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こっそりと詩を書く男の人
  プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
56
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2012/01/23 (Mon)
 
 
窓に眠る
結晶、
その韻律
雪は記憶
線のない記憶
傷ついた草花は
物陰で葉を休め
官吏は雲に刻む
自らの
不完全な名を
  
 
 
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2012/01/09 (Mon)
 
 
投げたボールの
破片が鈍く錆びて
木々の梢に優しい
アゲハ、あれは
産卵に来た
そしてもう
帰れないだろう
(だから誰かが鳥になる)
(そっと鳥になる)
タイヤの無いバスが
公道を走る
何となく空は高く
僕は端末の近くで
少し吐きたくなる
 
  
 
2012/01/06 (Fri)

低いベッド 
壊れた水平線を 
修復する 
年老いた水夫 
子どもたちは 
遊びまわる 
紐状のもので 
いたるところで 
フェンスの中に 
迷い込んだ 
夏の蟻が 
出口を探し
一歩ずつ 
干からびていく 
低いベッド 
不定、唯一 
座るところ



2011/12/25 (Sun)
 
 
空の化石を
定規で測る
本棚に
古い指紋
人がいた
人はいた
肩幅の広さに
干されたままの
下着類
飲み物のない
簡単な食事を
フォークで
唇に運ぶ
言葉への失望と
引き換えた
足音
そして
足跡
 
 
2011/12/23 (Fri)
 
 
熱帯植物園の温室に
雪が降り積もる
さっきまで君と話をしていた
多分、話をしていた
メリーゴーランドの馬たちが
干し草を食む
クジラが次のバス停を目指して
暗い海を航行する
さっき、とはいつのことだろう
話したいことは
たくさんあったはずなのに
右手にも左手にも
空白のページしか見つからない
 
 
 
2011/12/22 (Thu)
 
レジの長い列に並ぶ
列は進んでいるのに
なかなか順番は回ってこない
季節はいつしかすっかり秋となり
半袖のTシャツでは
肌寒く感じるようになった
小腹も空いた
トイレにも行きたい
買い物籠の中のものは
水気を失ったり
腐り始めたりしている
周りの人を見ると
みんな少しずつ年を取ってるいるのがわかる
外にはすっきりと澄んだ
秋の空が見える
すべてを捨ててどこかに行きたいな
などと思うけれど
すべて、と呼ぶにはお粗末なものしかない
また少し列が進む
その様子を見て
客席の人が手を叩いて笑う
 


 
2011/12/20 (Tue)


縄跳びの途中で
砂を買いに行った母が
未明、父の心の中で
発見された



ベッドを買うのに
十円足りない
だから今夜も
寝られない



夏なのに
シチューの話をすると
蟻が集まってくる



洗濯物と同じ色の
キャンディをつくる
他のものと
間違えないように



バナナの隣に
小さな家を建てた
数年後
バナナは腐っていた



ラジオをつける
ニュースの音が聞こえる
そのままにして
家を出る
今頃は天気予報だろう



スイカに名前をつける
名前を呼ぶ
返事はない
石に話しかけている気がしてくる



突然の電話に
三百六十度
声が裏返る
とても苦しいのに
相手は気づいてくれない



道路が大きくカーブしている
建物の窓から
人が外を見ている
その先にも
道路が続いているかのように


2011/12/18 (Sun)
 
 
わたしの雨は
昨日すべて
降ってしまいました
あんなにたくさん
両腕に抱えていたのに
傘が眠っています
夜明けの寂しい
コンクリートのように



2011/12/17 (Sat)
 
 
鬼ごっこをしているうちに
本物の鬼になっていました
友達は逃げ回っている間に
立派な大人になり
一人また一人と
遊びから抜けていきました
夜は水槽の魚に
言葉を教えて過ごします
いつかすべてを
忘れてしまう前に
  
 
 
2011/12/15 (Thu)

 
窓を開けて
春の風が入ってきて
ピアノの鍵盤ひとつ
押して消えてく

そんな嘘のような
ことがあったなら
それはきっと君の
優しさのせい

窓を開けて
流れ星が入ってきて
一番暗い場所に
明かりを灯す

そんな嘘のような
ことがあったなら
それはきっと君の
祈りのせい

約束したわけじゃないけど
会いたいと思わないと

約束したわけじゃないけど
生きていく、きれいごと並べて
 


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* ILLUSTRATION BY nyao *