プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2013/03/21 (Thu)
詩
夜更けに植物たちの呼気が肺胞を満たし
ぼくはしずしずと座席におぼれていく
鶏頭の形をした虫みたいな小さな生き物が
呟きのように車内灯に集まり始めている
窓の外では乗り遅れた人が持て余した手で
自分の柔らかい体を触りながら
出発を心待ちにしている様子が見て取れる
かつて駅弁を買うために
真っ暗なホームに一人降り立った父は
二度と帰ることはなかった
後日、配達人になり成功をおさめたと
母の独り言でぼくは知ったのだった
湿った掌で手書きの切符がふやけたまま
最終列車はホームを滑り出す
植物たちは受粉を終え
恍惚の中、一斉に産卵を始める
夜更けに植物たちの呼気が肺胞を満たし
ぼくはしずしずと座席におぼれていく
鶏頭の形をした虫みたいな小さな生き物が
呟きのように車内灯に集まり始めている
窓の外では乗り遅れた人が持て余した手で
自分の柔らかい体を触りながら
出発を心待ちにしている様子が見て取れる
かつて駅弁を買うために
真っ暗なホームに一人降り立った父は
二度と帰ることはなかった
後日、配達人になり成功をおさめたと
母の独り言でぼくは知ったのだった
湿った掌で手書きの切符がふやけたまま
最終列車はホームを滑り出す
植物たちは受粉を終え
恍惚の中、一斉に産卵を始める
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2013/03/19 (Tue)
詩
ぬかるんだバス停で
いやらしい下半身を
露出した時計
ポピーの花束を持って
佇んでいる
金属製のモノを
口に含むと
すぐに射精し
その異物を手に吐き出せば
様々な言語の断片で
悩んだ跡が
それなりに散見された
果てた時計は
ぐなぐなになり
むしろ
ゴム製のようにも見えたが
曖昧に干からびてのち
植物の茎などとも
見分けがつかなくなった
ぬかるんだバス停で
いやらしい下半身を
露出した時計
ポピーの花束を持って
佇んでいる
金属製のモノを
口に含むと
すぐに射精し
その異物を手に吐き出せば
様々な言語の断片で
悩んだ跡が
それなりに散見された
果てた時計は
ぐなぐなになり
むしろ
ゴム製のようにも見えたが
曖昧に干からびてのち
植物の茎などとも
見分けがつかなくなった
2013/03/17 (Sun)
詩
ぼくの細胞が裸になった
ストリップもないだろう、と
あわてて上着を被せた
細胞は檸檬のように
ゴルジ体を吐き出し
ミトコンドリアを叩き付け
軒下に吊るされた
今日は誰と
話をしたわけでもないけれど
つまりそれは
ぼくのぼやけた
死体にちがいなかった
ぼくの細胞が裸になった
ストリップもないだろう、と
あわてて上着を被せた
細胞は檸檬のように
ゴルジ体を吐き出し
ミトコンドリアを叩き付け
軒下に吊るされた
今日は誰と
話をしたわけでもないけれど
つまりそれは
ぼくのぼやけた
死体にちがいなかった
2013/03/14 (Thu)
詩
豆腐を食べているうちに
豆腐のことが気になり始めた
豆腐の色はどうだったか
豆腐の形はどうだったか
匂いや味はあったか
どのように崩れ
何を受け入れ
何を拒むのか
すぐにでも豆腐屋に行って
確かめたいけれど
今は豆腐を食べるのに忙しい
いつまでもなくならない豆腐を前に
長梅雨は明ける
豆腐を食べているうちに
豆腐のことが気になり始めた
豆腐の色はどうだったか
豆腐の形はどうだったか
匂いや味はあったか
どのように崩れ
何を受け入れ
何を拒むのか
すぐにでも豆腐屋に行って
確かめたいけれど
今は豆腐を食べるのに忙しい
いつまでもなくならない豆腐を前に
長梅雨は明ける
2013/03/13 (Wed)
詩
野原に自転車が倒れていた
車輪が外れていたので
持っていたアイロンで
直すことにした
うまく直せないでいると
両親と兄がやってきた
みんなアイロンを持っていた
あれこれしているうちに
いつしかトランプ遊びが始まった
家族でトランプをするなんて
いつ以来だろう
カードがばれないように
うまく隠しながら
蜜柑を好きなだけ食べた
やがて一人、また一人とあがり
順に野原から帰っていった
仕方なく
再び自転車を直し始めた
コンセントが入ってないことも
とうに知っているはずなのに
気づかない振りをして
アイロンを使い続けた
野原に自転車が倒れていた
車輪が外れていたので
持っていたアイロンで
直すことにした
うまく直せないでいると
両親と兄がやってきた
みんなアイロンを持っていた
あれこれしているうちに
いつしかトランプ遊びが始まった
家族でトランプをするなんて
いつ以来だろう
カードがばれないように
うまく隠しながら
蜜柑を好きなだけ食べた
やがて一人、また一人とあがり
順に野原から帰っていった
仕方なく
再び自転車を直し始めた
コンセントが入ってないことも
とうに知っているはずなのに
気づかない振りをして
アイロンを使い続けた
2012/08/03 (Fri)
詩
ぼくの骨が溶けだして
飴玉のような
真っ白な塊になる
飴玉だよ、と
近所の子供にあげると
骨みたいな味がする
そう言って無邪気に笑う
骨の無いぼくは
ぐにゃぐにゃの体で
自転車にも乗れない
それでも明日には慣れて
乗れる気がする
自転車とは
そういうものだ
ぼくの骨が溶けだして
飴玉のような
真っ白な塊になる
飴玉だよ、と
近所の子供にあげると
骨みたいな味がする
そう言って無邪気に笑う
骨の無いぼくは
ぐにゃぐにゃの体で
自転車にも乗れない
それでも明日には慣れて
乗れる気がする
自転車とは
そういうものだ
2012/08/02 (Thu)
詩
深夜、きみが
コップを割ってしまった
きみの夢の中で
思い出の品だったのだろうか
きみは泣き出して
泣き止まなかった
ぼくはきみの夢の中で
ただおろおろするばかりだった
翌朝、夢のことなど
すっかり忘れたかのように
ぼくらは簡素な朝食をとった
食事を終えると
きみは台所に行って
静かにコップを割り始めた
物は思い出ではないし
思い出は物ではない
それで構わない気がした
ぼくも一緒になって
コップを割った
深夜、きみが
コップを割ってしまった
きみの夢の中で
思い出の品だったのだろうか
きみは泣き出して
泣き止まなかった
ぼくはきみの夢の中で
ただおろおろするばかりだった
翌朝、夢のことなど
すっかり忘れたかのように
ぼくらは簡素な朝食をとった
食事を終えると
きみは台所に行って
静かにコップを割り始めた
物は思い出ではないし
思い出は物ではない
それで構わない気がした
ぼくも一緒になって
コップを割った
2012/07/25 (Wed)
詩
たくさんの羊たちを乗せて
母が猛スピードで
寝台列車を運転している
眠れない父のところに
早く羊を届けなければならなかった
車線変更を繰り返し
いくつもの列車を追い越して行く
雨が降ると
父は会社に行きたがらなかった
明日も晴れればいいのに
わたしは願うしかなかった
たくさんの羊たちを乗せて
母が猛スピードで
寝台列車を運転している
眠れない父のところに
早く羊を届けなければならなかった
車線変更を繰り返し
いくつもの列車を追い越して行く
雨が降ると
父は会社に行きたがらなかった
明日も晴れればいいのに
わたしは願うしかなかった