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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
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57
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男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2010/12/25 (Sat)


バスが山道のカーブを曲がりきれずに
ガードレールと  
摂食した
バスとガードレールが何を食べているのか
ここからはよく見えなかった
ただ黙々と摂食を続けていた
いっしょにバスに乗っていた昆虫たちは
だらしなく開いたドアや窓から
樹液などを舐めに飛んでいってしまった
わたしは一人
ひとつという言葉の方が似合うかのように
最後部の座席に取り残されていた
お腹が空いて食べられるものを探すと
ポケットの中にパンの耳があった
自分の耳のような食感がしたけれど
自分の耳など食べたこともないし
もう残っているものは何もなかった
 
 
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2010/12/24 (Fri)
 
 
隙間から押し寄せる波が
文庫本の栞を
何に使うのだろう
一枚さらって
もとの海に戻っていく

生き物の柔らかな陰影
そのようなものがあると
いつまでも
触れていたくなる

がらんどうの口は安らかに崩れ
声のない言葉が
窓の向こう側へと沈む

ただいま
おかえり

それだけで
済むはずだったのに
  
 
2010/12/23 (Thu)


病院の待合室で
ヒマワリたちがソファーに並んで
自分の名前が呼ばれるのを待っている
けれどヒマワリたちには
個別の名前が無いので
何時まで経っても呼ばれはしない
ヒマワリは次々と入ってくる
ソファーに座れないものは
公衆電話の脇や廊下に
立ったまま咲いて待っている
一面のヒマワリ畑を抜け
個別の名前を呼ばれた人が
順番に診療室へと向かう
季節が終りやがて枯れると
どこからか小動物などがやってきて
種を巣穴に運び
冬支度を始める
 
 
2010/12/22 (Wed)
ブーツを仕分ける
仕分けまくる

 「ブーツの仕分けに関する判断基準」(抄)
  第三条 良いブーツ(以下「良いブーツ」という。)は天国を歩ける
   ブーツとする。
  2 悪いブーツ(以下「悪いブーツ」という。)は天国を歩けないブ
   ーツとする。
  3 第一項及び第二項にある天国とは、「天国等の指定基準」第
   二条第一項に規定された天国をいう。

これ、天国を歩けるから、良いブーツ
これ、天国を歩けないから、悪いブーツ

ここは天国ではないので
人々は悪いブーツを履いて歩いている
走っている
止まっている
這いつくばっている
だからみんな、悲観することはないし
モヒカンにする必要もない
もちろん好みの問題だから
モヒカンにしても構わない
ここは天国ではないから
天国ではないのだから

ブーツを頭に被っても構わないし
ブーツをブー津と表記しても
ブートゥと発音しても構わない
ブートゥの山に埋もれて泣いていた人が
ブートゥをかきわけて、かきわけて
頭を出すときこそが
誕生の瞬間
だからもっと仕分けることができる
仕分けまくることができる

これ、良いブーツ
これ、悪いブーツ

中に蚊がいることに気づかず
ブーツを履いて四か所も刺された義理の弟は
昨晩、結婚してすぐ
新婦とともにブーツの山に埋もれて
泣き始めるのだった

これ、とても良いブーツ
これ、とても悪いブーツ

ブーツを仕分ける
仕分けまくる
でも、どんなに仕分けまくっても
ブーツを廃止することはできない
ブーツは入れ物だから
命を受け止める
小さな入れ物なのだから
 
 
2010/12/20 (Mon)
 
 
瞬きが景色をつくる
壁面に反射する光
戻ってくる
街路樹の梢たち
人々の独白は
磁器を数える単位となり
いつまでも終わらないので
扉は貧しい影の所有者となる
そして形はいつも
識別するための記号に過ぎない
隙間の空いた風を吸い込み
気がつく
私を組成するものは
砂鉄であると
  
 
2010/12/19 (Sun)
 
 
歯磨きが終わり
コップを手に取ると
何かのゼリーのような感触がして
指が中へと沈んでいく
そして右手は
コップそのものになってしまう
これから歯ブラシは
左手で持たなければいけない
そう思って左手を見ると
すっかり歯ブラシになっている
ブラシの部分が反り返るなど
駄目になっても交換できるように
側にあった取扱説明書を
丹念に読み始める
 
 
2010/12/18 (Sat)
 
 
鞄を探していた
たった一つの鞄だった
大切にしていた鞄だった
心当たりのあるところは
すべて探した
鞄の中も探してみたのに
布製のハンカチや
プラスチック製の文房具など
必要だけれど
あまり大切ではないものしか
見つからなかった
そうこうしているうちに
すっかり夜が明けたので
鞄を押入れにしまう
今、押入れを開ければ
そこにある気がしてならない
  
 
2010/12/16 (Thu)
 
 
木に実っていた最後の世界が
その重さに耐え切れず
落ちる
あっ、という誰かの叫びは
空気を震わせることなく
そのまま大気中へと浸透していく
店頭に並んでいた時計の化石を
少年がそっとポケットに入れる
小さな罪悪感の海では
銀色の魚が群れて泳ぎ
思考で生きている巻貝の一種が
舐めるように水底をはっている
奥まった日当たりの悪い書斎で
あなたは昔の咳をする
障子を少し開けると
細く柔らかい一筋の光
机の端に射し込んでいるのが
今でもわかる
  
 
2010/12/14 (Tue)
 
 
国道のアスファルトを
食べている様子が映像として流れる
「今朝のカバ」のコーナー
テレビの表面はいつも
山奥にある沼のように寂しいので
スイッチを入れれば
色とりどりの
本当や嘘のことを見せてくれる
ベテランらしき男性アナウンサーと
まだ若い女性アナウンサーが
こちらの方を見ながら
楽しそうに話をしているけれど
すべて聞こえてしまっている
ほんの一瞬、コメンテーターの半魚人が
悠々とお茶を飲んでいる場面が映る
よくある些細な放送事故
些細な事故
けれど、些細な事故であっても
打ち所が悪ければ
生きているものですら危ない
リモコン
モリコン
並べかえると嫌味がなくて
分解してみる
星占いのコーナーが始まり
丁寧に星座のことを教えてくれる
今日の私は双子座だそうだ
もたもたしているうちに
コマーシャルになる
精巧な偽札がたくさんあれば
買えるものばかり売っている
一日中晴天なので洗濯物が良く乾くでしょう
それではエンディングをお楽しみください 
 
 
2010/12/13 (Mon)


人が地下道の階段を下りて行く
地下道の中には
何も無いけれど
ただ、向こう側に行きたい
というだけで
地下道へと下りて行く
やがて階段を上り
再び地上に出たとしても
同じ空の下
同じ季節があるだけだというのに
人は賢くて寂しいから
向こう側へと行きたがる
 
 
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* ILLUSTRATION BY nyao *