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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
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58
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男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2002/02/15 (Fri)
旅先から
自分宛てに出した絵葉書
それが
詩です
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2002/02/14 (Thu)
二人で作りあげた数式の右辺を
ある日失ってしまった

左辺とイコールだけで
成り立っている数式を見て
きみは笑う

だから
真夜中に起きた僕は
左辺を消しゴムで
消しておいた

無は無である

これが僕たちの探していた
答だったんだろうか

2002/02/13 (Wed)
少年は空を想った
空のその青さを
その高さを
広さを

浮いている入道雲や
飛んでいる雲雀
吹いている風の秒速を

少年が想わないところに空は無く
少年が想うと空はいつもあるのだ

少年の右手には
若くして死んだ母の
形見のペンダントが握られている
2002/02/11 (Mon)
遥か西の国から旅を続けているマジシャンは
旅の途中で
マジックに使う鳩たちに逃げられてしまいました

それならば鳩を使わなければ良いのでしょうが
そのマジックは彼の最大の見せ場であり
鳩無くして公演は成立しないのです

公演が始まるまであと十分
マジシャンは方策を考えに考え
そしてついに
常人の想像もつかない方法で
鳩を舞台に出現させることに成功したのです

もちろんその方法については申し上げられません
何しろ彼はマジシャンですから

それはそれとして
新たなパートナーとなった鳩は全部で十羽
彼はその一羽一羽に宝石の名前をつけることにしました

ダイヤ
ルビー
エメラルド
サファイア
ガーネット
ムーンストーン
ペリドット
アメジスト
アクアマリン

ところが彼はそれ以上宝石の名前を知らないので
どうしても最後の一羽だけ名前が決まりません
考えた挙句、つけた名前は
コロク
目の下に小さなほくろのような模様がある鳩でした
こうしてマジシャンと十羽の鳩は旅を続けることになりました

ある日、突然コロクが震え始めました
コロクはマジシャンの手の中でぐったりとしています
看病の甲斐も無くコロクは翌日死んでしまいました
広い草原の真ん中にコロクの骸を埋めると
彼らは再び旅路につきました

ここはコロクが埋められた草原
コロクはゆっくりと土に返りました
その過程で胃袋に入っていた一粒の種子が発芽し
芽はぐんぐんと成長し
そして数十年の歳月を経て大きな木になったのです

その間マジシャンは旅先で土に返りました
訃報を聞いた彼の息子は父の遺志を継ぎ
今、マジシャンとして旅を続けています

夏の暑い日のこと
草原の中に一本だけ立っている木を見つけた彼は
その木陰で二時間昼寝をしました
それはコロクの木でした

彼の父はマジシャンとしてその生涯を閉じました
恐らくその息子である彼も

そしてコロクの木は生き続けるのです
2002/02/10 (Sun)
真っ白な画用紙の
その真ん中に

僕は

しま

と書いた

画用紙の海で遭難した船乗りが
泳ぎ疲れないように

ある日、画用紙の海で遭難した僕は
後悔することになる

君の名前を書いておけば良かった!
2002/02/09 (Sat)
コップ一杯の水と
数百km離れたところにある海

その二つは
空気中に気化した水を媒介として連続する水溜りである

体内の約70%が水分の私という水溜りも
その一つとして連続している

だから血は潮のにおいがして
海は赤く染まるのだ

私はコップの水を飲み干して
確固たる連続のために窓を開ける

数百km離れた砂浜には
色とりどりの小瓶が漂着するころだろう
2002/02/05 (Tue)
一家全員がそろったのは
昨年の正月以来だろうか
兄嫁が妊娠したという話を聞くと
父はたいそう喜び
押入れからアルバムを取りだし
いつもの昔話をする

それは色あせた1枚の集合写真
40人ほど写っているそのなかで
一番前列中央が祖父と祖母で
その膝に抱っこされているのが私
父は10人兄弟の上から数えて6番目
何か一族の集まりだったのだろうが
誰もその理由を覚えていない

父が話すことといえば決まって祖父のことで
貧しかった農家に生まれたことから始まって
その類いまれなる頭のよさに
村をあげて旧制中学に行かせたことや
医者になってからのその「赤髭先生」ぶりまで

その話が始まると要領の良い妻はいつも
思い出したかのように用事を見つけては中座する
兄嫁はせっかくの父の喜びを壊したくないようで
何回も聞いたその話にふんふんと頷いている
兄と私はそ知らぬ顔でテレビを見ていたりする

一族が写った色あせた集合写真
そこに写っている人間は
祖父母も含め何人かは他界してしまった

私は時々その人たちを忘れぬように
父の10人兄弟とその配偶者たちを
年齢順に並べる
床の中で眠りに入る直前や
満員電車に揺られながら

話はいよいよ佳境に入り
祖父と野口英世博士との親交に及び
ますます語る口調にも熱が入る

そんな父もだいぶ小さくなった
そういえば今年
写真の中の祖父の年齢を
超えることになる
2002/02/04 (Mon)
神様、もう少しごゆるりとしませんか
ジャスミンティーでも飲みながら

神様も大変でしょう
いつもいろんな場面で登場させられて
好きなように利用されて
だから、もう少しさぼっていませんか

そういえば「さぼる」って
日本語だと思っていたのですが
「サボタージュ」という
フランス語が語源だそうですね

房総はもう少しすると
半島の先っちょから
黄色やピンクやオレンジの花が咲き始め
いい季節になるんですよ

だから神様、どうですか
木靴でも鳴らしながら
もう少しサボタージュしていませんか

私が一篇の詩を書き終えるまで
2002/01/31 (Thu)
通り過ぎて行ったのは夏
白い雲だと思っていたら

そんなことにも気付かずに
壁面に落書きを描きつづけた
ガード下

うす暗い暑さのなかで
ハンカチも持たず
何度も手の甲で汗をぬぐい

口で言うのは簡単だ、という
したり顔を横目に
発するべき言葉すら持ち合わせずに

いったいいくつの夏が過ぎ去ったのだろう
ポケットの中の
折り目正しくアイロンがけされたハンカチ
そして
理屈をこねる事ばかり得意になっていたこの口

それでもまだ
誰かの落書きの下で
あの日の自分は息を殺している
息を殺しているのだ
そう信じたくなる
時々
2002/01/31 (Thu)
シャンティ、君が愛したのは
都川のほとり
あずま橋近く
濁った白のベンチ

シャンティ、君が産まれたのは
どこか南の遠い国
国境近くの名前も知らぬ街

川は緑と呼ぶのがためらわれるほどの鈍色
水量が減ると漂うドブの臭い
いつもベンチに腰掛け日が暮れるまで語り
産まれた街の臭いがするとつぶやいたね、シャンティ

シャンティ、覚えているかい
僕らが出会ったのは
地方都市のうらぶれた飲み屋街
場末のスナック

シャンティ、僕は君を拾って
僕は君に拾われた
シャンティ、季節は
いつだっただろうか

シャンティ、君はこの国の夏は暑くて嫌だと言った
君の祖国の方が赤道に近いのだから
暑いのは平気だろう、
そんな僕の言葉に真顔で反論して

シャンティ、あれはこの地方では珍しく
大雪の降った日だった
初めて見る雪にはしゃいだ後で
暖房の無い部屋では寒くて寝られないと

だからシャンティ、僕は教えたんだ
ペットボトルにお湯を入れて抱きながら寝ることを
湯たんぽ、そうジャパニーズ・ユ・タ・ン・ポ
タオルはきちんと巻くように言ったのに
翌日赤くなった肌を見せたね

シャンティ、君は
祖国の貧困さを憎み
この国の豊かさを憎み
僕を愛し
僕を憎んだ

シャンティ、今日は午後から
あの日と同じ雪が降っている
君が愛した都川のほとり
あずま橋近く
濁った白のベンチも
綺麗な白に塗り替えられている

シャンティ、この雪を君が住む街にも
降らせてやりたい
そうしたらシャンティ、今度は君がみんなに
ジャパニーズ・ユタンポを教えてあげるといい
遥か北方の国の
このへんてこりんな風習を流行らせるといい
タオルを巻くことも忘れずに

シャンティ、君が愛したのは
都川のほとり
あずま橋近く
濁った白のベンチ

そう
だったね、
シャンティ
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* ILLUSTRATION BY nyao *