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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2025/04/22 (Tue)
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2007/10/25 (Thu)
バス停の近くで生まれ
バスを見て育った
バスを見ていないときは
他のものを見て過ごした
見たいものも
見たくないものもあった
初めての乗り物もバスだった
お気に入りのポシェットを持って
日のあたる席の方に
母と座った
指で柔らかいところを押していた
行った先は恐らく親戚の家だった
母はおじさん、おばさんとだけ呼び
最後まで名前を呼ぶことはなかった
いくつかの嘘をついて
人の嘘をいくつか咎めた
愛という言葉が
本当にあると知った
その街にもバスは走っていた
生まれた街にあったものは
大抵あった
ないものは
他のもので足りた
 
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2007/10/23 (Tue)

少し大きな動物が
足元に横たわってる
景色にあるどの線にも
斜めになって
昨日からの続きのように
滑らかな呼吸をしている
その鼻先から
しばらく行ったところを
とうがらし売りの少女が
乾季の土ぼこりの中
歩いていく
川の方では大規模な橋梁の工事が
すでに始まっていて
橋がかかれば
街が近くなる
病院が近くなる
そしていくつかの死は回避され
いくつかの死は
死としての意味しか持たなくなる
動物が欠伸をする
その姿は大切なものの名を
呼んでいるようにも見えたが
初めから大切なものに
名前などあるはずもない
 
2007/10/19 (Fri)
手作りケーキのお店で
あなたを愛した
愛したあなたは
ケーキを作った
作ったケーキは
おそらく誰のことも
愛することはなかった
その向こう
山と海とが
平行に交わっている
窓から
見えているかのように
教室、という言葉が
あなたには良く似合った
2007/10/18 (Thu)
まだ夜の明けないころ
街は少し壊れた
機械の匂いがする
昨夜からの断続的に降る雨が
いたるところ電柱にも
あたっている
いくつかの窓の中には
ささやかな抵抗と
使い古された言い訳があって
何も知らない象の親子が
道の横断歩道のないところを
かつて見た草原のある方に
ゆっくりと渡っている
あと数時間もすれば
街にひとつしかない駅から
朝一番の鈍行が発車する
いくつかの列車を乗り継ぎ
乗り継いでいるうちに
人はいつか死んでしまう
拝啓
覚えた言葉は
すべて捨ててしまって構わない
 
2007/10/11 (Thu)
魚が三人泳いでるよ
小川を覗き込みながら
子供は母親に言った
暑い夏の盛り
草の乾燥していく匂いもしていた
本当はもっと沢山の魚が群れて泳いでいたのだが
三人目を数えたところで
子供は視力を失ったのだった
それから後の話を
母親は子供にすることはなかった
そして子供は自分と母親が
何人目かを泳いでいると
気づくことはなかった
ただ水面から射し込む痛みのようなもので
胸びれの傷がその時についたものだと
知るばかりだった

2007/10/06 (Sat)
ブランコに乗って何度も旅をしたね反抗期の君と僕とで


ジャングルジムの骨組みの向こうに君の悲しい生家が見えてる


シーソーしながら語りあった夢の驚くほどあっけない軽さ


愛を囁くカップルの足元に健康そうな犬のうんこが


深夜一人で鉄棒を舐めると金属の錆びた味だけがする


砂場のプリンもいつか乾いて風は歯型をつけて行くのだろう


影踏みも鬼ごっこも君と卒業したあの公園を最後に
2007/10/03 (Wed)
あまりに静かなので
どうしたものか
耳を澄ますと自分が
階段になっていることがわかる
踊り場には
温かい春の光が落ちて
多分そのあたりに
思い出はあるのかもしれない
遠くで誰かが
僕の名前を呼んでいる
まだ少し懐かしい気がする
階段とは違う
僕と同じ名前の人が
返事をする
2007/09/30 (Sun)
晴れた日の
親戚のように
父と二人で並び
日あたりの良い窓際
懐かしいことや
懐かしくないことを
とりとめもなく話し
毎日小さく丸くなる父は
明日はもっと
そうなんだろう
窓の外には
狭い菜の花畑があって
昨日なら手押し車で
荷物を運ぶ人も見えた
命の欠片のような脚を
ゆっくりとさすっていく
親戚にしか
できないこともあるのだ
ゆうべ妊娠する夢を見た
そう告げると
父は何か
聞き間違えをしたのかもしれない
ありがとう
とだけ言った
2007/09/28 (Fri)
暑さがまだ
襟元にも残ってる
汗との少し
間違いがあって
葉をかきながら
歩くあなたの足元
側溝の蓋が
少女の口のように
開いて
ふとある日から
そのままの感じがする
ひき肉を買って帰る
その背中に
およそ八分前に放たれた
太陽の光は差し
キッチンに立てば
痛みよりも容易に
あなたはいつも
ハンバーグを作るのだった
 
2007/09/25 (Tue)
行方不明の洗濯機が二番線のホームで脱水していた


振り返ると家電フロアーの主任が裏口でまだ手を振ってる


今日もレンジの平和を願う君が両手でものを温めている


「いつも利用する乗り物は?」「掃除機!」っていったいそれ何のプレイ


室外機に腰かけて君と世界中のトマトを握りつぶした


冷蔵庫で初めて冷やしたものを誰もがいつか忘れてしまう


開け放たれた窓 消し忘れたテレビの波音 夏だけが終わる


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* ILLUSTRATION BY nyao *