プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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バス停の近くで生まれ
バスを見て育った
バスを見ていないときは
他のものを見て過ごした
見たいものも
見たくないものもあった
初めての乗り物もバスだった
お気に入りのポシェットを持って
日のあたる席の方に
母と座った
指で柔らかいところを押していた
行った先は恐らく親戚の家だった
母はおじさん、おばさんとだけ呼び
最後まで名前を呼ぶことはなかった
いくつかの嘘をついて
人の嘘をいくつか咎めた
愛という言葉が
本当にあると知った
その街にもバスは走っていた
生まれた街にあったものは
大抵あった
ないものは
他のもので足りた
バスを見て育った
バスを見ていないときは
他のものを見て過ごした
見たいものも
見たくないものもあった
初めての乗り物もバスだった
お気に入りのポシェットを持って
日のあたる席の方に
母と座った
指で柔らかいところを押していた
行った先は恐らく親戚の家だった
母はおじさん、おばさんとだけ呼び
最後まで名前を呼ぶことはなかった
いくつかの嘘をついて
人の嘘をいくつか咎めた
愛という言葉が
本当にあると知った
その街にもバスは走っていた
生まれた街にあったものは
大抵あった
ないものは
他のもので足りた
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少し大きな動物が
足元に横たわってる
景色にあるどの線にも
斜めになって
昨日からの続きのように
滑らかな呼吸をしている
その鼻先から
しばらく行ったところを
とうがらし売りの少女が
乾季の土ぼこりの中
歩いていく
川の方では大規模な橋梁の工事が
すでに始まっていて
橋がかかれば
街が近くなる
病院が近くなる
そしていくつかの死は回避され
いくつかの死は
死としての意味しか持たなくなる
動物が欠伸をする
その姿は大切なものの名を
呼んでいるようにも見えたが
初めから大切なものに
名前などあるはずもない


手作りケーキのお店で
あなたを愛した
愛したあなたは
ケーキを作った
作ったケーキは
おそらく誰のことも
愛することはなかった
その向こう
山と海とが
平行に交わっている
窓から
見えているかのように
教室、という言葉が
あなたには良く似合った
あなたを愛した
愛したあなたは
ケーキを作った
作ったケーキは
おそらく誰のことも
愛することはなかった
その向こう
山と海とが
平行に交わっている
窓から
見えているかのように
教室、という言葉が
あなたには良く似合った


まだ夜の明けないころ
街は少し壊れた
機械の匂いがする
昨夜からの断続的に降る雨が
いたるところ電柱にも
あたっている
いくつかの窓の中には
ささやかな抵抗と
使い古された言い訳があって
何も知らない象の親子が
道の横断歩道のないところを
かつて見た草原のある方に
ゆっくりと渡っている
あと数時間もすれば
街にひとつしかない駅から
朝一番の鈍行が発車する
いくつかの列車を乗り継ぎ
乗り継いでいるうちに
人はいつか死んでしまう
拝啓
覚えた言葉は
すべて捨ててしまって構わない
街は少し壊れた
機械の匂いがする
昨夜からの断続的に降る雨が
いたるところ電柱にも
あたっている
いくつかの窓の中には
ささやかな抵抗と
使い古された言い訳があって
何も知らない象の親子が
道の横断歩道のないところを
かつて見た草原のある方に
ゆっくりと渡っている
あと数時間もすれば
街にひとつしかない駅から
朝一番の鈍行が発車する
いくつかの列車を乗り継ぎ
乗り継いでいるうちに
人はいつか死んでしまう
拝啓
覚えた言葉は
すべて捨ててしまって構わない


魚が三人泳いでるよ
小川を覗き込みながら
子供は母親に言った
暑い夏の盛り
草の乾燥していく匂いもしていた
本当はもっと沢山の魚が群れて泳いでいたのだが
三人目を数えたところで
子供は視力を失ったのだった
それから後の話を
母親は子供にすることはなかった
そして子供は自分と母親が
何人目かを泳いでいると
気づくことはなかった
ただ水面から射し込む痛みのようなもので
胸びれの傷がその時についたものだと
知るばかりだった
小川を覗き込みながら
子供は母親に言った
暑い夏の盛り
草の乾燥していく匂いもしていた
本当はもっと沢山の魚が群れて泳いでいたのだが
三人目を数えたところで
子供は視力を失ったのだった
それから後の話を
母親は子供にすることはなかった
そして子供は自分と母親が
何人目かを泳いでいると
気づくことはなかった
ただ水面から射し込む痛みのようなもので
胸びれの傷がその時についたものだと
知るばかりだった


ブランコに乗って何度も旅をしたね反抗期の君と僕とで
ジャングルジムの骨組みの向こうに君の悲しい生家が見えてる
シーソーしながら語りあった夢の驚くほどあっけない軽さ
愛を囁くカップルの足元に健康そうな犬のうんこが
深夜一人で鉄棒を舐めると金属の錆びた味だけがする
砂場のプリンもいつか乾いて風は歯型をつけて行くのだろう
影踏みも鬼ごっこも君と卒業したあの公園を最後に
ジャングルジムの骨組みの向こうに君の悲しい生家が見えてる
シーソーしながら語りあった夢の驚くほどあっけない軽さ
愛を囁くカップルの足元に健康そうな犬のうんこが
深夜一人で鉄棒を舐めると金属の錆びた味だけがする
砂場のプリンもいつか乾いて風は歯型をつけて行くのだろう
影踏みも鬼ごっこも君と卒業したあの公園を最後に


あまりに静かなので
どうしたものか
耳を澄ますと自分が
階段になっていることがわかる
踊り場には
温かい春の光が落ちて
多分そのあたりに
思い出はあるのかもしれない
遠くで誰かが
僕の名前を呼んでいる
まだ少し懐かしい気がする
階段とは違う
僕と同じ名前の人が
返事をする
どうしたものか
耳を澄ますと自分が
階段になっていることがわかる
踊り場には
温かい春の光が落ちて
多分そのあたりに
思い出はあるのかもしれない
遠くで誰かが
僕の名前を呼んでいる
まだ少し懐かしい気がする
階段とは違う
僕と同じ名前の人が
返事をする


晴れた日の
親戚のように
父と二人で並び
日あたりの良い窓際
懐かしいことや
懐かしくないことを
とりとめもなく話し
毎日小さく丸くなる父は
明日はもっと
そうなんだろう
窓の外には
狭い菜の花畑があって
昨日なら手押し車で
荷物を運ぶ人も見えた
命の欠片のような脚を
ゆっくりとさすっていく
親戚にしか
できないこともあるのだ
ゆうべ妊娠する夢を見た
そう告げると
父は何か
聞き間違えをしたのかもしれない
ありがとう
とだけ言った
親戚のように
父と二人で並び
日あたりの良い窓際
懐かしいことや
懐かしくないことを
とりとめもなく話し
毎日小さく丸くなる父は
明日はもっと
そうなんだろう
窓の外には
狭い菜の花畑があって
昨日なら手押し車で
荷物を運ぶ人も見えた
命の欠片のような脚を
ゆっくりとさすっていく
親戚にしか
できないこともあるのだ
ゆうべ妊娠する夢を見た
そう告げると
父は何か
聞き間違えをしたのかもしれない
ありがとう
とだけ言った


暑さがまだ
襟元にも残ってる
汗との少し
間違いがあって
葉をかきながら
歩くあなたの足元
側溝の蓋が
少女の口のように
開いて
ふとある日から
そのままの感じがする
ひき肉を買って帰る
その背中に
およそ八分前に放たれた
太陽の光は差し
キッチンに立てば
痛みよりも容易に
あなたはいつも
ハンバーグを作るのだった
襟元にも残ってる
汗との少し
間違いがあって
葉をかきながら
歩くあなたの足元
側溝の蓋が
少女の口のように
開いて
ふとある日から
そのままの感じがする
ひき肉を買って帰る
その背中に
およそ八分前に放たれた
太陽の光は差し
キッチンに立てば
痛みよりも容易に
あなたはいつも
ハンバーグを作るのだった


行方不明の洗濯機が二番線のホームで脱水していた
振り返ると家電フロアーの主任が裏口でまだ手を振ってる
今日もレンジの平和を願う君が両手でものを温めている
「いつも利用する乗り物は?」「掃除機!」っていったいそれ何のプレイ
室外機に腰かけて君と世界中のトマトを握りつぶした
冷蔵庫で初めて冷やしたものを誰もがいつか忘れてしまう
開け放たれた窓 消し忘れたテレビの波音 夏だけが終わる
振り返ると家電フロアーの主任が裏口でまだ手を振ってる
今日もレンジの平和を願う君が両手でものを温めている
「いつも利用する乗り物は?」「掃除機!」っていったいそれ何のプレイ
室外機に腰かけて君と世界中のトマトを握りつぶした
冷蔵庫で初めて冷やしたものを誰もがいつか忘れてしまう
開け放たれた窓 消し忘れたテレビの波音 夏だけが終わる