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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
56
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2024/04/19 (Fri)
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2005/10/10 (Mon)
好きなものを頼みなさい
メニューを渡すと
娘はしばらくうつむいて
星が見たいと言う
隣のテーブルにバスがいたので
手を繋ぎ乗る
ひとつ前の停留所で
サーカスを見るために
大半の客は降りた
私たちは終点で降り
小高い丘を登って
いつまでも天体観測を続けた

+

空腹に
ソーセージが詰められていく
そのうちの何本かは
ウィンナーかもしれない
そう考えると
すっかり縮みあがって
夜盗の助走は
失速する

+

距離とは
きっと
何かの理由
会いたいとか
会えないとか
頭突きをするとか
しないとか

+

大工さんたちが私を囲んで
私の一部をはがしたり
何かを取り付けたりし始める
リフォームをするのだと言う
頼んではいない、と抗議すると
家の人に許可をいただいてますから
そう返される
父も母もすでにこの世にはいない
妻とはとっくに別れた
いや、そうではなかったかもしれない
元気な父と母
美しい妻と可愛い息子と娘
それに産まれたばかりの仔犬
優しい思い出が溢れ出して
幸せな気持ちでいっぱいになる
脳みそを取り替えられたようだ
新しい脳みその
どこか遠いところでそう思いながら

+

これは東三丁目に行きますか
本の表紙に描かれた
バスの絵を指差しながら
初老の女性が途方に暮れている
小さい頃によく遊んだマリコちゃんに
会いに行きたいのだと言う
マリコちゃんにどうぞ、と
グレープフルーツを差し出すと
女性は嬉しそうに微笑む
どこまでが思い出で
どこまでが女性自身なのか
すでに見分けはつかなくなってた

+

ハラメシの炊き上がった匂いがする
一年に一度だけ食べられるハラメシは
特段美味しい、ということもないが
風習とはそういうものだ
ハラメシを前に
家族皆で手を合わせる
そのことの意味を誰も知らないが
祈りとはそういうものだ
この日ばかりは
食後のゲップは禁忌である

+

右手と左手は
朝から機嫌が悪い
キオスクで働く兄は
右足と左足を取り違えたまま
勤めに行ってしまった
右岸で寝ている人の夢の中で
左岸の人は今日も忙しい
あと何日
自分は生きるのだろうか

+

男は、ムラオカです、
とだけ名乗り
金属がより金属に近づこうと
静かに脱皮を続ける
かの口調で
立方体の話をする
別れ際、男は
本当はスズキだったのです、
と言ってそれから
何事も無かったかのように
春の花を満載した自転車に
ひかれた

+

三時間目図工の授業では
遊園地の絵を描く課題が与えられた
級友たちが様々な形の乗り物を
色彩豊かに塗りつぶしていく中
少年だけはみすぼらしいベンチを描いた
何に乗ることも無く父親と二人で
一日中ベンチに腰掛けていた
遊園地にはそんな思い出しかないのだ
少年は座っている人を描き始めたが
そこには少年と母親の
幸せそうな姿しかなかった

+

街は保とうとする私たちの外形
私たちは不規則に
膨張を繰り返すものの軌跡
ほのかな光を発し
自分自身の中を飛行する寂しい
、の電力を運ぶため
送電線は走る
路上に放置されたコンクリートの破片
私たちはその中にさえも
記憶されることは難しい
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