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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
50
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2017/11/18 (Sat)
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2004/08/25 (Wed)
スチュワーデスさん、とスチュワーデスに声をかけると
私にはケイコという名前があるんです、とそっぽを向かれる
今度こそ間違いの無いように、ケイコさん、と呼ぶのだが
ケイコは押し黙ってしまう
「ケイコさんの実家は浜松で煎餅屋をやってるの」
彼女が耳元で囁く
何でそんなことを知ってるのだ?
「情報化社会よ」
そう言う彼女はこれから会いに行く俺の両親の職業も知りはしない
俺はただ単に機内サービスのアイスコーヒーが欲しいだけなのに
他の人のトレーにはオレンジジュースばかり並んでいる
「何を頼んでもいいのよ」
彼女がまた耳元で囁く
そういう問題じゃないだろうと思うのだ、俺は
確かにメダルの色は銀より金がいいに決まってる
けれどそれこそが元凶であるということを
俺は嫌というほど知っているつもりだし現に知っているつもりだ
いずれにせよ、ケイコにとってそんなのは重要ではない
鉛筆と紙をよこし、とりあえず好きなことを書いてください、とケイコは言う
俺に書きたいことなどあるものか
「好きなことを書けばいいの」
彼女の忠告どおり俺は今までの半生を書き始めた
二十二歳の夏、近所の草むらでの出来事にさしかかったあたりで
「死」という言葉を使わずに書いてください、ケイコが言う
冗談じゃない、ここまできてそれはないだろう
猛烈に抗議をするとケイコは悲しそうな顔でアイスコーヒーを持ってくる
仕方なく死に関連するところを消しゴムで消していく
今まで書いたことのほとんどが消えてしまったし
これから書こうとしていたことのほとんどが書けなくなった
何故俺の周りはこんなにも死人ばかりなのだ
人間ばかりではない
ひよこも出目金もミドリガメもヤモリもイモリも飼犬も飼猫も皆死にやがった
「誰もが皆いつかは死ぬのよ」
そうかもしれぬ
だが、それが俺たちの生きていることの理由になるのなら何だというのだ
「好きよ」
ああ、好きだ、ケイコ、俺はおまえが好きだ
ケイコ、何故俺たちはいつも愛し合うことができないんだ
記憶の中で悲しいのはおまえだけじゃない
他に御用は?というケイコの声が色も無くはみ出している
高度41,000フィートの空
ケイコは最早ケイコの体をなしていない


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