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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2011/06/21 (Tue)
 
 
アトリエで
鳥と歌う
リスと笑う
鉛筆に泣く
 
 +
 
飽きてしまった
飛ぶことにも
理屈をつけることにも
襟を汚したまま
  
 +
 
空いているところに
特記事項を書く
立夏は過ぎた
駅の事務所で

 +

あくびをした
突然した
リボンをかけても良い?
えくぼの代わりに
 
 +
 
アメリカだったね
通りの向こう側
リンダ、手を振った
円で買った、リンダ
 
 +

雨はやがてあがり
都心ではひっそりと
立方体の箱に
エビが詰められている

 +

足に眠っている
ト音記号の抜け殻
リズムは逝く
液体となって

 +
 
アトリエなどなかった
鳥も
リスもいなかった
鉛筆がただ描き続けた
 
 
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2011/06/17 (Fri)
 
 
飛行機雲がかかっている
港湾事務所のひび割れた窓の外に
海はすでに手続きを済ませ
気体との区別を曖昧にし始めている
偶然という言葉だけでは
もう生きていけない
 
 
 +
 
 
必然が家々の屋根に降り積もるころ
子どもたちは睡眠の中を生きる
失うことも
傷つくこともない
ぐずついた空だけが夢の中に広がり
模型飛行機に搭乗する
 
 
 +
 
 
昼間なのに伝えたいことがたくさんある
交通規制のひかれた交差点で
鱗を剥がしながら話していると
記号の断片しか口から出てこない
群青の海に消えかけている飛行機雲
目的も目的地もあやふやにして
  
 
2011/06/12 (Sun)


皮膚を持つ、
匿名の

 +

ひりひりした痛みを
登記するものとして


 +++


ひつじが忠実に
時計を分類している
広くて静かな
都会の一室、そして
ひまわりは鳴く
砦が陥落した後に


 +++


ひとはもう
飛ばなくていいの?

 +

ひとりで
年を取っていくの?


 +++


筆跡が幼いまま
冬眠する子ども
昼間のざわめく梢の下で
トロンボーンを担いだ 
非番の楽団員が
答辞を読み上げている


 +++


飛行機雲、明日は
とってきて

 +

一口だけ
トーストをかじっているから

 
 +++


ひとは
特別なの?それとも

 +

ひとが
特別なの?


 +++


人気のない背中が
通り雨に濡れている

 +

ひき潮の匂いを
トランクにつめる、音
 
 
 
2011/06/04 (Sat)
 
 
ひとつ、またひとつ
豆腐が落ちていく
月のテーブルから


+


引継書は、深夜
透明に
積まれて


+


陽だまりに
トマトの痕跡
使わないのに


+


筆順のない駅を
特急列車は
通過してしまう


+


ひとりでは、もう
飛べない
つきあたりは雨


2007/08/29 (Wed)
やさしみの
さかなが
しずかに
みなもをおよぐ

やわらかな
さざなみは
しあわせなきおくを
みたそうとする

やきつくされたあさ
さいれんがなりひびく
しきはまためぐり
みらいなんてしらない

やさしさをくちにふくみ
さかなはいく
しろくまずしいいきつぎをして
みずはひとのかたちににている
 
2007/04/16 (Mon)
はざくらがきれいだった
るうとのけいさんはいつも
にがてだった
すしやにかくまわれてる
ごうとうのせんたくものにも
すずしいかぜがふいた

+

ははに
るびいをかってあげた
にせものだけど
すてきね、と
ごきげんなようすで
すかいだいびんぐした

+

はかをつくっている
るいしんが
にるいべえすのそばで
すきだったはなをそなえているあいだに
ごにんのそうしゃは
すちいるをきめた

+

はつかねずみからのでんごんが
るすばんでんわにはいっていた
にえすぎた
すきやきは
ごはんがとても
すすみます、それでは

+

はるにすごす
るくせんぶるくのあきち
にほんごのじょうずな
すいすじんと
ごりらとが
すきまをふさぎながら


2007/04/02 (Mon)
亀を背負って
懐かしい人の苗字を呼びながら
塩を舐め続ける
水が飲みたい

+

かまきりの新しい
亡骸を
司書は黙って
見ている

+

カンガルーが直立したまま
波音を聞いている
尻尾の先には
民家が一軒ある

+

かなしみに似たものを
鍋に入れて
静かにあなたが
味噌を溶いてる

+

カーテンが風に
なびく
島根県の
皆川さんの八畳間で

+

カナカナが
鳴き始めた
親戚のおばさんは
ミンミンゼミが、と書いた

+

かなしみ、と
名づけられた海を
白いゼッケンをつけた父が
道と間違えてどこまでも走っていく


2007/03/12 (Mon)
魚は
夜に鳴く
なくした
ラッパを思って

+

砂糖瓶を
よく洗って石段に
並べていくと橋を渡る
来客があった

+

探し物の
予定のない日
菜の花畑で一人
ラジオを分解してる

+

砂漠からはぐれて
夜明け前の古びた
仲見世通りを
ラクダは行進する

+

さよなら
幼稚園のお庭
夏が来るね、昔の
落書きみたいに



2007/03/09 (Fri)
雨が降っていた
陸地のいたるところに
がんもどきと
豆腐は今日も
売られていた

+

暑い日が続き
両親は
学校へと行った
届けたかったのだ
うちわをあなたに

+

アリの匂いが
両手からする、と
ガスのボンベを
取り替えている人に
打ち明けた

+

兄が
りんごを剥く
蛾が飛んできて
隣の窓からはいつも
海しか見えない

+

ありがとう
理屈や理由ではなく
瓦礫に花を植えて
弔いもたくさんしよう
嬉しかった少し触れて

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* ILLUSTRATION BY nyao *