忍者ブログ
こっそりと詩を書く男の人
  プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
  ブログ内検索
  月間アーカイブ

  最新記事
(04/10)
(03/29)
(03/27)
(03/22)
(03/20)
  最新コメント
[09/10 GOKU]
[11/09 つねさん]
[09/20 sechanco]
[06/07 たもつ]
[06/07 宮尾節子]
  最新トラックバック
  投票所
     
クリックで投票
 ↓ ↓ ↓
人気blogランキング
    
  バーコード
  カウンター
[121] [122] [123] [124] [125] [126] [127] [128] [129] [130] [131]
2025/06/20 (Fri)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2004/08/25 (Wed)
スチュワーデスさん、とスチュワーデスに声をかけると
私にはケイコという名前があるんです、とそっぽを向かれる
今度こそ間違いの無いように、ケイコさん、と呼ぶのだが
ケイコは押し黙ってしまう
「ケイコさんの実家は浜松で煎餅屋をやってるの」
彼女が耳元で囁く
何でそんなことを知ってるのだ?
「情報化社会よ」
そう言う彼女はこれから会いに行く俺の両親の職業も知りはしない
俺はただ単に機内サービスのアイスコーヒーが欲しいだけなのに
他の人のトレーにはオレンジジュースばかり並んでいる
「何を頼んでもいいのよ」
彼女がまた耳元で囁く
そういう問題じゃないだろうと思うのだ、俺は
確かにメダルの色は銀より金がいいに決まってる
けれどそれこそが元凶であるということを
俺は嫌というほど知っているつもりだし現に知っているつもりだ
いずれにせよ、ケイコにとってそんなのは重要ではない
鉛筆と紙をよこし、とりあえず好きなことを書いてください、とケイコは言う
俺に書きたいことなどあるものか
「好きなことを書けばいいの」
彼女の忠告どおり俺は今までの半生を書き始めた
二十二歳の夏、近所の草むらでの出来事にさしかかったあたりで
「死」という言葉を使わずに書いてください、ケイコが言う
冗談じゃない、ここまできてそれはないだろう
猛烈に抗議をするとケイコは悲しそうな顔でアイスコーヒーを持ってくる
仕方なく死に関連するところを消しゴムで消していく
今まで書いたことのほとんどが消えてしまったし
これから書こうとしていたことのほとんどが書けなくなった
何故俺の周りはこんなにも死人ばかりなのだ
人間ばかりではない
ひよこも出目金もミドリガメもヤモリもイモリも飼犬も飼猫も皆死にやがった
「誰もが皆いつかは死ぬのよ」
そうかもしれぬ
だが、それが俺たちの生きていることの理由になるのなら何だというのだ
「好きよ」
ああ、好きだ、ケイコ、俺はおまえが好きだ
ケイコ、何故俺たちはいつも愛し合うことができないんだ
記憶の中で悲しいのはおまえだけじゃない
他に御用は?というケイコの声が色も無くはみ出している
高度41,000フィートの空
ケイコは最早ケイコの体をなしていない


PR
2004/08/24 (Tue)
階段を降りると
昨日よりふかふかしていて
昔のおじいさんの背中を踏んづけているような
申し訳ない気持ちでいっぱいになる
急いで二階からエレベーターに乗り
皆に白い目でにらまれるけど
言い訳をしてはいけない
という昔のおじいさんの言い付けを思い出し
目だけをつむる
2004/08/16 (Mon)
曇った窓ガラスに
自分の家を描き
それから
母の勤めている店を描いて
でたらめな道でつなげてみる
窓が汚れるから、と
後で怒られたりもしたけど
それがわたしの初めて描いた
世界地図でした
2004/08/11 (Wed)
何はともあれ
やっとのことでお触りバーにたどり着いた
とにかくここまでの道のりが大変だったのだ
目覚し時計にカミキリムシが巣をつくって
がちゃがちゃ長針と短針を適当に動かすものだから
何時におきるべきかわからなくなるし
朝食だってそうだ
トーストとバターの順番が逆じゃないか、と
あとミルク、とか五月雨式にそんな感じで
困ったことに、「過呼吸症候群の靴を救え」
と書かれたプラカードを持った人たちが家の前でデモ行進をしていて
うちは靴屋じゃない!
と怒鳴ると、
アメフラシの汁!
そうシュプレヒコールを浴びせられる
毎日触りたいわけじゃないんです!
という言葉で威嚇し、峰打ちで中央突破
通りかかったタクシーに乗り込み
今日は朝から犬を三匹見たよ、って
口癖のように繰り返す運転手に場所を教えるために
地図を取り出せばそれは天気図にそっくりで
高気圧の上から三本目の等圧線、海を見ながら右に
などと説明しなければならず、それでもようやく到着したのだ
ついでに言うと
お触りバーは雑居ビルの二階にあって
ダッシュ、一段抜かしで階段を駆け上がる途中
彼女に四回もさよならのメールを送るはめになった
おかげで足をすべらせ急降下、頭を強打し
耳の穴から何かが出できたぞ
ドンマイ、ドンマイ
そんなわけで何はともあれ、お触りだ
暗闇の中
触る、とにかく触る
地番のない一点から別の一点へと指を滑らせていく
伝わってくる感触が自分自身のようだ
触る
涙が出てくる
触りたかったのだ
本当に触りたいものはいつも触れないものばかりなのに
そんなこと知っていたはずなのに
TOKYO、TOKYO、何度か呪文のように唱えると
やっと安心することができた
目覚し時計にいたのはセミだったかもしれない
そんなふうに思え
余計に涙が出てきた



2004/08/11 (Wed)
君がいなくなってから
ごみ箱の中で
目のようなものが繁殖している
一斉にこちらを見るので
ごみを捨てるのもためらわれてしまう
部屋が散らかる前に新しいのを買いたいが
交差点では遠くから信号機が戻って来ない
大雪が降りそうな曇り空
夏に降るのは結局雨なのだろう
待ちますか?と聞いても
目のようなものには頷くべき首がない
その様子を見て
やはり待つことに決める

2004/08/09 (Mon)
さとうと えんぴつ けんかした

つきよのばんに けんかした

たべかけのハム まちがえて

どろぼう ひとりで こいをした
2004/08/09 (Mon)
おおきい かあさん おおきいな

ちいさい とうさん ちいさいな

ひるね ひるね らいおん ひるね

おしろのてっぺん こうじちゅう
2004/08/04 (Wed)
男がアーモンドを食べている
鳩が集まる
男は袋の底にたまっていたかけらをまく
その腕には引っかき傷のカサブタ
良く見ると顔は左右非対称で
鼻がやや右の方に傾いている
目の下にホクロのような模様のある鳩が
少し離れたところで他のものをついばんでいる
僕はその光景を二十階の展望台から眺めていた
まあ、これといってオチの無い話だが
と言って友人は鳩料理にナイフを入れる
外では月が綺麗なのかもしれない
ひどく喉が渇く
アーモンドを食べすぎたのだ
2004/08/02 (Mon)
いくら扇いだところで
忘れることなどできないというのに
いつまでもうちわで扇いでいる
自分の周りだけ
他のところより夏めいていて
ほんのりとしょっぱい
何本平行線を引いても
必ずどこかで交わってしまった
あの数学の授業に似ている
忘れてしまったことは
もう覚えていない

2004/08/01 (Sun)
鈍行列車で消火活動に行きましょう
なんて、いかしたメールが
彼女から届いた
僕といえば魂は確かにあるはずなのに
それを入れる器が見つからなくて
朝からオロオロしっぱなしだ
入道雲の見える窓が備えつけられた一室
いいですか?
が口癖の人が、また
いいですか?
と言った
その鼻の頭には汗が玉となって光っている
それから十数年後
僕は慌てて彼女に返信をした
忍者ブログ [PR]

* ILLUSTRATION BY nyao *