プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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01
潜水艦が勝手口から出航する
数名の水夫と
グランドピアノを一台乗せて
裏面にへのへのもへじが書かれた広告は
窓を開ければ
風に飛ぶだろう
02
電話会社から届いた明細を
女は男と見ている
コーヒーカップの中には
誰も訪れることのない
見世物小屋が建っている
03
役所の戸籍係が
トンボを一匹捕まえた
指先はいつものように湿っている
他に特記することもなく
その日は
掌に人という字を書いて終わった
04
緑地帯の雑草は
ある日きれいに刈られていた
子どもたちは走り
そのために置かれた砂時計は
まだ時を刻んでいる
漁港のある小さな町にも
短い夏がきていたのだ
05
距離は人の囁きのように
わずかばかりの水分を含んでいた
誤字の見つかったメニューは
テーブルに置かれることなく
店の人によって廃棄された
06
深夜のテレビに映る
砂嵐の砂を
一粒一粒数えている
雨戸の近くで動かなくなった
てんとう虫の生死を
そこからは判別できなかった
07
シーソーに
ボードゲームを乗せた
もう片方に何を乗せるか
憲兵たちは終日もめた
08
植物売り場の隣にある
小さな飛行場に
複葉機が数機着陸している
レジの女性は
長い髪の毛をかきあげて
明日の天気の話と
他の生き物の話をした
09
エスカレーターの場所を聞かれたので
あちらです、と教えると
その人はすっかり安心した面持ちで
あちらです、の反対に歩いて行った
10
クレゾール、くれ!
と象からの留守番電話
鳩のために刑事はかける
それは喩えるなら
きっと春
明日は多分もっと優しい
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ぶつぶつ
ひとりごとをいいながら
ひとが
えきのかいだんをのぼっている
おそらく
なにかたいせつな
くんれんをしているのだろう
ことばをはっするたびに
すこしずつ
もれていくものがある
いちばんうえにつくと
ひとは
かいだんのないところを
のぼりはじめた
やっと
からっぽになったのだ
ほかのひとは
みてみぬふりをしている
もしくは
ほんとうにみていない
でんしゃをまちながら
じぶんのくんれんに
いそがしくしている
ひとりごとをいいながら
ひとが
えきのかいだんをのぼっている
おそらく
なにかたいせつな
くんれんをしているのだろう
ことばをはっするたびに
すこしずつ
もれていくものがある
いちばんうえにつくと
ひとは
かいだんのないところを
のぼりはじめた
やっと
からっぽになったのだ
ほかのひとは
みてみぬふりをしている
もしくは
ほんとうにみていない
でんしゃをまちながら
じぶんのくんれんに
いそがしくしている


ひとが
しをかいている
ひとは
しをかくのがすき
かいていると
こころが
きれいになる
きぶん
しをかくひとのことを
しじん
というらしい
ちなみに
しにん
とよぶと
べつなものになる
しにんは
しをかかない
なぜなら
しにんは
うそをつかない
もっともぜんりょうな
ひとびとだから
しをかいている
ひとは
しをかくのがすき
かいていると
こころが
きれいになる
きぶん
しをかくひとのことを
しじん
というらしい
ちなみに
しにん
とよぶと
べつなものになる
しにんは
しをかかない
なぜなら
しにんは
うそをつかない
もっともぜんりょうな
ひとびとだから


女は消印を食べ続けた
消印を食べなければ生きていけなかった
医者には病気のようなものだと言われた
普通に届く郵便物だけでは
必要な量は満たせなかった
子供のころは
両親が女のために手紙を書いた
最初のうちはメッセージを添えていたが
書くことも決まっていたし
必要なのは消印だけだったので
やがて何も書かなくなった
父親が亡くなると
母親と女の二人で書いた
数年後、母親も後を追うように亡くなった
母親は父親と同じ墓に入った
バスで一時間ほどかかる山間の狭小な霊園だった
女は一人で手紙を書いた
一人になっても文面は書かなかった
それでも数日前に自分で出した手紙が届くと
少しうきうきして
何か書いてないか確かめたりもした
そしてがっかりして
消印を食べた
ある日、自分の出した手紙に文字が書いてあった
幼い雰囲気の数文字だけだった
消印の日付から推測すると
女がひどくう酔っぱらった時に書いたものらしい
女は泣いた
手紙を読んで泣いたのは初めてのことだった
「うーたん」
幼いころ
両親が女を呼んでいた愛称だった
消印を食べなければ生きていけなかった
医者には病気のようなものだと言われた
普通に届く郵便物だけでは
必要な量は満たせなかった
子供のころは
両親が女のために手紙を書いた
最初のうちはメッセージを添えていたが
書くことも決まっていたし
必要なのは消印だけだったので
やがて何も書かなくなった
父親が亡くなると
母親と女の二人で書いた
数年後、母親も後を追うように亡くなった
母親は父親と同じ墓に入った
バスで一時間ほどかかる山間の狭小な霊園だった
女は一人で手紙を書いた
一人になっても文面は書かなかった
それでも数日前に自分で出した手紙が届くと
少しうきうきして
何か書いてないか確かめたりもした
そしてがっかりして
消印を食べた
ある日、自分の出した手紙に文字が書いてあった
幼い雰囲気の数文字だけだった
消印の日付から推測すると
女がひどくう酔っぱらった時に書いたものらしい
女は泣いた
手紙を読んで泣いたのは初めてのことだった
「うーたん」
幼いころ
両親が女を呼んでいた愛称だった


こうえいの
ぷうるで
しんでいるかのように
ひとが
かんせいをあげている
いきているひとは
ときおりじょうずに
しんだひとの
ものまねをしてみせる
そして
みずのしぶきをみて
うつくしい
などいっては
はだいろ、とは
なばかりの
くれよんをてにする
ぷうるで
しんでいるかのように
ひとが
かんせいをあげている
いきているひとは
ときおりじょうずに
しんだひとの
ものまねをしてみせる
そして
みずのしぶきをみて
うつくしい
などいっては
はだいろ、とは
なばかりの
くれよんをてにする


長い耳のようなものに
巻かれている
なでてみると
自分の耳なのだと気づく
近くでは耳が産まれている
いくつかは知っている耳で
いくつかはよくわからなかった
産まれてきた耳は
自ら声を発しようとするけれど
みなその前に聞いてしまう
長い耳が懐かしい感じのする
他のものになったのを見計らって
少し歩いてみる
落ちていた小さな耳を踏んで
足の裏を切ってしまった
巻かれている
なでてみると
自分の耳なのだと気づく
近くでは耳が産まれている
いくつかは知っている耳で
いくつかはよくわからなかった
産まれてきた耳は
自ら声を発しようとするけれど
みなその前に聞いてしまう
長い耳が懐かしい感じのする
他のものになったのを見計らって
少し歩いてみる
落ちていた小さな耳を踏んで
足の裏を切ってしまった


ざわめいている
てと
てあしと
あしと
ならんでいる
そして
すこし
おしかえし
ている
ひとは
よなかに
やさしく
しんどうする
ざわめきを
すみずみまでつたえ
からだを
じょうずに
にくへと
もどす
てと
てあしと
あしと
ならんでいる
そして
すこし
おしかえし
ている
ひとは
よなかに
やさしく
しんどうする
ざわめきを
すみずみまでつたえ
からだを
じょうずに
にくへと
もどす


こくどうぞいの
みんかの
せまい
げんかんさきに
すいそうが
ほうちされている
あまみずがたまり
みずは
じょうおんのまま
やはり
ほうちされている
かつて
そのなかには
ちいさな
ねつをもち
あいがんされた
いきものがいた
はずだった
あるものですませましょう
そのまえで
いえのひとが
はなしをしている
きりそろえた
えだをかかえ
いたそうに
きにしている
みんかの
せまい
げんかんさきに
すいそうが
ほうちされている
あまみずがたまり
みずは
じょうおんのまま
やはり
ほうちされている
かつて
そのなかには
ちいさな
ねつをもち
あいがんされた
いきものがいた
はずだった
あるものですませましょう
そのまえで
いえのひとが
はなしをしている
きりそろえた
えだをかかえ
いたそうに
きにしている


脱税しました
空は晴れていました
脱税したお金で
スポーツカーを買いました
お金が足りないので
模型のスポーツカーでした
海の近くでした
風に匂いがありました
一輪車が得意でした
上手ね、と大人たちにほめられ
それから数十年を経て
脱税しました
空は晴れていました
明日も晴れれば良いのですが
恋人と初めて出会った日は
雨が降ったり止んだりでした
そして夏みかんを食べました
ただの知っている人と
二人で食べました
まだ脱税はしてませんでした
海の近くでした
もりお、です
もりお、もりお、
守る男と書いて、もりお、です
もりおは守る男です
選挙カーは今日も走りました
模型のスポーツカーよりも
速く走りました
だつぜい、と言葉にすると
春のように
少し口の周りが湿りました
恋人は夏みかんが嫌いでした
みんな嫌いと泣いていました
殺すつもりはありませんでした
これからもきっと
殺すつもりもなく誰も殺さない
無邪気に信じ続け
脱税しました
海鳥が飛んでいました
通りがかった人に何かされていました
別れるときは必ず手を振ろう
という幼い約束は
幼いが故に守られませんでした
税務署の人がハンカチで汗を拭きながら
署に勤める前は百貨店で机を売っていたんですよ
と一度だけ言いました
そうなんですか
一度だけ言いました
ポケットに手をつっこむと
海の近くでした
空は晴れていました
脱税したお金で
スポーツカーを買いました
お金が足りないので
模型のスポーツカーでした
海の近くでした
風に匂いがありました
一輪車が得意でした
上手ね、と大人たちにほめられ
それから数十年を経て
脱税しました
空は晴れていました
明日も晴れれば良いのですが
恋人と初めて出会った日は
雨が降ったり止んだりでした
そして夏みかんを食べました
ただの知っている人と
二人で食べました
まだ脱税はしてませんでした
海の近くでした
もりお、です
もりお、もりお、
守る男と書いて、もりお、です
もりおは守る男です
選挙カーは今日も走りました
模型のスポーツカーよりも
速く走りました
だつぜい、と言葉にすると
春のように
少し口の周りが湿りました
恋人は夏みかんが嫌いでした
みんな嫌いと泣いていました
殺すつもりはありませんでした
これからもきっと
殺すつもりもなく誰も殺さない
無邪気に信じ続け
脱税しました
海鳥が飛んでいました
通りがかった人に何かされていました
別れるときは必ず手を振ろう
という幼い約束は
幼いが故に守られませんでした
税務署の人がハンカチで汗を拭きながら
署に勤める前は百貨店で机を売っていたんですよ
と一度だけ言いました
そうなんですか
一度だけ言いました
ポケットに手をつっこむと
海の近くでした