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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
50
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2012/03/09 (Fri)


頭からキノコが生えている
抜いて良いものかどうか
水や肥料をやるべきかどうか
などと迷っているうちに
毎日少しずつ
キノコは大きくなっていく
キノコ生えてるよ
と心配していた妻も娘も
今ではすっかり慣れて
時々、退屈なことのように
触ったりする
キノコが大きくなる一方で
自分は少しずつ小さくなっていく
このままどこに行ってしまうのか
でもそれはそれで
許された、ということなのかもしれない
いつの日か朝の光のなか
家族を見守るように食卓に着いている
そんなキノコの姿を思い浮かべて
胞子をまいたりしてみる
 
 
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2012/03/08 (Thu)
 
 
犬小屋を作る
犬がいないので
代わりに自分が中に入る
隣の家から拙いピアノが聞こえる
丸くなりうずくまっていると
昔からずっとこうしていた気がしてくる
前を通る人が
中を覗き込んで口から何か音を出す
あれが言葉というものなのだろう
ピアノはさっき間違えたところを
滑らかに弾いて先に進む
自分の体温で
自分の内側が少しずつ温かくなる
一番近くに自分がいる
そのことに安心して
眠くなってくる
 
 
  
2012/03/07 (Wed)
 
 
図書館の海に
沈んでいく
『決定版 小林カツ代の毎日おかず』
(今日から使えるシリーズ)

外では間の狭い男が
雨のように泣いている

耳の穴から
半透明の小エビが出てきて
コスモスの近くを飛ぶ
十七歳の飛行機を眺めている

 
 
2012/03/06 (Tue)
 
 
黄ばんだ紙 
表と裏 
その間に 
地方都市 
雑居ビルの一室から 
産声
産まれることの
懐かしい痛み 
短い言葉は 
短い影をつくり
壁は語られる
曖昧な
理屈によって
ふと吹いた風に
紙が舞う
足などに踏まれ
粉々になる
女の人が
上の空で
逃げ水を見ている
   
 
2012/03/05 (Mon)
 
 
冷蔵庫の扉が
閉まらなくなった
代わりに
炊飯器の蓋をつけた
閉まるようになった
炊飯器の蓋には
冷蔵庫の扉をつけた
毎日、ご飯の時が
重くて大変だけれど
つらいことばかりじゃないよ
と、君は笑う
  
 
 
2012/03/04 (Sun)
 
 
死にたいな、
群青
産まれてから今まで
食べたバナナの数を計算すると
予想より多くて
思っていたより少ないから
どんな気持ちになってよいのか戸惑う
親父はすっかりまだらボケ
時々俺を誰かと間違えるようにまでなった
背中の斜面
太陽の灯火
可愛がってくれた野口さんは
転んだ拍子に死んじまった
たーちゃんはいい子だね、
たーちゃんはいい子だね、
でもね、野口さん
たーちゃんはいい大人にはなれなかったよ
それでも生の端っこにしがみついて
俺を殺さないでくれ、と
何かに懇願するんだろう
空も風も
何であんな所にありやがる
死にたいな、
群青
死にたいな、
群青
 
 
 
2012/03/03 (Sat)
 
 
チケットの音を
握りしめたまま
匂いのない歩行者
側溝の中で
口は燃え尽き
残された句読点は
誇りとは
とても遠い
そして名前は
窒息を始める
一滴の水に
一筋の光に
 
 
 
2012/03/01 (Thu)
 
 
レモン
その向こうに夕日
そして
落ちていく坂道
 
海老の死体たちは
天ぷらになってしまった
昨晩、わたしが
指を怪我している間に
 
バスが停まる
駄菓子を買いに
人が降りてくる
  
 
2012/02/29 (Wed)
 
 
傍らに咲く向日葵の肩に
歯車、のようなものが落ちて
僕らは片言で話す
君はカタコトと音をたてて
一面の夜みたいに
目を閉じている
カタコト
カタコト
いつかそんな音がする列車に
二人で乗ったね
目は開けていたけれど
真っ暗な中を走る
たしか、最終列車だったね
そして思い出という言葉を
使えるほどの勇気も
僕らはまだ持ち合わせていないね
歯車のようなものが飛んでいく
あれは歯車ではなくて
羽のある何か小さな生き物
何も忘れることなく
何も奪うことなく
きれいに見えなくなる
  
 
2012/02/28 (Tue)
 
 
夜、すべての列車が
運行を終えたころ
駅にしんしんと
ネジが降り始める
駅舎の出入口や
線路に積もったネジを
当直の駅員がネジかきをする
やがてネジは止み
夜明けにはすべて溶けて
人々は何もなかったかのように
駅に集まるだろう
そして今日もどこかで
ネジは締められ
緩められ
ゆっくりと酸化し
愛する人のために盗まれる
一本のネジもあることだろう
 
 
  
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* ILLUSTRATION BY nyao *