プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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夜明け前の校庭で
父が賞状を受け取る練習をしている
もう賞状なんて
誰からももらえるはずないのに
ひとつひとつの段取りを
生真面目に確認している
毎日この時間になると
不自由になった手足を動かして
少し咳き込むようになった
父が賞状を受け取る練習をしている
もう賞状なんて
誰からももらえるはずないのに
ひとつひとつの段取りを
生真面目に確認している
毎日この時間になると
不自由になった手足を動かして
少し咳き込むようになった
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父の髭を剃る
一週間たった柔らかいのを
電気で剃るのは難しい
首など歯のあたりにくい所は
よく伸びる皮をひっぱて剃っていく
その薄くなった皮膚の下に
赤くて細い血管が透けて見える
このように人は
透き通っていくのだと思う
父も口を上下左右に動かして
よく協力してくれたがやがて
疲れた、という一言で
終了となる
教育には何かと厳しい人だった
教えてくれたことのいくつかは
教えてくれなくてもよかったはずだ
一週間たった柔らかいのを
電気で剃るのは難しい
首など歯のあたりにくい所は
よく伸びる皮をひっぱて剃っていく
その薄くなった皮膚の下に
赤くて細い血管が透けて見える
このように人は
透き通っていくのだと思う
父も口を上下左右に動かして
よく協力してくれたがやがて
疲れた、という一言で
終了となる
教育には何かと厳しい人だった
教えてくれたことのいくつかは
教えてくれなくてもよかったはずだ


好きな花の名前を聞かれた
うまく答えられなかった
スリッパを壊して
水に浮かべていく
溺れてみたかった
あのあたり、と呼ばれる
あのあたりで
正しいものと
正しくないものとを
仕分けし続けた
ベランダの声は
明るくてよかった
誰よりも
自分が大事だった
うまく答えられなかった
スリッパを壊して
水に浮かべていく
溺れてみたかった
あのあたり、と呼ばれる
あのあたりで
正しいものと
正しくないものとを
仕分けし続けた
ベランダの声は
明るくてよかった
誰よりも
自分が大事だった


手すりにつかまる
手すりのある国に生まれて
偶然とか必然とか
都合のよい言葉で
意識が今ここにある
手すりに指紋をつけた日があり
手すりの指紋を消した日がある
好んで手すりの話をしたことはあるのに
自分で作ったことはない気がする
もしかしたら明日何かの理由で
作ることになるかもしれない
それは大事なことかもしれない
本当は作ることに
理由なんていらないのだけれど
/昨日離れたところにある
お墓に行った
雑草を抜いて
周りを簡単に掃除した
今日はきっと
朝からの雨に濡れてる
一日そうなのだろう
手すりのある国に生まれて
偶然とか必然とか
都合のよい言葉で
意識が今ここにある
手すりに指紋をつけた日があり
手すりの指紋を消した日がある
好んで手すりの話をしたことはあるのに
自分で作ったことはない気がする
もしかしたら明日何かの理由で
作ることになるかもしれない
それは大事なことかもしれない
本当は作ることに
理由なんていらないのだけれど
/昨日離れたところにある
お墓に行った
雑草を抜いて
周りを簡単に掃除した
今日はきっと
朝からの雨に濡れてる
一日そうなのだろう


自転車はその肢体を空気の隅々まで伸ばし
僕らのささやかな会話は言葉を放棄して
水の海になってしまった
沖へとゆっくりこぎだして行く
すでに失ったペダルを懸命に踏みながら
陸のいたる所では子供たちが
椅子の脚を折り続けている
そうしていればいつの日か大人になれる
そんな優しいお伽噺に
子供たちはいつも守られている
僕はあなたの身体の隙間にそっと指を入れる
どこかにまだ先週末に終わった懐かしい
戦争の記憶があるはずだった
生きる速度で人は死に
死ぬ速度で人は生きた
僕らはその間小さな工場で
確かに数を数えていた
波にさらわれて自転車はハンドルを失った
車輪を失い
サドルを、荷台を、フレームを順番に失っていった
それでも自転車は自転車であり続けようとするので
もう何も答えられない


二人で大好きな
カニの話をした
その人はカニを食べるのが好きで
ぼくは見るのが好きだった
その間
大切なものに形はない
なんて嘘をつく必要はなかった
明日お嫁に行く
とその人は言った
明日はどこにも行かない
ぼくは言った
カニの話をした
その人はカニを食べるのが好きで
ぼくは見るのが好きだった
その間
大切なものに形はない
なんて嘘をつく必要はなかった
明日お嫁に行く
とその人は言った
明日はどこにも行かない
ぼくは言った


語らないでいると
ケニアがある
暗闇の中
愛美が物語の続きをせがんでいる
言うなれば足だ
五本指のソックスで
地表が埋め尽くされていく
人に理由などないように
人であることに
理由などない
愛子は台所で夕食の仕度をしている
この時点ではまだ
愛美は誰からも産まれていない
遠くにある改札口で
草食性のライオンの群れが
草を食んでる
駅員がたいそう正直な人なので
愛美はそのことが少しつまらない
ならず者ならいいのに
語らないでいると
ケニアがある
言うなれば足
ナイロビで買った花柄のスリッパに
世界の重みが加わっていく
愛美は愛子から産まれなかった
よく似た親子、と言われることはなかったが
似ていない親子、と言われることもなかった
ただ、愛子が前を通りすぎた公園を
愛美が水鉄砲をもって走っただけだった
けれどそれも数年後のことだ
夏の暑い日のことだ
それでは配布した答案用紙に
あなたの必要なものを書いてください
試験官の声が会場に響く
いくらでも書くことができた
そのことが嬉しかった
最後に残った小さなスペースに
虹
と書いた
でも本当に必要なのは愛だ
愛子はそう思った
でも本当に必要なのは愛だ
愛美もそう思った
ケニアがある
暗闇の中
愛美が物語の続きをせがんでいる
言うなれば足だ
五本指のソックスで
地表が埋め尽くされていく
人に理由などないように
人であることに
理由などない
愛子は台所で夕食の仕度をしている
この時点ではまだ
愛美は誰からも産まれていない
遠くにある改札口で
草食性のライオンの群れが
草を食んでる
駅員がたいそう正直な人なので
愛美はそのことが少しつまらない
ならず者ならいいのに
語らないでいると
ケニアがある
言うなれば足
ナイロビで買った花柄のスリッパに
世界の重みが加わっていく
愛美は愛子から産まれなかった
よく似た親子、と言われることはなかったが
似ていない親子、と言われることもなかった
ただ、愛子が前を通りすぎた公園を
愛美が水鉄砲をもって走っただけだった
けれどそれも数年後のことだ
夏の暑い日のことだ
それでは配布した答案用紙に
あなたの必要なものを書いてください
試験官の声が会場に響く
いくらでも書くことができた
そのことが嬉しかった
最後に残った小さなスペースに
虹
と書いた
でも本当に必要なのは愛だ
愛子はそう思った
でも本当に必要なのは愛だ
愛美もそう思った


てのひらが
形を覚えている
包み込むと
うまくおさまらないので
足りないのだと気づく
これで消しゴムを買いなさい
少年は言いつけどおり
薄暗い文具屋で
できるだけ沢山の
消しゴムを買った
余ったお金では
期待したものは何も買えなかった
いくつかの消しゴムは
使いかけのままなくし
いくつかの消しゴムは
他にあげるものがない時に
人にあげた
てのひらによく汗をかいて
笑っていても
ズボンで拭いた
形を覚えている
包み込むと
うまくおさまらないので
足りないのだと気づく
これで消しゴムを買いなさい
少年は言いつけどおり
薄暗い文具屋で
できるだけ沢山の
消しゴムを買った
余ったお金では
期待したものは何も買えなかった
いくつかの消しゴムは
使いかけのままなくし
いくつかの消しゴムは
他にあげるものがない時に
人にあげた
てのひらによく汗をかいて
笑っていても
ズボンで拭いた


部長室にはいつも
風が吹いてる
日あたりのよいところで
書類の端がめくれている
窓を開けているのは
たぶん部長さんだと思う
机の上で
ピストルが少し色あせてる
微笑みながら毎日
部長さんが弾をこめてる
銃把のシールに書かれているのは
たぶん部長さんの名前だと思う
エノコログサなどの雑草がはえた
裏の空地には
夏の初めから
子供用の靴が一足忘れ置かれてる
靴の持ち主が今はもう
裸足でなければいいのに
部長さんとの相談は
大抵そのように始まり
いつ終わるともしれないから
途中には銃声が時々聞こえる
地面のゴムの部分を踏んで
古くて優しい人の
形のようなものが風に吹かれてる
たぶんあれが
部長さんだと思う
風が吹いてる
日あたりのよいところで
書類の端がめくれている
窓を開けているのは
たぶん部長さんだと思う
机の上で
ピストルが少し色あせてる
微笑みながら毎日
部長さんが弾をこめてる
銃把のシールに書かれているのは
たぶん部長さんの名前だと思う
エノコログサなどの雑草がはえた
裏の空地には
夏の初めから
子供用の靴が一足忘れ置かれてる
靴の持ち主が今はもう
裸足でなければいいのに
部長さんとの相談は
大抵そのように始まり
いつ終わるともしれないから
途中には銃声が時々聞こえる
地面のゴムの部分を踏んで
古くて優しい人の
形のようなものが風に吹かれてる
たぶんあれが
部長さんだと思う


ピッチャーの投げたボールが
輪郭を曖昧にして
雲の形になり
やがてひつじになって
待ち侘びていたバッターと
いっしょに頁から退場していく
指が擦り切れるまでめくり続け
一生分の幸せは
それだけでいい日があった
雨が降ると
わたしの家だ
輪郭を曖昧にして
雲の形になり
やがてひつじになって
待ち侘びていたバッターと
いっしょに頁から退場していく
指が擦り切れるまでめくり続け
一生分の幸せは
それだけでいい日があった
雨が降ると
わたしの家だ