プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2012/07/15 (Sun)
五十一のデッサン
蘇鉄の葉が風圧に揺れる
掃討戦が始まっていた
その夏、ぼくはひたすら
素麺を食べ続けたのだった
想像よりも遠くまで
空は広がり
祖父は二度と
祖国に帰らなかった
掃討戦が始まっていた
その夏、ぼくはひたすら
素麺を食べ続けたのだった
想像よりも遠くまで
空は広がり
祖父は二度と
祖国に帰らなかった
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2012/07/07 (Sat)
五十一のデッサン
炊事を終えた
スリランカの水夫たちが
座って西瓜を食べていた
出納係はスープ皿に
吸殻を捨てた
好きなものはすべて
素手で触りたい
水族館の閉館日
すぐりの実を摘むあなたの姿が
すりガラス越しに見える
2012/07/03 (Tue)
五十一のデッサン
私腹を肥やした市長と
新人の試験監督が
芝の敷き詰められた校庭で
シーソー遊びをしている
紙魚は紙幣を食べつくし
新月の夜に
湿った子音になる
質問が締め切られると
至福の時は終わり
真鍮製のシンバルは
深海に沈んでいく
2012/06/20 (Wed)
五十一のデッサン
参考資料の提出があった
瑣末な誤字脱字が散見された
作図と細則の改正が必要と思われた
差額についての催促を済ませて
採光のためにブラインドを開ける
サッカー場の方が
先ほどから騒がしい
サーカスが開催されるそうだ
探していた散薬が見つかり
白湯で飲む
産休中の細君から
サンドウィッチが食べたいと電話があった
サイレンが正午を告げる
サマータイムの最終日だった
2012/06/19 (Tue)
五十一のデッサン
壊れた工作物に
黄砂が降り積もる
梢は公道に木漏れ日を落とし
昏睡する
呼吸と肯定されることのない
告白の中で
コップから言葉が溢れ
子どもは硬貨を握りしめたまま
交差点を渡る
コンビナートに沿って歩き
焦げた匂いのする
国境へと向かう
2012/06/17 (Sun)
五十一のデッサン
ケイコは献血に行く
ケイコは血圧が低い
血糖値は正常の範囲内で
血色は良く
健康的に見える
ケイコは毛が生えているが
蹴鞠のイメージはない
ケイコはケーキが好きだ
けれどケーキがケイコを好きとは限らない
ケイコは軽量の携帯電話を持ち
ケイコは稽古する
(血縁関係にあるマナブと)
ケイコは形而上学的に言えば
継続性のない経験と
結論しかない経緯とで
形成されている
ケイコは検討する
ケイコは決心する
ケイコは決定する
ケイコは削り
ケイコが削られる
京王線沿線を歩き
結婚式場の脇を抜け
献血に急ぐ
傾斜を降りるケイコの姿が
景色の一部になる
2012/04/12 (Thu)
五十一のデッサン
空港は閉鎖された
矩形の朽ちた滑走路に
靴が片方だけ残されている
繰り返される少年たちの空想は
くぐもった口約束となる
草の葉でくすり指を切ったまま
下り坂を駆けおりる
九月が十月のように終わる
2012/04/09 (Mon)
五十一のデッサン
季節風の匂いを嗅いで
キリンは立っていました
傷を負っていましたが
綺麗事も言わずに
毅然と起立していました
記念碑のように遠くまで見えました
切り立った崖の上
希望という穏やかな絶望の中で
2012/04/06 (Fri)
五十一のデッサン
遅い朝食をとる
幼い弟はオートミールを食べ終え
おまけの玩具を並べている
お父さんはまだ夢の中で
起き上がる方法を見つけられない
穏やかに子どもは大人になり
大人は老いていく
押入れの奥にある沖しかない海を
横断するようにわたしは泳ぎ、そして
教えられたとおりに
溺れる
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