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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2025/06/19 (Thu)
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2005/06/10 (Fri)
ため息が汽笛となり
涙は色の無い雨となり
配膳車で旅をする
乗っているのは
おまえたちというより
俺たち
港町
哀歌
巨大なカウンターに腰掛け
俺たちは
おまえたちの肩を
そっと抱き寄せる
たくさんの腕と
たくさんの肩
悲しい思い出は
どうでもいい記号になった
だから大切に
ポケットにしまっておけ
そして溢れ出す酒
飲んでも
飲んでも
飲まれるな
配膳車に載せられた鍋の中では
発酵食品が
暗い海の色
それは俺たちの未練
たらたら
たらこを一粒一粒
数え
今日の夕食は豪華ですと
アクセルをふかす
季節はいつも無情に過ぎ去り
紅白歌合戦に初出場し
歓喜するアイドルの
屋根裏部屋では
演歌に涙する
産み落とされたばかりの仔牛
ああ、立派なステーキになる
俺たちの行くべきところは
曖昧に定義され
さよなら
というおまえたちの言葉を
俺たちは口づけでふさぐ
たくさんの唇と
たくさんの唇
おまえたちの笑顔のために
俺たちの毎日は
もっと悲しくていい

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2005/06/10 (Fri)
錦糸町では世界が
落下を始めていた
世界は徐々に
錦糸町に収束し
凝縮し
一点の穴から
落下している
俺は子供の頃
家のものに連れられ
錦糸町駅で降りた
公園ではルンペンが
うずくまっていた
店のようなところでは
傘が売られていた
なぜ錦糸町にいなければならなかったのか
なぜ何も買ってもらえなかったのか
ただ俺はうつむいたまま
錦糸町は禁止
そんな駄洒落を
ずっと考えていた
錦糸町では世界が
落下を始めていた
錦糸町から世界は始まり
錦糸町で終わる
けれど世界のすべてが落下しても
錦糸町は決して落下しない
白く塗りつぶされた地図に
ぶらり
ぶらさがってる
錦糸町は遠くにありて思うもの
けれど錦糸町は俺から遠くなく
近くもなかった


2005/06/07 (Tue)
また太っちゃった、って
体重計に乗って君が言う

大好きな君が増えて嬉しいよ、って
ビールを飲みながら僕が言う

それは確かにあった事実だった
かもしれないけれど
大好きな君と
どこかに行ってしまった

2005/06/07 (Tue)
空は鋼鉄製の空
優しい飛行機だけが
僕らの所有する
すべてだった
乗客は皆
海のかたちをしていて
ポケットは
いつもだらしない
客室乗務員が
小学生のように
一人
また一人と
忘れられていく
きれいだったね
透きとおってないものが
どこまでも
透きとおっていったね
2005/06/03 (Fri)
男は長い間カバンの中に住んでいたが
ある日旅をすることにした
もちろんカバンを忘れることなく
昼間は旅を続け
夜になるとカバンの中で寝た
朝起きると同じ場所にいることもあったし
誰かの手によって
他の場所に運ばれていることもあった
カバンの中と外の世界はやはり違っていて
やはり同じだった
男はやがて死んでカバンを一つ残した
そして最後まで
何故自分がカバンの中に住んでいたのか
知ることはなかった


2005/06/03 (Fri)
すべてが終わると
その町にも銃を担いだ人たちがやってきた
彼らはこの国の言葉や
この国の言葉ではない言葉で話すものだから
町の人々はますます無口になった

少年は喧騒と沈黙でごったがえす市場通りの
人波をかきわけて原っぱのようなところについた
足元に落ちていた扉の鍵穴を拾い上げて覗いてみる
何も見えない
あたりまえだ
向こうに部屋など無いのだから

これから種をまいていく
転がっている靴の数だけ種をまくのだ
少年は誰に誓うでもなく
何となくそう思った

2005/06/01 (Wed)
窓ガラスがケラケラ笑うので
つられて笑った拍子に
右手にコンパスを刺してしまった
ついでに半径5センチ程の円を描こうとしたが
うまく描けないものだから
窓ガラスはいっそう声を高くして笑う
さすがに今度はこっちも頭にきて
ミニカーを投げつけ割ってやった
破片はケラケラと日の光を反射して
二度と笑うことはなかった
友だちが一人やってきて
窓ガラスが割れているね、と
悲しそうに言う
その日は一日二人並んで
割れた窓から外を眺めて過ごした
2005/05/31 (Tue)
ポストになりたくて男は
ポストの隣に立ち大きく口を開けた
ご丁寧に首から
「本物のポストです」
と札もぶら下げてみた
けれど誰も手紙を入れてはくれない
華やかに装った初老の女性も
悲しげな顔をした中年男性も
みな素通りして隣のポストに手紙を入れる
それどころか数度来た集配人すら
中を確認しようとはしない
日が暮れかけたころ
手の届かない女の子から手紙を受け取り
男は偽物のポストに入れたあげた
女の子は小さな声でお礼を言った
男は言葉の意味がすっかりわからなくなっていた
その晩 男は夢の中で大きなクジラになり
ゆう然と泳ぎもしたが
海はどこにも続いてなかった
2005/05/30 (Mon)
玉ねぎが自分で自分の皮をむいている

オレハ ドコニイルノダロウ

いくらむいても自分は出てこない
それでも玉ねぎは自分をむき続ける

オレハ イッタイ ドコニイルンダ

その間にも地では虫が低く鳴き
空ではいくつかの星が流れている
とうとう玉ねぎはすべての皮をむき終え
茫然と立ちつくした

オレガ ドコニモイナイノハ ワカッタ
ソレナラバ オレガ ドコニモイナト ワカッタ オレハ
イッタイ ドコニイルンダ

翌朝 台所でばらばらになっている玉ねぎを見ると
その家の女房は気味悪がってすべて捨てた
どうせ昨夜何かあったんだろう と夫は呑気に言った
いずれにせよ
メタファーなどなくても生きていけるという点において
二人とも共通して同じだった

2005/05/29 (Sun)
手紙は
シロヤギさんが食べました

シロヤギさんは
クロヤギさんが食べました

クロヤギさんは
僕が食べました

僕は夕方
手紙になりたい
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* ILLUSTRATION BY nyao *