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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
56
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2013/03/21 (Thu)
 
 
夜更けに植物たちの呼気が肺胞を満たし
ぼくはしずしずと座席におぼれていく
鶏頭の形をした虫みたいな小さな生き物が
呟きのように車内灯に集まり始めている

窓の外では乗り遅れた人が持て余した手で
自分の柔らかい体を触りながら
出発を心待ちにしている様子が見て取れる

かつて駅弁を買うために
真っ暗なホームに一人降り立った父は
二度と帰ることはなかった
後日、配達人になり成功をおさめたと
母の独り言でぼくは知ったのだった

湿った掌で手書きの切符がふやけたまま
最終列車はホームを滑り出す
植物たちは受粉を終え
恍惚の中、一斉に産卵を始める
  
 
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2013/03/19 (Tue)
 
ぬかるんだバス停で
いやらしい下半身を
露出した時計
ポピーの花束を持って
佇んでいる
金属製のモノを
口に含むと
すぐに射精し
その異物を手に吐き出せば
様々な言語の断片で
悩んだ跡が
それなりに散見された
果てた時計は
ぐなぐなになり
むしろ
ゴム製のようにも見えたが
曖昧に干からびてのち
植物の茎などとも
見分けがつかなくなった


2013/03/17 (Sun)
 
ぼくの細胞が裸になった
ストリップもないだろう、と
あわてて上着を被せた
細胞は檸檬のように
ゴルジ体を吐き出し
ミトコンドリアを叩き付け
軒下に吊るされた
今日は誰と
話をしたわけでもないけれど
つまりそれは
ぼくのぼやけた
死体にちがいなかった
  
 
2013/03/14 (Thu)
 
 
豆腐を食べているうちに
豆腐のことが気になり始めた
豆腐の色はどうだったか
豆腐の形はどうだったか
匂いや味はあったか
どのように崩れ
何を受け入れ
何を拒むのか
すぐにでも豆腐屋に行って
確かめたいけれど
今は豆腐を食べるのに忙しい
いつまでもなくならない豆腐を前に
長梅雨は明ける

   
 
2013/03/13 (Wed)


野原に自転車が倒れていた
車輪が外れていたので
持っていたアイロンで
直すことにした
うまく直せないでいると
両親と兄がやってきた
みんなアイロンを持っていた
あれこれしているうちに
いつしかトランプ遊びが始まった
家族でトランプをするなんて
いつ以来だろう
カードがばれないように
うまく隠しながら
蜜柑を好きなだけ食べた
やがて一人、また一人とあがり
順に野原から帰っていった
仕方なく
再び自転車を直し始めた
コンセントが入ってないことも
とうに知っているはずなのに
気づかない振りをして
アイロンを使い続けた
 
2012/08/04 (Sat)
 
ぼくが逆立ちをする
父が支える

あれから数十年が経ち
今度は父が逆立ちをして
ぼくが支える番になった

それなのに
父はベッドに寝たまま
起きてこない
 
 
 
2012/08/03 (Fri)
 
 
ぼくの骨が溶けだして 
飴玉のような
真っ白な塊になる
飴玉だよ、と 
近所の子供にあげると 
骨みたいな味がする 
そう言って無邪気に笑う 
骨の無いぼくは
ぐにゃぐにゃの体で 
自転車にも乗れない 
それでも明日には慣れて
乗れる気がする
自転車とは
そういうものだ


2012/08/02 (Thu)
 
深夜、きみが
コップを割ってしまった
きみの夢の中で

思い出の品だったのだろうか
きみは泣き出して
泣き止まなかった
ぼくはきみの夢の中で
ただおろおろするばかりだった

翌朝、夢のことなど
すっかり忘れたかのように
ぼくらは簡素な朝食をとった
食事を終えると
きみは台所に行って
静かにコップを割り始めた

物は思い出ではないし
思い出は物ではない
それで構わない気がした
ぼくも一緒になって
コップを割った

 
 
2012/08/01 (Wed)

妻の眉間のあたりに
凪いだ海がある

うみねこが飛ぶ
貨物船が渡る
風が吹く
少し波立つ

虹、と
妻が指差す

知ってるよ、
海に映ってた
 
 
2012/07/25 (Wed)
 
 
たくさんの羊たちを乗せて
母が猛スピードで
寝台列車を運転している

眠れない父のところに
早く羊を届けなければならなかった
車線変更を繰り返し
いくつもの列車を追い越して行く

雨が降ると
父は会社に行きたがらなかった
明日も晴れればいいのに
わたしは願うしかなかった
 
 
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* ILLUSTRATION BY nyao *