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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
56
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2024/04/20 (Sat)
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2020/03/02 (Mon)


ウミウシの背丈より 
大きくなった僕の子供が 
草原に立って
外国人になる 

痛みのない蝉が
辞書の中で鳴く
抜け殻でできた橋梁が 
丁寧語で崩落を始める
通訳の人は母国語を忘れ
手紙には
空白だけが綴られていく

僕と僕の子供が草刈りを始めると
二人の間に
薄い国境線が引かれる
汗が饒舌に
僕らそのものになる

夏なのに
どちらからともなく
ごめんなさい、と言う
その時の笑顔が
今でも忘れられない
これからも
忘れられない
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2020/03/01 (Sun)

 
テーブルの下に
豆腐が落ちていた 
原形がわからないくらいに 
ぐちゃぐちゃに崩れていた 
世を儚んで
飛び降りたのだ
窓を開ける
初夏の風が吹いて
部屋の中を涼しくする
豆腐を集め
庭の隅に埋めた
豆腐屋でその話をすると
お店の人は黒板の正の字に
一本付け足した
今日のおすすめ品は
厚揚げらしい
2020/02/29 (Sat)

 
世界は晴れあがっています 
わたしたちの頭は禿げあがっています 
この頭の表皮に繁茂している
おびただしい髪の毛がすべて 
アデランスだと言っても
あなたは信じるでしょう 
でも心配はいりません 
わたしの頭の中は 
アートネイチャーのことで
いっぱいなのですから 
髪の毛には海藻が良いと聞きます 
聞いたのはわたしたちの耳です 
退化していく途中で
声や音しか聞くことのできなくなってしまった 
そんな儚い耳です 
禿には海藻が良いと聞きます
けれど、海のない所で育ったわたしたちには 
何が海藻であるのか 
何が海藻でないのか
区別がつきません 
区別がついたとしても泳ぐことができません 
泳げないので溺れることもできません 
ですからそれ以上ひっぱらないでください 
禿げあがったわたしの頭皮が反転して 
そこにあるのは青い空です 
どこまでもずっと青い空です 
わたしたちが足を滑らせて 
落ちることしかできなかった
世界中のあの晴れた空です
2020/02/28 (Fri)
いまり氏が私の詩の評論を書いてくださいました。

いまり氏note記事
評論 たもつ氏「手を繋いでいた」「さよなら中継」より 

評論対象の詩
 手を繋いでいる
 さよなら中継

いまり氏note
新進気鋭の詩人さんです。熱量のある詩は一読の価値あり。
2020/02/28 (Fri)

 
砂の喫茶店で
椅子を叩いているうちに
夕暮れとなり
列車は少しずつ走っていた

コーヒーのお代わりは半額
けれど労役が発生し
古くからの友だちはみな
去ってしまった

入浴の準備をするために
すいません、と
マスターが犬の散歩にでかける
店番は卵の殻を割り
オムレツを焼いているけれど
誰が食べるのか
何か月経ってもわからない

砂が風に運ばれて
降り積もる音がする間に
湿った喉を雑然と乾かす
構造は海に似ているのに
余りものが出たらしい
という声だけは
よく聞こえた
2020/02/27 (Thu)

 
区画整理された明方の街を
アフリカゾウと一緒に駆ける
低体温の命を
ひとつずつ持って

やがてぼくらは眠くなり
街は
行き止まりになるだろう

それでも幸せだった
何もかもが片思いだったけれど
幸せだった
2020/02/26 (Wed)

 
夜、ベッドの中で 
妻はいつもより濡れている
ぎゅっと抱きしめると
ぼくの腕の中で 
あっけなく崩れていった 
豆腐だった
水切りが足りないことに
どうして今まで
気づいてあげられなかったのだろう 
そんなやりきれない気持ちになって
明日は朝から 
湯豆腐にしようと思う
2020/02/25 (Tue)


喉が渇いたので
醤油を飲んでいたら
目が痛くなった
目薬と間違えて
醤油を差していた
まるで
お寿司のように

空っぽになった
醤油を探して
東京を歩く
薬屋はたくさんあるのに
どうしても
お寿司屋が見つからない

目薬だけが
両手から
溢れそうになる
やがてぬるぬると
東京の日は暮れる

2020/02/24 (Mon)


明方の台所で
豆腐がひとり
脱皮をしていた
家の者を起こさなように
静かに皮を脱いでいた

すべてを終えると
皮を丁寧に畳み
生ごみのところに捨て
冷蔵庫に入った

夕食は冷奴だった
僕は明方に見た
豆腐の脱皮の光景を
妻に話した

何、それ
と言って妻は笑った

豆腐も笑った
2020/02/23 (Sun)

 
炎天下に日傘を差すと 
エイだった(魚の方の) 
図鑑に書いてあるとおり 
危険な棘に注意しながら 
そのまま差して歩く
エイは不機嫌な様子で
時々、乱暴にヒレをばたばたさせる 
なるべく目を合わせないようにするけれど
エイがわたしの目を探しているのが 
雰囲気でわかる 
直射日光を浴びて
さすがにエイもぐったりしてきた 
休憩するために
一番近くの水族館に入る 
係の人に事情を話すと
エイを水槽に放してくれた
わたしには別の水槽を
用意してくれた
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* ILLUSTRATION BY nyao *