プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2020/03/17 (Tue)
詩
冷蔵庫を買いに出かけた
途中、空港に寄って
パイロットの友人と会った
友人はペットのモンキーと遊んでいた
モンキーは滑らかに動いていた
餌も食べていた
週末には海に行くと言った
空港の脇道を抜けて
家電量販店に向かった
冷蔵庫売り場にはたくさんの冷蔵庫が並んでいた
店員さんはお勧めの冷蔵庫の前に案内してくれた
それから冷蔵庫の型番を読み上げてくれた
いろいろな型番があったけれど
結局気に入った色のを買うことにした
店員さんも週末に海に行くと言った
面識のない二人が偶然海で会ったら
どんな顔をするのだろうか
冷蔵庫は四、五日以内に届くそうだ
その間に起こりうる不便なことと
不便ではないことをいくつか考えてみた
帰りに遠回りをして書店に寄った
昔ここにいた友人は
今はもういない
冷蔵庫を使うのに役立つ本を買った
冷蔵庫を買いに出かけた
途中、空港に寄って
パイロットの友人と会った
友人はペットのモンキーと遊んでいた
モンキーは滑らかに動いていた
餌も食べていた
週末には海に行くと言った
空港の脇道を抜けて
家電量販店に向かった
冷蔵庫売り場にはたくさんの冷蔵庫が並んでいた
店員さんはお勧めの冷蔵庫の前に案内してくれた
それから冷蔵庫の型番を読み上げてくれた
いろいろな型番があったけれど
結局気に入った色のを買うことにした
店員さんも週末に海に行くと言った
面識のない二人が偶然海で会ったら
どんな顔をするのだろうか
冷蔵庫は四、五日以内に届くそうだ
その間に起こりうる不便なことと
不便ではないことをいくつか考えてみた
帰りに遠回りをして書店に寄った
昔ここにいた友人は
今はもういない
冷蔵庫を使うのに役立つ本を買った
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2020/03/16 (Mon)
詩
身体の中に
雨が降る
雨は水になる
集めると
水になる
川の字になって寝る
真ん中は
いつも私だった
結婚し、子どもが産まれ
いつしか右端で
身体を少し曲げながら
寝るようになった
明方、安宿の窓を開ける
川の音がする
誰が名付けたのか
雨が降ってる
身体の中に
雨が降る
雨は水になる
集めると
水になる
川の字になって寝る
真ん中は
いつも私だった
結婚し、子どもが産まれ
いつしか右端で
身体を少し曲げながら
寝るようになった
明方、安宿の窓を開ける
川の音がする
誰が名付けたのか
雨が降ってる
2020/03/15 (Sun)
詩
百葉箱に住んでいた校長先生が
退職することとなった
わたしたちはそれを寂しいことと思い
お別れの言葉と
鯖を送ったのだった
美味しい鯖ですね、と
校長先生は美味しそうに食べた
校長先生が鯖を食べるところを初めて見たし
鯖が好きだということも初めて知った
退職後は海の見える百葉箱に引っ越しをするそうだ
これから鯖を見るとみんなのことを思い出します
と言うけれど
わたしたちを見ると鯖のことを思い出すのだろうか
それとも生きることは
みんなに等しく辛いことなのだろうか
遅くならないうちにお帰りなさい
ということを校長先生は言って
わたしたちは適宜解散し
卒業を終えた
百葉箱に住んでいた校長先生が
退職することとなった
わたしたちはそれを寂しいことと思い
お別れの言葉と
鯖を送ったのだった
美味しい鯖ですね、と
校長先生は美味しそうに食べた
校長先生が鯖を食べるところを初めて見たし
鯖が好きだということも初めて知った
退職後は海の見える百葉箱に引っ越しをするそうだ
これから鯖を見るとみんなのことを思い出します
と言うけれど
わたしたちを見ると鯖のことを思い出すのだろうか
それとも生きることは
みんなに等しく辛いことなのだろうか
遅くならないうちにお帰りなさい
ということを校長先生は言って
わたしたちは適宜解散し
卒業を終えた
2020/03/14 (Sat)
詩
霊安室に母が椅子を並べている
「みんな死んだのよ」
いつこの仕事に就いたのだろう
死んだ体を扱うように
丁寧な手つきで並べていく
手伝おうとすると
「いいのよ、毎日、お仕事、大変でしょう」
と言う
父のことを聞くと
「最初からいないでしょう」
俯いて答える
そんなはずはないと思い
父の特徴を思いだそうとするけれど
すべてが椅子の特徴になってしまう
遊園地にも三人で行ったはずなのに
母と二人で椅子に座ったことしか
もう思いだせない
乾いた木と金属の音が室内に響く
「あなたは人だから」と呟いて
母は下を向いたまま椅子を並べ続ける
胸につけた名札が揺れる
一字違いで花の名前になれない
母は昔からそういう人だった
霊安室に母が椅子を並べている
「みんな死んだのよ」
いつこの仕事に就いたのだろう
死んだ体を扱うように
丁寧な手つきで並べていく
手伝おうとすると
「いいのよ、毎日、お仕事、大変でしょう」
と言う
父のことを聞くと
「最初からいないでしょう」
俯いて答える
そんなはずはないと思い
父の特徴を思いだそうとするけれど
すべてが椅子の特徴になってしまう
遊園地にも三人で行ったはずなのに
母と二人で椅子に座ったことしか
もう思いだせない
乾いた木と金属の音が室内に響く
「あなたは人だから」と呟いて
母は下を向いたまま椅子を並べ続ける
胸につけた名札が揺れる
一字違いで花の名前になれない
母は昔からそういう人だった
2020/03/12 (Thu)
詩
上りのエスカレーターに
幽霊が立っていた
ぼんやりとネクタイを締めて
小さな咳をしていた
駆け上がる人が
春のように
体をすり抜けていった
見えない、
それだけで幽霊だった
上の階につくと、今度は
下りのエスカレーターに乗った
おそらく、その繰り返しで
幽霊の一日は過ぎていく
そして今日も私は
誰かの記憶の中で
咳をしているだろう
あやふやになった姿かたちで
それはまた
幽霊とも違うだろう
上りのエスカレーターに
幽霊が立っていた
ぼんやりとネクタイを締めて
小さな咳をしていた
駆け上がる人が
春のように
体をすり抜けていった
見えない、
それだけで幽霊だった
上の階につくと、今度は
下りのエスカレーターに乗った
おそらく、その繰り返しで
幽霊の一日は過ぎていく
そして今日も私は
誰かの記憶の中で
咳をしているだろう
あやふやになった姿かたちで
それはまた
幽霊とも違うだろう
2020/03/11 (Wed)
詩
都会のカラスが
明方、ゴミをついばむ
世界は汚れる
汚れた世界は
まどろみながら
都会の夢を見る
都会の夢の中で
カラスは増え続ける
唐突に産声
夢は端から破綻し始め
都会は受け入れる
ひとつの命を
都会のカラスが
明方、ゴミをついばむ
世界は汚れる
汚れた世界は
まどろみながら
都会の夢を見る
都会の夢の中で
カラスは増え続ける
唐突に産声
夢は端から破綻し始め
都会は受け入れる
ひとつの命を
2020/03/10 (Tue)
詩
物、その影は
量となり
嵩となる
影という影は
新たな影をつくり
高く目を瞑ると
擬音語のような
か細い音を立てて
雨が降り始める
わたしは先ず
折り急いだ
紙のことを思い
それから
身振り手振りで
花が咲いたことを
あなたに
伝えようと思った
物、その影は
量となり
嵩となる
影という影は
新たな影をつくり
高く目を瞑ると
擬音語のような
か細い音を立てて
雨が降り始める
わたしは先ず
折り急いだ
紙のことを思い
それから
身振り手振りで
花が咲いたことを
あなたに
伝えようと思った
2020/03/08 (Sun)
詩
今日、豆腐は
朝から不在だった
テレビの画面でも
新聞や本などの印刷物でも
その姿を見かけなかったし
豆腐、という言葉すら
出てくることはなかった
妻との他愛もない会話にも
豆腐に関する話題は
何ひとつとしてなかった
寝る前にふと
豆腐のことを思い出して
僕は冷蔵庫を開けた
何をしてるの、
という妻の問いかけに
何でもない、と僕は答え
扉を閉めた
十数年いっしょにいても
解りあえないことのいくつかは
お互いすでに諦めていた
今日、豆腐は
朝から不在だった
テレビの画面でも
新聞や本などの印刷物でも
その姿を見かけなかったし
豆腐、という言葉すら
出てくることはなかった
妻との他愛もない会話にも
豆腐に関する話題は
何ひとつとしてなかった
寝る前にふと
豆腐のことを思い出して
僕は冷蔵庫を開けた
何をしてるの、
という妻の問いかけに
何でもない、と僕は答え
扉を閉めた
十数年いっしょにいても
解りあえないことのいくつかは
お互いすでに諦めていた
2020/03/07 (Sat)
詩
豆腐のプラモデルを買った
部品が全部そろっているか確認した
思ったよりもたくさんの部品があった
毎日空いた時間に少しずつ組みたてた
その間に何通かのダイレクトメールと
公共料金の請求書が届き
飼い猫は近所の猫と恋に落ちた
数日後、きれいな直方体の豆腐ができた
慣れた人はわざと角などを崩すらしい
薬味はお好みで
と説明書にあったので
ネギと生姜を買いに出かけた
もう会えない人もいるけれど
昨日より少し
幸せな気がした
豆腐のプラモデルを買った
部品が全部そろっているか確認した
思ったよりもたくさんの部品があった
毎日空いた時間に少しずつ組みたてた
その間に何通かのダイレクトメールと
公共料金の請求書が届き
飼い猫は近所の猫と恋に落ちた
数日後、きれいな直方体の豆腐ができた
慣れた人はわざと角などを崩すらしい
薬味はお好みで
と説明書にあったので
ネギと生姜を買いに出かけた
もう会えない人もいるけれど
昨日より少し
幸せな気がした
2020/03/06 (Fri)
詩
水面、生まれたての木漏れ日
酸化していく時計と
ミズスマシのありふれた死
導火線を握ったまま眠る
わたしたちの湿った容器は
身体と呼ばれることに
すっかり慣れてしまった
朽ちかけた桟橋から
手漕ぎの小舟が出航する
数えきれないほどの花粉と
沈黙を積んで
水面、生まれたての木漏れ日
酸化していく時計と
ミズスマシのありふれた死
導火線を握ったまま眠る
わたしたちの湿った容器は
身体と呼ばれることに
すっかり慣れてしまった
朽ちかけた桟橋から
手漕ぎの小舟が出航する
数えきれないほどの花粉と
沈黙を積んで