プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2010/02/14 (Sun)
詩
タンスの引き出しを開ける
中には冷たい水族館がある
死んだミズクラゲが二匹、三匹浮いている
私は係員ではないけれど
係員であるかのように網ですくい上げる
これをどうしようか思っていると
風呂場から余っている洗面器を見つけだして
てろりんと入れる
服とズボンが濡れてしまったので
着替えたかったけれど
あんなにあった衣服や下着は
どうしてしまったのだろう
引き出しを覗き込んでも
水族館では大きい魚が
小さい魚を食べようとしているところしか見えない
壁を一枚隔てた向こう側には
確かに外と道路と民家があるはずなのに
ただ粛々と
ミズクラゲの腐敗した臭いだけがしている
誰かに電話する用事を思い出して受話器を取る
ふとエラ呼吸の仕方を
忘れていたことに気づく
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2010/02/12 (Fri)
詩
世界中の積木が音もなく崩れ始めた頃
特急列車の白い筐体が最後の醗酵を終えた頃
口笛を吹いていた唇がふと偽物の嘘を呟いた頃
少年から剥がれ落ちた鱗は一匹のアキアカネとなって
ハーモニカ色の空へと飛び立って行った
騒がしい沈黙がある
深く澄んだ騒乱がある
ぼくはある晴れた誕生日の夕方、きみに出しそびれた手紙に残っていた
ありったけの行間を燃やしたのだった
どこかで誰かが銃弾を栞の代わりにして聖書にはさんでいる
シーソー遊びに飽きた若い男女が一枚の様式をベンチに忘れたまま
子供を生みに向日葵畑の向こうへと消えていく
すべての隙間のあちら側には風景があるのだ、と
信じて疑わなかったぼくはすべての隙間を覗き込んでいるうちに
トノサマバッタが引っ張るリヤカーに乗り遅れてしまった
観覧車を掃除していた兄が慰めようとして
鳴かない鳥の鳴き真似をずっとしていてくれた
その声を聞きながらぼくは眠り
深夜になっても眠ったまま朝まで眠った
2010/02/11 (Thu)
詩
みかんをむいて父に食べさせると
ぼくはみかんではないのに
お礼を言われた
咳をするしぐさが
父とぼくは良く似ていた
植物に無関心なところも
石鹸で洗う指先の先端の形も
他に似ているところは特にないけれど
おかげでたくさんの人とすれ違っても
父の姿を探すことは容易だった
悔しくて泣いていた子供のぼくを
肩車したのは父だった
確かにあの日ぼくは
空の切れ端を掴んだのだ
記憶が劣化していく中で
今日は昨日より上手く思い出が語れない
かといって何も言わずに父を抱きしめるほど
距離が縮まったわけでもない
大好物のウニの瓶詰めが
食卓に並んだときのように
父がふと笑った
ぼくはウニではないのに
いっしょになって笑った
2010/02/10 (Wed)
詩
傘のない世界で
きみに傘の話をしている
小さなバス停に並ぶ他の人たちも
そぼ降る雨に濡れて
皆寒そうにしている
ぼくは傘の話をする
その機能を
その形状を
その色や柄の種類を
まるで見たことがあるかのように
夢みたい、と言って
そんな夢みたいな作り話を
きみは馬鹿にすることもなく
最後まで聞いてくれる
定刻より五分遅れて到着したバスが
定刻より五分遅れて発車する
その行き先が本当に帰るべき場所なのか
ぼくらには確信がなかったけれど
本当に帰るべき場所なのだと
願っていたかった
2010/02/08 (Mon)
詩
もずく酢しかない部屋できみは
なくならないもずく酢を
ただひたすら食べ続けている
そんなきみの背中を掻いてあげたいのに
きみには掻くべき背中がない
それよりも前に
ぼくは夕べ深爪をしすぎて
生温かな指先の痛みで
撫でることしかできないのだけれど
きみがもずく酢を食べながら
懐かしそうに故郷の話をしているとなり
ぼくは二人で行くための正確な地図を描く
でも紙も鉛筆もないから
いつまでたってもたどり着かない
あなたも食べていいのよ、と
きみは勧めてくれる
なくならないものを食べると
いつも酸っぱくて悲しい
でもぼくらはただの文字でしかないから
消しゴムで簡単に消えてしまう
2010/02/06 (Sat)
詩
ぼくが遺書を書く
きみがそれを紙飛行機にして飛ばす
そこかしこに光は降り注ぎ
そこかしこに影をつくっている
紙飛行機が草原に不時着する
文字の無い白い翼のところを
蟻が一匹歩いている
2010/02/03 (Wed)
詩
もっと簡単にあなたを愛したい
複雑な手続きなど経ることなく
もっと簡単に
もっと簡略に
僕は僕の皮膚を越えて
外に出て行くことはできない
僕から出て行くのは言葉
それは様々な作業工程の中で作られ
僕の原形はわずかしかない
僕から出て行くのは精子
でもそれはきっと
愛とはちがう
もっと簡単にあなたを愛したい
喩えるものが見つからないけれど
夜中にふとあなたのことを思い出し
目を覚ますときがある
あなたが寝ている
そのとなりで
2010/02/01 (Mon)
詩
光が蒸発していく駅舎
待合室の隅のほうで
一匹のエンマコオロギが
行き場をなくしている
他に行くところのない子供たち
髪にきれいに飾られた赤いリボン
鼻から伸びているチューブ
幸せ、不幸せを感じられるうちは
人はまだ幸せなのかもしれない
誰に謝ってよいのかわからないけれど
僕の生活は幸せに満ちている
飛べない羽がある
語れない唇がある
いのちを守りたい、と
政治家が高いところから演説をする
僕は僕のいのちに言い淀んでしまう
※「いのちを守りたい」
平成二十二年一月二十九日
鳩山総理大臣 施政方針演説より
2010/01/31 (Sun)
詩
キッチンで君と二人
こんにゃくをちぎっていく
娘は一人、二階で
静かに宿題をしている
こうして手でちぎると味がよく染みこむのよ
君が母親から教えてもらったように
僕は君から教えてもらっている
こんにゃくの中心を目指して
ひたすらちぎっていく
その度に中心は移動し
やがてどこかに消えてしまう
ちぎっているようで
実は表面を撫でているにすぎないのだ
こんにゃくについてさえも
僕らは何も語ることなどできない
不必要な言葉に肥え、太り
おそらく人生の折り返し地点など
とっくに過ぎてしまった
鍋がいっぱいになる
それでもまだ
こんにゃくは山積みになってる
これで何を作るの
君に聞くと
わからない
とだけ答える
キッチンが夕闇に沈んでいく
二階の方から鼓動のような
小さな物音が聞こえる
2010/01/29 (Fri)
詩
このこんにゃくを探しています
家族同様に可愛がってました
見かけた方はご連絡ください
という貼紙が電柱にあった
家にあるこんにゃくに良く似ていたので
書かれていた住所のところまで持って行った
玄関に女の人が出てきて
残念ですが違います、と言った
その後ろでは男の人が覗き込んで
悲しそうに首を振っている
知らない人だった
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