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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
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56
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男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2001/12/04 (Tue)
少年は
旅に出た

真っ白なノートを
一冊持って

そのノートに
この世のすべての言葉を

すべての意味を
書くために

街には
言葉が溢れていた

朝には朝の
昼には昼の

夜には夜の
言葉があった

老人には老人の
子供には子供の

男には男の
女には女の

言葉があって
その一つ一つを

少年はノートに
書き留めた

森に行けば
鳥の囀りや

動物たちの鳴き声
木々のざわめきを

少年はノートに
書き綴った

少年は
異国に渡った

異国に渡る船の中では
乱暴な船乗りの言葉を

静かな海の歌声を
荒れ狂う海の怒りを

魚の呼吸を
書き続けた

異国の地は
知らない言葉だらけだった

少年はそれらの意味を
身振り手振りで尋ね

ノートに
書き連ねた

少年は何度も
同じ地を歩いた

言葉は変る
時には緩やかに

時には
加速度を増して

一度書いたものを
何度も書き直した

その間故郷では
父親が土になった

それを知ることもなく
少年は

いつの日か
青年になっていた

そしてある日青年は
恋に落ちた

青年はノートを
ひっくり返して

自分が記した
美しくて

綺麗な言葉を
手紙にしたためた

女は
手紙を読むと

青年の目の前で
丸めて捨てた

青年は何度も何度も
手紙を書いたが

その度に
手紙は捨てられた

どうして
どうして

こんなに綺麗で美しい
言葉なのに

女は言った
あなたの手紙はまるで標本のようね

青年は
その意味を考えた

旅に出て初めて
青年はその日

ノートに言葉を
書かなかった

青年は
考え続けた

街で
森で

船の上で
異国の地で

砂漠で
戦場で

そして青年は
決心し

すべてのノートを
焼き捨てた

今、青年の胸の中には
一つの言葉がある

今まで書き綴った
どんな言葉よりも

尊い言葉が
胸の中にある

青年は走った
女のもとへ

一番最初にその言葉を
女に聞かせたくて

たった一つの言葉を抱いて
青年は

走った

走った




これで言葉を書き続けた青年のお話はおしまいです
彼の恋の行方はどうなったのでしょうか
彼が最後に見つけた言葉とは何だったのでしょうか
これから先は
皆さんの物語として

すべてのものは変質します
それが時間です
言葉も変ります
時には緩やかに
時には加速度を増して

時々私は思うのです
変らないものもこの世には
あるのではないかと

例えば
いつの世でも

女は
井戸端会議が好きであるということ

男は
スポーツ新聞が好きであるということ

そしていつの世でも
男と女は

求め合う存在であるということ
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