぱっくりと割れた頭の中村
その光景が大変なことなのか
それともどうでも良いことなのか
とうろくは皆目検討もつかない
とりあえず番頭に知らせなければ
と、来た道を走る
途中、そういえば厠に行くところだったのだと思い出し
道の端で立小便を始める
ああ、小難しいことを知らないというのは幸せなことかもしれない
小水が抜けていくと同時に頭が空っぽになっていく気がして
首を振ってみる
耳垢のこそばゆい音ばかりが聞こえる


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