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こっそりと詩を書く男の人
  プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2007/05/29 (Tue)
手の震えがひどい日は良く眠れない
プラスチック製の消臭スプレーを握ると
少し安定して
それでも眠れない時は
若者向けの深夜放送を疲れるまで見て
やっと僅かばかりの睡眠を得る
昼間会いに行って寝ているときは
大概そんな日だ
それでも微かに手は震えていて
衣擦れの音や
消臭スプレーがベッドの縁に当たる音が聞こえる
あなたがつくるそんな音のいくつかを
今はもうしばらく聞いていようと思う

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2007/05/28 (Mon)
寒い、と言うと
あなたはわたしの肩に
そっと
うなぎをかけてくれた
 
ぬるぬるして
うなぎも鳴くのだと
初めて知った
うなぎのさばき方を
教わったのも初めて
 
大人の恋は
初めてばかりだった
 
その夜わたしは
あなたと同じお布団に入って
うなぎのように泣いた
2007/05/27 (Sun)
船着場に誰かが忘れていった
ピアノを弾いてみる
白い鍵盤しか習ったことがないので
黒い鍵盤に触れないように
注意深く弾く
低い生垣の向こうから
病院の人がこちらを見ている
目が合い会釈をしたけれど
何も返すことなく行ってしまう
病院の人は知らない人だった
到着した船から
免許センターで膝を擦り剥いた人々が降りて
辺りは一面賑やかしくなる
少し歩けば
「春を見つける会」の会員が
緑地帯で食味の良い野草を摘んでいる
2007/05/26 (Sat)
大好きな果物の
味でもしたのだろうか
モノレールの銀色の車体に
君の歯型がついてる

先ほどまでは
玄関の無い所
スリッパと同じ格好をして
スリッパを並べていた
今は肩を丸出しにしながら
ひとつずつ裸になっていく
肺は二つ
誰に汚されることなくあるのに
君にはまだ
皮膚呼吸が足りてなかった

シーソーの片一方に僕が乗って
片方にはもう何も残ってない
ただ景色のようなものだけが
遠くまで広がっている
頭を少し垂れたのは
謝りたかったからではない
のしかかってくる空の重みに
耐え切れなかったのだ
2007/05/25 (Fri)
道端に表札が突っ立っていた
YAMASITA、とだけあった
YAMASITAさんとはぐれて
困っているようだった
家までの道順を教えてあげたが
わかりにくいところもあったので
いっしょに行くことにした
チャイムを押すと
YAMASITAさんの奥さんが出てきた
この間、新しいのをつけちゃったのよ
そう言って冷えてないトマトを三個押しつけ
ドアを閉めた
山下、と書かれた真新しい表札があった
放っておくわけにもいかず
家に連れて帰った
どうしたものか思案していると
表札はどこからか燃えないゴミ用の袋を持ってきて
自分でその中に入った
本音を言えば捨てられる運命にあることを
どうやって諭すか考えていたのだった
自らの手を汚すことなく
すべてはお望みのとおり
言い訳をする必要もない
生きていることもまた
命の言い訳に過ぎないのだ
袋の中で表札は大人しく佇んでる
その辺りだけ
人のように懐かしい感じがしている
 
2007/05/22 (Tue)
朝、自転車に侵入された
ちょうど起きようとしているところだった
カロロと卑猥なペダルの音を耳元でさせ
とても恥ずかしかったが
俺は初春のように勃ち
自転車は器用に車輪をたたみ侵入してきたのだ
なんだかとても恥ずかしかったが
侵入されるのは侵入するのとは違った気持ち良さと
そしてやはり恥ずかしかったが
俺に何度も侵入された彼女の
このバカ、と言った理由もわかった気がした
昇天する瞬間、降車ボタンを押すと
ベッドは徐々にスピードを落とし
レストランの前に停まった
壁に有名人のサインや手形が
たくさんかけられたレストランだった
あの時と同じものを、と注文し
あの時と同じものなど何もないのに
俺の体から侵入された痕跡が一筋流れ出す
それは愛にも似ていたが
もうそんなものしか愛せなくなっていた
自転車はすっかり清々しい様子で
カロロ、坂道をくだっていく
2007/05/22 (Tue)
階段が出港する
上る人も下る人も
その時だけ水夫になるのだった

ドラを打ち鳴らす男、今日も支配人

石の庭に椅子を出して座ると
どちらが本当の笑い話か
ほとんど区別がない

2007/05/20 (Sun)
男は体育館の裏に
女の歳の数だけ
星を埋めた

女は男のために残しておいた
夏の一番柔らかいところを
まだ寄木細工の箱にしまってある

詐欺師の家では
換気扇がゆっくりと壊れて
まだ誰も出てこない
2007/05/18 (Fri)
正午から午後二時頃にかけて
北部を中心に雹が降った
農作物が被害を受けた
傷口から病害感染の恐れがあるので
薬剤が散布された
長い坂道の途中
幼い男の子が線を引いていた
線を引くと
線のあちら側とこちら側ができた
どこまでも引けそうにも見受けられたが
やがて引けなくなった
海の向こう
大きな国と小さな国が戦っていた
たくさんの人が血を流した
でもそれは誰かのついた
優しい嘘だった
夏の近く
小包が届いた
すべてそのまま
置き去りにして
2007/05/17 (Thu)
駅前に
都会が落ちていた

命のように
きれいだった

なくさないように
拾って
ポケットにしまった

そして
三年振りの待ち合わせに
僕は現れなかった
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* ILLUSTRATION BY nyao *