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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
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56
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男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2024/03/30 (Sat)
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2004/09/13 (Mon)
本日はお日柄もよろしく
押入れの中は相変わらずのじめじめ模様が続きます
いつまでこの暗闇の中でかくれんぼをしなければならないのか
親方にも僕にもよくわかりません
ただ、かび臭い布団や枕に囲まれたり包まれたりしていると
親方の英語の発音もいつもより透きとおっている気がして
どうやら自分が鬼であることを忘れておられるようです

親方はカンナの使い方もピアノの弾き方も教えてくれませんが
親方、数えてください、と言うと
いち、にい、さん
親方は定理の説明を中断して
暗闇に溶けていくようにゆっくり数え始めます
きっと親方の唇は正確に動いているのでしょう
僕には無理なことだし、その必要もないことです
親方、こんなことを考える僕は生徒に喩えるなら
良くない生徒なのかもしれません

ふすま一枚隔てた向こう側はハイウェイで満たされて
緑色のスポーツカーや何やらも軽快に走っている頃と思います
気管支の弱い僕の咳がまた一つ増えるわけですが、親方
それは忘れられないということとどう違うのでしょうか
たとえば親方が好きだった整然と並ぶ故郷の模型
親方が愛していた綺麗な声で鳴くカエルたち
そしてその一匹一匹を僕が死なせてしまったこと
なども

親方は「もういいかい?」とだけ訊きます
僕の「まあだだよ」はこの暗闇では「もういいよ」と同じことです
顔が見えなくて良かった
それでも親方の変なところにある黒子を思い出して
ついつい笑ってしまうのだけど
乙女の純情みたい
という言葉で恥ずかしがったのは僕ではなく
親方の方でしたね

お日柄のよろしい一日の終わりを告げる音楽が流れ
扉や窓が閉じられる時刻となりました
親方がふすまを開けると光が目に痛くて
かくれんぼの終わりを知らなかったのは僕だけでした
知らないことは知らなかったという事実に気づいた後で
いつもそのことに小さく鳴いてしまう
親方はゆっくりとスポーツカーに近づいていきます
やはりまだ僕には乗れません
親方、そこから僕の姿が見えますか
決して振り返りもしないで


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