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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2009/06/20 (Sat)
 
 
バス停が鳴いている
訪れることのない朝のために

昨日、私はミシンの音を聞きながら
水道管の裏にたくさんの
傷をつけることができた

手をあわせれば
祈りのように見えるけれど
それは許された
たった一つのエゴ

無人のバスを見送る
深夜、私は自分の皮膚から
外に出られない
 
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2009/06/16 (Tue)
 
 
さりさりと幼い
草はいく
草むらの中を
食卓に斜めに降り注ぐ
花のような物体
の匂い
それらはすべて
私の位牌なので
私は残さずに
食べなければならない
生きていくことは
途方もない何かの間違い
豚足のような坂道を駆け下り
夏日の集落へと向かう
さりさりと幼い
草はもう
息継ぎしかできない


2009/06/15 (Mon)
 
 
テツコの部屋で発生した台風が太平洋を北上している間
僕は書き損じた地図記号をひたすら地面に埋め続けている
そのわずかな等高線の隙間を魚色の快速列車が通過し
客車の窓から覗き込んでいるのは多彩な顔ぶれの
生き急ぐゲストの皆さんだ
テツコはできたての人形のような良い香りがする
僕はテツコが好き

テツコはテツコの部屋で
テツコの部屋について考えることに夢中
テツコの身体は卑猥なナマモノだから
頭蓋骨と頭蓋骨の温度が一致しないことに迷惑
下水道に未接続な福祉施設の顛末について語る僕の唇のことは
実写版のソファーにもたれかかったまま
昨日すでに夢に見てしまった
ねえ、テツコ
僕はこんなにもテツコのことが好きなのに
僕らが交わした偽物の些細な約束は
いったい誰を幸せにするというの?

なおも北上する台風はリアス式海岸の上空で
僕らが寝食も忘れて集め続けた旧国鉄時代の切符を
柔らかな白地図のページに変えていく
地面に埋めた地図記号からは玉ねぎの新芽が発芽して
加速された説明不足はますます僕とテツコの境目を曖昧にする
テツコの部屋でゲストが増殖する
テツコの部屋でテツコが増殖する
テツコの部屋でテツコの部屋が増殖する

僕はテツコの部屋が好き
でも多分
テツコの部屋は僕が嫌い
 
 
2009/06/14 (Sun)
 
 
花が咲いている
花の中に海が広がっている
散歩途中の
人と犬とが溺れている
救助艇がかけつける
降り注ぐ夏の陽射し
最後の打者の打った白球が
外野を転々とする
ボールを追って
僕が花を踏み潰す
守れなかった
花も人も犬も救助艇も
なけなしの一点すらも
観客席が眠ったように忙しい
本日の営業時間は終了しました
またのご来店をお待ちしています
審判が音を立てないように
シャッターを降ろす
僕は汚れたことのない手で
テレビのスイッチを切る
  
 
2009/06/13 (Sat)


象の尾に
憎悪がぶら下がってる

冷たい温度で憎しみは
僕の肉に染みついてる

ナメクジの
せわしない足音がする
雨上がりの動物辞典

神様、
席替えしてもいいですか
私からも虹が見えるように
 
 
2009/06/12 (Fri)
 
 
商品棚に並べられた
きれいなゼリー状のものに囲まれて
カイちゃんが笑ってる
時々ふるふると震えて
何も言わない

床に落ちている
貝殻や干からびたヒトデを
二人で拾う
昔はここまで海がきていたのだ
水槽なんか探してないのに
水槽がどこにも見つからないので
カイちゃんはもっと
楽しそうに笑ってくれる

雑誌と雑誌の間から
汚れた空が見える
手にとるものはすべて
怒りや正義と呼ぶには
あまりに無力で小さい
なあ、カイちゃん
そういえば僕らは
昨日死んだんだよな
便利だから
殺されたんだったよな
 
2009/06/11 (Thu)
 
 
提出物の水牛が
ゆったりとした様子で
机の上を
壊している

言葉や数字との戦いに
日々明け暮れ
同級生の一人は
衣替えを終えた次の日
バッタのように逝った
 
日直の人が学級日誌を
さよならで埋め尽くしている間
僕はさっきから他のことで
謝り続けている 

折れた白墨が
担任の手の中で
生臭くなっていく
明日も何某かの
自習があるだろう
 
2009/06/10 (Wed)
 
 
もし私の子供が象だったら
鼻が長かっただろう
耳も大きかっただろう
バスにも列車にも乗れないから
歩いて港まで行き
遠くアフリカまで船で渡っただろう
サバンナに沈む夕日をいっしょに眺めて
小さな歌を歌っただろう
そしてライオンのような肉食動物に
私は食われただろう
 
 
2009/06/09 (Tue)


春が死んでいた
花びらもない
あたたかな光もない
ゼニゴケの群生する
庭の片隅で

地軸の傾きと公転は
果てしなく続き
生きていく、ということは
傲慢な恥ずかしさの
小さな積み重ね

遠くからから聞こえる
子どもの遊ぶ声だけが
葬送曲のように美しく響く
春はそれすらも
拒否するだろう
 
2009/06/07 (Sun)
 
 
海の匂いがする
わたしが産まれてきた
昔の日のように

テレビの画面には
男のものとも女のものともわからない
軟らかな性器が映し出され
母は台所の方で
ピチャピチャと
夕食の準備をしている

父は生きている間
階段の手すりを作り続けた
明日こそ代わりに完成させよう
と思うけれど
この家には最初から
二階なんてなかった

ふすまが誰かの眼のように
少し開いている
その向こうで
夕闇が小さな
産声をあげた
 
 
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* ILLUSTRATION BY nyao *