プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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保育園の窓の外では
世界童話全集が産卵をしています
孵化したばかりの童話は
粘液で汚れしかも鋭い牙があるので
先生たちがきれいに拭いて
牙を一本一本抜いていくのです
暴れて困るものはダンボールに詰めて
裏の川に流します
欠番になった童話は
園長先生が代わりに話を考えます
誰も死なないし
悪い人は必ず最後に良い人になるのですが
園児たちは春のような欠伸をし
拾ってきた牙をこっそり
口の中で転がしたりします
世界童話全集が産卵をしています
孵化したばかりの童話は
粘液で汚れしかも鋭い牙があるので
先生たちがきれいに拭いて
牙を一本一本抜いていくのです
暴れて困るものはダンボールに詰めて
裏の川に流します
欠番になった童話は
園長先生が代わりに話を考えます
誰も死なないし
悪い人は必ず最後に良い人になるのですが
園児たちは春のような欠伸をし
拾ってきた牙をこっそり
口の中で転がしたりします
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亀を背負って
懐かしい人の苗字を呼びながら
塩を舐め続ける
水が飲みたい
+
かまきりの新しい
亡骸を
司書は黙って
見ている
+
カンガルーが直立したまま
波音を聞いている
尻尾の先には
民家が一軒ある
+
かなしみに似たものを
鍋に入れて
静かにあなたが
味噌を溶いてる
+
カーテンが風に
なびく
島根県の
皆川さんの八畳間で
+
カナカナが
鳴き始めた
親戚のおばさんは
ミンミンゼミが、と書いた
+
かなしみ、と
名づけられた海を
白いゼッケンをつけた父が
道と間違えてどこまでも走っていく
懐かしい人の苗字を呼びながら
塩を舐め続ける
水が飲みたい
+
かまきりの新しい
亡骸を
司書は黙って
見ている
+
カンガルーが直立したまま
波音を聞いている
尻尾の先には
民家が一軒ある
+
かなしみに似たものを
鍋に入れて
静かにあなたが
味噌を溶いてる
+
カーテンが風に
なびく
島根県の
皆川さんの八畳間で
+
カナカナが
鳴き始めた
親戚のおばさんは
ミンミンゼミが、と書いた
+
かなしみ、と
名づけられた海を
白いゼッケンをつけた父が
道と間違えてどこまでも走っていく


耳の中に何か忘れ物をした気がして
振り返ってみるけれど
耳の中に帰る道を忘れてしまった
どうにかしようと耳を澄ましても
聞きたくない音や言葉ばかり聞こえてしまう
まもなく桜がきれいに咲き始めるだろう
忘れ物を見つけることができれば
咲かない桜の美しさも思い出せるのに
振り返ってみるけれど
耳の中に帰る道を忘れてしまった
どうにかしようと耳を澄ましても
聞きたくない音や言葉ばかり聞こえてしまう
まもなく桜がきれいに咲き始めるだろう
忘れ物を見つけることができれば
咲かない桜の美しさも思い出せるのに


階段を上っていく
ホールには明り取りの窓から差し込む光が溢れ
かつてそれは観葉植物の大きな葉を照らしたこともあった
河口の近くで手をつなぎバスを待っていたとき
足元には確かに雨ざらしになった動物の形の玩具があったはずだが
届かないものを私たちは祈りと呼んだ
ドアを開け屋上に出ると
着古した寝巻きがもう一度きれいに洗濯され
空に向かって羽ばたく訓練をしている
そのように今年もまた春がやってきて
あなたの好きな種類の花がたくさん咲いた
と、独白はそこで終わり
男はひとりベッドに腰掛け外を見ている
ホールには明り取りの窓から差し込む光が溢れ
かつてそれは観葉植物の大きな葉を照らしたこともあった
河口の近くで手をつなぎバスを待っていたとき
足元には確かに雨ざらしになった動物の形の玩具があったはずだが
届かないものを私たちは祈りと呼んだ
ドアを開け屋上に出ると
着古した寝巻きがもう一度きれいに洗濯され
空に向かって羽ばたく訓練をしている
そのように今年もまた春がやってきて
あなたの好きな種類の花がたくさん咲いた
と、独白はそこで終わり
男はひとりベッドに腰掛け外を見ている


公園の砂場で
車のおもちゃが死んでいた
一度も生きたことがないのに
もう自ら動くこともないのだ
近所の庭に咲く
キンモクセイが香っている
今まで見たことのある死体と同じように
嫌な匂いさせることなく
けれど触ればたぶん冷たい
車のおもちゃが死んでいた
一度も生きたことがないのに
もう自ら動くこともないのだ
近所の庭に咲く
キンモクセイが香っている
今まで見たことのある死体と同じように
嫌な匂いさせることなく
けれど触ればたぶん冷たい


たくさんの花を枯らした
サボテンやアロエも枯らしたし
ケフィアやカスピ海ヨーグルトも駄目にした
それでも命は大切にしなければならないからと
小さな虫はその形や色が嫌いでも
なるべく殺さずに逃がした
そして他の人が殺してくれた動物の肉は
牛や豚や鶏や魚に拘らず好んで食べた
僕らの中に咲いていた
たくさんの花も枯らしたけれど
枯らさなかった花は大事に育てた
絆の太さは必ずしも均一じゃない
信頼することで細くなったところや
諦めることで太くなったところもある
あなたに会えて良かった、と
誰に言っても恥ずかしくない
あなたに会えて良かった
サボテンやアロエも枯らしたし
ケフィアやカスピ海ヨーグルトも駄目にした
それでも命は大切にしなければならないからと
小さな虫はその形や色が嫌いでも
なるべく殺さずに逃がした
そして他の人が殺してくれた動物の肉は
牛や豚や鶏や魚に拘らず好んで食べた
僕らの中に咲いていた
たくさんの花も枯らしたけれど
枯らさなかった花は大事に育てた
絆の太さは必ずしも均一じゃない
信頼することで細くなったところや
諦めることで太くなったところもある
あなたに会えて良かった、と
誰に言っても恥ずかしくない
あなたに会えて良かった


振り回せるものを探して歩く
軽すぎれば振り回す充実感がないし
重すぎれば肩や腰に負担がかかるから危ない
道路の上にも
道路に接するいろいろな敷地や排水路にも
振り回すのに丁度良いものは見つからない
長すぎれば人に当たるから危ないし
短すぎれば振り回す充実感がない
向こうから紐のついた玩具を振り回しながら
幼い男の子が走ってくる
丁度良いみたいにたくさん振り回してくる
振り回している、今、というこの日時は
他の誰に奪われることなく
簡単に忘れられてしまうのだろう
間もなくその靴にも日没が訪れる
(付記)
男の子が振り回していたのは
玩具とは別のものだったかもしれない
軽すぎれば振り回す充実感がないし
重すぎれば肩や腰に負担がかかるから危ない
道路の上にも
道路に接するいろいろな敷地や排水路にも
振り回すのに丁度良いものは見つからない
長すぎれば人に当たるから危ないし
短すぎれば振り回す充実感がない
向こうから紐のついた玩具を振り回しながら
幼い男の子が走ってくる
丁度良いみたいにたくさん振り回してくる
振り回している、今、というこの日時は
他の誰に奪われることなく
簡単に忘れられてしまうのだろう
間もなくその靴にも日没が訪れる
(付記)
男の子が振り回していたのは
玩具とは別のものだったかもしれない


公園のベンチに腰をかけ
新聞を読む初老の男の人の手が
小刻みに震えている
新聞から文字がひとつ
またひとつと落ち
足元で意味とは別のものとなった
そのようにして人は幸せになっていくのだ、と
病院の待合室で聞いたことがある
男の人は新聞を折りたたむと
脇に挟み立ち去った
ベンチにはどこかの身体の一部と思われる
丸い影が置き忘れられている
それもまた幸せになるための手続きであると
どこかでまた聞くかもしれない
新聞を読む初老の男の人の手が
小刻みに震えている
新聞から文字がひとつ
またひとつと落ち
足元で意味とは別のものとなった
そのようにして人は幸せになっていくのだ、と
病院の待合室で聞いたことがある
男の人は新聞を折りたたむと
脇に挟み立ち去った
ベンチにはどこかの身体の一部と思われる
丸い影が置き忘れられている
それもまた幸せになるための手続きであると
どこかでまた聞くかもしれない


大通りがあるでしょう
そうまっすぐのアスファルトの大通り
右側にショッピングセンターのあるあの大通りよ
その大通りをまっすぐ行って
どこもカーブしてないからまっすぐ行って
三つ目の信号を左に曲がって左折
ちがうちがう、左に曲がってすぐ左折するんじゃなくて
左折は一回、つまり左に曲がるってこと
そうじゃなくてそれは二つ目の信号
一、二、三、と数えた三つ目の信号を左に曲がって左折
それで、またしばらくまっすぐ道はアスファルトでできてるから
その上をまっすぐ行ってそうすると
右手の方に潰れたサカモトがあるでしょ
そう潰れたサカモト、サカモトは潰れたの
この間の春の早い日だったけどほら、あの社長が婿養子だったでしょ
そう、婿養子だったのよ、それに大人だからいろいろあったみたいで、
でその潰れたサカモトが右手の、つまり右利きで箸を持つほうね
左利きなら茶碗を持つほうだけど、そうそうそれで潰れたサカモトの
前をもう少しまっすぐ行って道はアスファルトだから
その上をまっすぐ行ってそうすると昨日山下さんの立っていた角があるから
それを右に曲がって右折、だから右に曲がるのは一回だってば
右折は右に曲がるということ山下さんが昨日たってたから
今も立っているとは限らないけど、山下さん右手にジョウロ持ってたし
もしいなくても右に曲がって右折よ、右折
またアスファルトの道が続いて道は細くなるけどアスファルトだから
もうしばらくまっすぐ、まっすぐっていうのはものの言いようで
何度か右左にカーブもしてるけど、カーブするときはカーブをきちんとして
ほらアスファルトだからその上を言葉にすればまっすぐなのよ、まっすぐ
家が何軒かあって正確に覚えてないから申し訳ないけど
人が住んでてそれぞれにそれぞれの生活があってみんな生きたり死んだり
それを大変なことというと世の中大変ことだらけになっちゃうから
何軒あるかわからないけど門扉の前を通って後を通ると庭の中に
入っちゃうからそろそろチューリップも綺麗にさく季節だから
花壇があってチューリップが植えてあれば見ることもできるかもしれないけど
その間も人は生きてたり死んでたりしてて怒られないように門扉の前を通って
何軒あるか忘れたけどアスファルトをもう少しいくと
漢字で「MIZUSAWA」と書かれた表札があるから、そう「MIZUSAWA」
それは表記の問題であって普通に漢字で「MIZUSAWA」だから
門から入って裏門でもいいけど、裏門に行くにはいちど門から入っていくのが
近道だから門の方がいいわ、で玄関のドアを開けてその頃にはもう
下はアスファルトじゃないからフローリングの床を歩いて左側の部屋を左折
そう左にある部屋に入るってことなんだけど
人が布団をひいて寝ているから下は畳でアスファルトじゃないから
その人の手を握って
外皮から体温を受け取って
その人はあなたの体温を受け取るはずだから
そうしたらあなたの形を伝えて
できるだけたくさん
伝えて
そうまっすぐのアスファルトの大通り
右側にショッピングセンターのあるあの大通りよ
その大通りをまっすぐ行って
どこもカーブしてないからまっすぐ行って
三つ目の信号を左に曲がって左折
ちがうちがう、左に曲がってすぐ左折するんじゃなくて
左折は一回、つまり左に曲がるってこと
そうじゃなくてそれは二つ目の信号
一、二、三、と数えた三つ目の信号を左に曲がって左折
それで、またしばらくまっすぐ道はアスファルトでできてるから
その上をまっすぐ行ってそうすると
右手の方に潰れたサカモトがあるでしょ
そう潰れたサカモト、サカモトは潰れたの
この間の春の早い日だったけどほら、あの社長が婿養子だったでしょ
そう、婿養子だったのよ、それに大人だからいろいろあったみたいで、
でその潰れたサカモトが右手の、つまり右利きで箸を持つほうね
左利きなら茶碗を持つほうだけど、そうそうそれで潰れたサカモトの
前をもう少しまっすぐ行って道はアスファルトだから
その上をまっすぐ行ってそうすると昨日山下さんの立っていた角があるから
それを右に曲がって右折、だから右に曲がるのは一回だってば
右折は右に曲がるということ山下さんが昨日たってたから
今も立っているとは限らないけど、山下さん右手にジョウロ持ってたし
もしいなくても右に曲がって右折よ、右折
またアスファルトの道が続いて道は細くなるけどアスファルトだから
もうしばらくまっすぐ、まっすぐっていうのはものの言いようで
何度か右左にカーブもしてるけど、カーブするときはカーブをきちんとして
ほらアスファルトだからその上を言葉にすればまっすぐなのよ、まっすぐ
家が何軒かあって正確に覚えてないから申し訳ないけど
人が住んでてそれぞれにそれぞれの生活があってみんな生きたり死んだり
それを大変なことというと世の中大変ことだらけになっちゃうから
何軒あるかわからないけど門扉の前を通って後を通ると庭の中に
入っちゃうからそろそろチューリップも綺麗にさく季節だから
花壇があってチューリップが植えてあれば見ることもできるかもしれないけど
その間も人は生きてたり死んでたりしてて怒られないように門扉の前を通って
何軒あるか忘れたけどアスファルトをもう少しいくと
漢字で「MIZUSAWA」と書かれた表札があるから、そう「MIZUSAWA」
それは表記の問題であって普通に漢字で「MIZUSAWA」だから
門から入って裏門でもいいけど、裏門に行くにはいちど門から入っていくのが
近道だから門の方がいいわ、で玄関のドアを開けてその頃にはもう
下はアスファルトじゃないからフローリングの床を歩いて左側の部屋を左折
そう左にある部屋に入るってことなんだけど
人が布団をひいて寝ているから下は畳でアスファルトじゃないから
その人の手を握って
外皮から体温を受け取って
その人はあなたの体温を受け取るはずだから
そうしたらあなたの形を伝えて
できるだけたくさん
伝えて


足がつった
魚を釣った
痛さにのたうつ小指が
餌に見えたのか
少なくとも自分の足の小指くらいは
何をも傷つけないと思っていたのに
魚は同じようにのたうってる
口をこじ開けて
引っ掛かっているところをはずす
傷を負って
これから先長くはないだろう
せめて空気の一番遠くまで行けるように
窓から放す
痛まない
もうこむら返りも足の小指も
魚を釣った
痛さにのたうつ小指が
餌に見えたのか
少なくとも自分の足の小指くらいは
何をも傷つけないと思っていたのに
魚は同じようにのたうってる
口をこじ開けて
引っ掛かっているところをはずす
傷を負って
これから先長くはないだろう
せめて空気の一番遠くまで行けるように
窓から放す
痛まない
もうこむら返りも足の小指も