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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
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58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2001/12/15 (Sat)
僕はえぐる
えぐる
ああ、えぐるとも

えぐるなら
えぐるならせめて
純銀の匙でえぐってくれ
そんな棒の切れ端ではなく
ささくれだった棒ではなく

ああ、そうかそうか
えぐるのか
やっぱりえぐるのか
そんなもので

そうだろう、そうだろう
そうなんだから、そうだろう
だから僕までささくれだってしまうんだ

それはそれとしてえぐったものを
荒野に置いてみようじゃないか
名も知らぬ雑草しか生えていないこの荒野に
とにもかくにも置いてみようじゃないか

荒野には音も無く風が吹いている
無音が闇として存在している
天気はない
空がない

その中心に置く
置くのは中心だ
この広大な荒野では
中心すらわからない

僕は約15メートル後ずさりすると
両手の指で四角をつくり
覗きこむ

覗きこんで呟くんだよ
音が無いのに呟くんだよ
嘆息交じりに
短足な僕は

「美しいピクチャーじゃないか
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2001/12/15 (Sat)
浮かれていた街も今では寝静まり
人々は家に帰り鍵をかけ
浮かれ損ねた奥底に
ひとり夜明け

黒ぶちの眼鏡をかけた青年は
白い息を吐きながら新聞を配り
朝早くから大変ですね
なんて言葉も白々しいから

ただきみが昨日
楽しい夜を過ごせたのなら
それをせめてもの救いにする

どこから飛んできたのか
拾い上げたクラッカーは中身がなくて
コートの右ポケットに
2001/12/14 (Fri)
人や
煙草の煙や
椅子や
テーブルを
かきわけて

僕は一番奥の席に
たどり着いた

誰か、誰か
この地に安住できる
パスをくれないか
2001/12/14 (Fri)
サイコロを振って
1がでるまでキスをする

もちろん僕はイカサマをしたから
僕たちは何百回も
キスをした

そうしているうちに
日も暮れ

こんな遊びに夢中になった僕たちは
1を出すタイミングを
見計らっている
2001/12/12 (Wed)
煙草1本吸っている間に

地球が生まれ
消えていった

ああ、
桜はきれいだった!
2001/12/10 (Mon)
薄幸そうな女が歩いていく
カツカツカツカツ通りを歩いていく

お気に入りの赤いコートを着て
カツカツカツカツとブーツの音を響かせて
薄幸そうな女が歩いていく

背筋をピンと伸ばし
長い髪を手で掻き分け
早足で通りを
カツカツカツカツ歩いていく

そんなに急いだところで薄幸なのに
薄幸だというのに

僕は喫茶店のいつもの窓際
モーニングのコーヒーを飲むのに必要な
5ミリグラムのミルクを正確に計量しようと
目の高さまでスプーンを持ってくる

薄幸そうな女は薄幸だから
きっと駅前の段差で蹴躓く

僕がむず痒いのは
6ミリグラムのミルクのせい

2001/12/08 (Sat)
01 01
01 10
11 10
100 100
1001 11
10 10
111 10
1010 101
2001/12/08 (Sat)
グラスの中には
小さな海がある

それはとても
寒い色をしていて
寒い色をしていて

酒を注ぐ度に
海面は波だつ

海には
いつもの風が吹いている

海に吹く風は
潮のにおいを運んでくる

耳を澄ませば
海の音がする
冬の波音が
ざぶらん、ざぶらんと

僕は小さな海の
深さも広さも
測ることが出来ずに
酒を飲み干す

今、カモメが鳴いた
寒い声で
鳴いた
2001/12/06 (Thu)
ココロ コロコロ 転がって
コオロギ コロコロ 鳴きました

ココロ 凍って ロココ調
コールタールのナタデ・ココ

ココは 露天の 六本木
コヨイ ロックが 心地良い

ロマンス・グレーの 老紳士
今度は こっちで コケコッコー

ココロ コロコロ 転がった
路面電車の 口の中
2001/12/04 (Tue)
少年は
旅に出た

真っ白なノートを
一冊持って

そのノートに
この世のすべての言葉を

すべての意味を
書くために

街には
言葉が溢れていた

朝には朝の
昼には昼の

夜には夜の
言葉があった

老人には老人の
子供には子供の

男には男の
女には女の

言葉があって
その一つ一つを

少年はノートに
書き留めた

森に行けば
鳥の囀りや

動物たちの鳴き声
木々のざわめきを

少年はノートに
書き綴った

少年は
異国に渡った

異国に渡る船の中では
乱暴な船乗りの言葉を

静かな海の歌声を
荒れ狂う海の怒りを

魚の呼吸を
書き続けた

異国の地は
知らない言葉だらけだった

少年はそれらの意味を
身振り手振りで尋ね

ノートに
書き連ねた

少年は何度も
同じ地を歩いた

言葉は変る
時には緩やかに

時には
加速度を増して

一度書いたものを
何度も書き直した

その間故郷では
父親が土になった

それを知ることもなく
少年は

いつの日か
青年になっていた

そしてある日青年は
恋に落ちた

青年はノートを
ひっくり返して

自分が記した
美しくて

綺麗な言葉を
手紙にしたためた

女は
手紙を読むと

青年の目の前で
丸めて捨てた

青年は何度も何度も
手紙を書いたが

その度に
手紙は捨てられた

どうして
どうして

こんなに綺麗で美しい
言葉なのに

女は言った
あなたの手紙はまるで標本のようね

青年は
その意味を考えた

旅に出て初めて
青年はその日

ノートに言葉を
書かなかった

青年は
考え続けた

街で
森で

船の上で
異国の地で

砂漠で
戦場で

そして青年は
決心し

すべてのノートを
焼き捨てた

今、青年の胸の中には
一つの言葉がある

今まで書き綴った
どんな言葉よりも

尊い言葉が
胸の中にある

青年は走った
女のもとへ

一番最初にその言葉を
女に聞かせたくて

たった一つの言葉を抱いて
青年は

走った

走った




これで言葉を書き続けた青年のお話はおしまいです
彼の恋の行方はどうなったのでしょうか
彼が最後に見つけた言葉とは何だったのでしょうか
これから先は
皆さんの物語として

すべてのものは変質します
それが時間です
言葉も変ります
時には緩やかに
時には加速度を増して

時々私は思うのです
変らないものもこの世には
あるのではないかと

例えば
いつの世でも

女は
井戸端会議が好きであるということ

男は
スポーツ新聞が好きであるということ

そしていつの世でも
男と女は

求め合う存在であるということ
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* ILLUSTRATION BY nyao *