プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2020/03/02 (Mon)
詩
ウミウシの背丈より
大きくなった僕の子供が
草原に立って
外国人になる
痛みのない蝉が
辞書の中で鳴く
抜け殻でできた橋梁が
丁寧語で崩落を始める
通訳の人は母国語を忘れ
手紙には
空白だけが綴られていく
僕と僕の子供が草刈りを始めると
二人の間に
薄い国境線が引かれる
汗が饒舌に
僕らそのものになる
夏なのに
どちらからともなく
ごめんなさい、と言う
その時の笑顔が
今でも忘れられない
これからも
忘れられない
ウミウシの背丈より
大きくなった僕の子供が
草原に立って
外国人になる
痛みのない蝉が
辞書の中で鳴く
抜け殻でできた橋梁が
丁寧語で崩落を始める
通訳の人は母国語を忘れ
手紙には
空白だけが綴られていく
僕と僕の子供が草刈りを始めると
二人の間に
薄い国境線が引かれる
汗が饒舌に
僕らそのものになる
夏なのに
どちらからともなく
ごめんなさい、と言う
その時の笑顔が
今でも忘れられない
これからも
忘れられない
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2020/03/01 (Sun)
詩
テーブルの下に
豆腐が落ちていた
原形がわからないくらいに
ぐちゃぐちゃに崩れていた
世を儚んで
飛び降りたのだ
窓を開ける
初夏の風が吹いて
部屋の中を涼しくする
豆腐を集め
庭の隅に埋めた
豆腐屋でその話をすると
お店の人は黒板の正の字に
一本付け足した
今日のおすすめ品は
厚揚げらしい
テーブルの下に
豆腐が落ちていた
原形がわからないくらいに
ぐちゃぐちゃに崩れていた
世を儚んで
飛び降りたのだ
窓を開ける
初夏の風が吹いて
部屋の中を涼しくする
豆腐を集め
庭の隅に埋めた
豆腐屋でその話をすると
お店の人は黒板の正の字に
一本付け足した
今日のおすすめ品は
厚揚げらしい
2020/02/29 (Sat)
詩
世界は晴れあがっています
わたしたちの頭は禿げあがっています
この頭の表皮に繁茂している
おびただしい髪の毛がすべて
アデランスだと言っても
あなたは信じるでしょう
でも心配はいりません
わたしの頭の中は
アートネイチャーのことで
いっぱいなのですから
髪の毛には海藻が良いと聞きます
聞いたのはわたしたちの耳です
退化していく途中で
声や音しか聞くことのできなくなってしまった
そんな儚い耳です
禿には海藻が良いと聞きます
けれど、海のない所で育ったわたしたちには
何が海藻であるのか
何が海藻でないのか
区別がつきません
区別がついたとしても泳ぐことができません
泳げないので溺れることもできません
ですからそれ以上ひっぱらないでください
禿げあがったわたしの頭皮が反転して
そこにあるのは青い空です
どこまでもずっと青い空です
わたしたちが足を滑らせて
落ちることしかできなかった
世界中のあの晴れた空です
世界は晴れあがっています
わたしたちの頭は禿げあがっています
この頭の表皮に繁茂している
おびただしい髪の毛がすべて
アデランスだと言っても
あなたは信じるでしょう
でも心配はいりません
わたしの頭の中は
アートネイチャーのことで
いっぱいなのですから
髪の毛には海藻が良いと聞きます
聞いたのはわたしたちの耳です
退化していく途中で
声や音しか聞くことのできなくなってしまった
そんな儚い耳です
禿には海藻が良いと聞きます
けれど、海のない所で育ったわたしたちには
何が海藻であるのか
何が海藻でないのか
区別がつきません
区別がついたとしても泳ぐことができません
泳げないので溺れることもできません
ですからそれ以上ひっぱらないでください
禿げあがったわたしの頭皮が反転して
そこにあるのは青い空です
どこまでもずっと青い空です
わたしたちが足を滑らせて
落ちることしかできなかった
世界中のあの晴れた空です
2020/02/28 (Fri)
お知らせ
いまり氏が私の詩の評論を書いてくださいました。
いまり氏note記事
評論 たもつ氏「手を繋いでいた」「さよなら中継」より
評論対象の詩
手を繋いでいる
さよなら中継
いまり氏note
新進気鋭の詩人さんです。熱量のある詩は一読の価値あり。
いまり氏note記事
評論 たもつ氏「手を繋いでいた」「さよなら中継」より
評論対象の詩
手を繋いでいる
さよなら中継
いまり氏note
新進気鋭の詩人さんです。熱量のある詩は一読の価値あり。
2020/02/28 (Fri)
詩
砂の喫茶店で
椅子を叩いているうちに
夕暮れとなり
列車は少しずつ走っていた
コーヒーのお代わりは半額
けれど労役が発生し
古くからの友だちはみな
去ってしまった
入浴の準備をするために
すいません、と
マスターが犬の散歩にでかける
店番は卵の殻を割り
オムレツを焼いているけれど
誰が食べるのか
何か月経ってもわからない
砂が風に運ばれて
降り積もる音がする間に
湿った喉を雑然と乾かす
構造は海に似ているのに
余りものが出たらしい
という声だけは
よく聞こえた
砂の喫茶店で
椅子を叩いているうちに
夕暮れとなり
列車は少しずつ走っていた
コーヒーのお代わりは半額
けれど労役が発生し
古くからの友だちはみな
去ってしまった
入浴の準備をするために
すいません、と
マスターが犬の散歩にでかける
店番は卵の殻を割り
オムレツを焼いているけれど
誰が食べるのか
何か月経ってもわからない
砂が風に運ばれて
降り積もる音がする間に
湿った喉を雑然と乾かす
構造は海に似ているのに
余りものが出たらしい
という声だけは
よく聞こえた
2020/02/27 (Thu)
詩
区画整理された明方の街を
アフリカゾウと一緒に駆ける
低体温の命を
ひとつずつ持って
やがてぼくらは眠くなり
街は
行き止まりになるだろう
それでも幸せだった
何もかもが片思いだったけれど
幸せだった
区画整理された明方の街を
アフリカゾウと一緒に駆ける
低体温の命を
ひとつずつ持って
やがてぼくらは眠くなり
街は
行き止まりになるだろう
それでも幸せだった
何もかもが片思いだったけれど
幸せだった
2020/02/26 (Wed)
詩
夜、ベッドの中で
妻はいつもより濡れている
ぎゅっと抱きしめると
ぼくの腕の中で
あっけなく崩れていった
豆腐だった
水切りが足りないことに
どうして今まで
気づいてあげられなかったのだろう
そんなやりきれない気持ちになって
明日は朝から
湯豆腐にしようと思う
夜、ベッドの中で
妻はいつもより濡れている
ぎゅっと抱きしめると
ぼくの腕の中で
あっけなく崩れていった
豆腐だった
水切りが足りないことに
どうして今まで
気づいてあげられなかったのだろう
そんなやりきれない気持ちになって
明日は朝から
湯豆腐にしようと思う
2020/02/25 (Tue)
詩
喉が渇いたので
醤油を飲んでいたら
目が痛くなった
目薬と間違えて
醤油を差していた
まるで
お寿司のように
空っぽになった
醤油を探して
東京を歩く
薬屋はたくさんあるのに
どうしても
お寿司屋が見つからない
目薬だけが
両手から
溢れそうになる
やがてぬるぬると
東京の日は暮れる
喉が渇いたので
醤油を飲んでいたら
目が痛くなった
目薬と間違えて
醤油を差していた
まるで
お寿司のように
空っぽになった
醤油を探して
東京を歩く
薬屋はたくさんあるのに
どうしても
お寿司屋が見つからない
目薬だけが
両手から
溢れそうになる
やがてぬるぬると
東京の日は暮れる
2020/02/24 (Mon)
詩
明方の台所で
豆腐がひとり
脱皮をしていた
家の者を起こさなように
静かに皮を脱いでいた
すべてを終えると
皮を丁寧に畳み
生ごみのところに捨て
冷蔵庫に入った
夕食は冷奴だった
僕は明方に見た
豆腐の脱皮の光景を
妻に話した
何、それ
と言って妻は笑った
豆腐も笑った
明方の台所で
豆腐がひとり
脱皮をしていた
家の者を起こさなように
静かに皮を脱いでいた
すべてを終えると
皮を丁寧に畳み
生ごみのところに捨て
冷蔵庫に入った
夕食は冷奴だった
僕は明方に見た
豆腐の脱皮の光景を
妻に話した
何、それ
と言って妻は笑った
豆腐も笑った
2020/02/23 (Sun)
詩
炎天下に日傘を差すと
エイだった(魚の方の)
図鑑に書いてあるとおり
危険な棘に注意しながら
そのまま差して歩く
エイは不機嫌な様子で
時々、乱暴にヒレをばたばたさせる
なるべく目を合わせないようにするけれど
エイがわたしの目を探しているのが
雰囲気でわかる
直射日光を浴びて
さすがにエイもぐったりしてきた
休憩するために
一番近くの水族館に入る
係の人に事情を話すと
エイを水槽に放してくれた
わたしには別の水槽を
用意してくれた
炎天下に日傘を差すと
エイだった(魚の方の)
図鑑に書いてあるとおり
危険な棘に注意しながら
そのまま差して歩く
エイは不機嫌な様子で
時々、乱暴にヒレをばたばたさせる
なるべく目を合わせないようにするけれど
エイがわたしの目を探しているのが
雰囲気でわかる
直射日光を浴びて
さすがにエイもぐったりしてきた
休憩するために
一番近くの水族館に入る
係の人に事情を話すと
エイを水槽に放してくれた
わたしには別の水槽を
用意してくれた