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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
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58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2004/12/19 (Sun)
*は空に飛び出すと
*は*であることがいつも不思議なようだ
僕は両腕を精一杯伸ばして
それから海を囲って
さざ波にブリキ色の半月を映してみる
*は丁寧に覗き込み
綺麗だねと言う
僕も少し綺麗だと思う
*が*をゆっくりと通過していくのを見ながら
僕はまだ僕を追い越せない
鮮やかに彩色されたいくつかの砂糖菓子を
僕は埋めた
上着の端が汚れている
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2004/12/17 (Fri)
男は書店で物理の参考書を買った。大学を卒業し就職して既に十数年が経っている。文系出の男にとって物理など縁遠いものであったし、特段の興味があったわけでもない。それでも男は物理の参考書を買ってしまった。「~してしまった」という衝動はきっと誰にでもあることだろう。正確に言うと「~してしまった」というのは衝動ではなく何らかの衝動によりなされた行為について後悔をもって評価することであり、それではその衝動をどのように表現したら良いのかということを考えた時、言葉というものはいつも脆弱で危うい。
それはそれとして男はその参考書のありかを持て余している。男は小学生の頃、同級生たちが持ってくる色とりどりのいい匂いのする消しゴムが欲しくて町の小さな文房具店で万引きをしたことがある。まんまとその犯罪は成功したわけであるが、良心の呵責からだろうか、戦利品を学校に持っていくことも出来ず、かといって家の者に見つかることを考えるとごみ箱に捨てるわけにもいかず、机の引出しの一番奥に仕舞い込み、二度とその消しゴムを見ようとはしなかった。その時の途方もない持て余した感覚にどこか似ていた。ただ違っていたのは、しばらく迷った挙句、男は持て余したそれを頁を一度もめくることなくにコンビニエンスストアの店先にあるごみ箱に捨てたことだ。無論、可燃ごみの方に。
その夜、男は寝床の中でまだ見たことのない生物(それは恐らく深海、若しくは高い高い空の果てに住んでいる)の輪郭を指でなぞった。見たことのないその生物は実体を有しておらずいわば概念としてのみ男の想像の中で存在した。その生物の鳴き声はやはり概念でしかなくそれは耳には響くことは無かった。その見たことの無い生物と、例えば現在居間にあるであろうリビングチェアのシルエットとの差異が男にはよくわからなかった。いや、本当はわかっている。翌朝になればごみ箱に捨てた物理の参考書がゴミの収集業者によりしかるべき場所へと運ばれることも。
さて、と突然にこの物語は終了する。人々が「物語」と称するそのほとんどすべては事実の断片にすぎない。男は参考書を捨てたコンビニで缶コーヒーと握り飯を買い、家では何度か屁をし、別れた恋人に泣きながら未練がましい手紙を書いたかもしれない。しかし、その一分一秒のすべてを物語は語ることはしない。もっと早くこの物語を終わらせても逆にあと百行続けたとしても何を語ることができるというのだろう。あなたはいつでも席を立って良かったのである。
2004/12/16 (Thu)
夜が白々と明けると通勤が俺を捲くし立て俺は走り
俺は走るが走っているのは通勤快速だ
くそっ!通勤だ
くそっ!快速だ
身動き取れないそれでも走ろうとする俺の背中にボインちゃんのボインが
ポヨンポヨンと、俺のツボを刺激し、通勤魂を激しく揺さぶり
熱を発し、息を荒げ、
行け!通勤
進め!快速
少年時代、俺は知っている川の名をひたすらノートに書き続けた
知っている川の名を書き尽くしたとき、俺は地図帳を広げ
熱を発し、息を荒げ、
知らない川の名をノートに書き続けた
青春時代と一言で総称される時代
俺はその川の名を一つずつ消しゴムで消していった
通勤快速だ!
昼休み妻の作った弁当の飯粒を数え続け青い空に卒倒していく中堅社員だ!
駅に停車するごとに通勤快速は人を吐き出し人を吸い込み
呼吸、呼吸、呼吸のリズムで
俺ははぐれないように俺自身を点呼する
くそっ!ボインちゃん
貧しい者が乗り込む豊かな者が乗り込む
豊かな者は貧しい者に手を差し伸べない貧しいものはただ欲する
俺は貧しいものにも豊かなものにもなりたくはない
俺の口は言葉を回避し放棄しただ嘔吐するためだけの器官に成り下がる
口の中に広がるのは夕べ食った明太子のプチプチだ!
やがて通勤は波となりまくら木のひとつひとつに俺の名を刻む
俺は通勤快速を愛し通勤快速のために死んでいく
このままどこに行くのかなんて考えないことだ


2004/12/10 (Fri)
あなたが徐々にしなり
あなたの腕がしやかに湾曲し始め
それが良いことであり
あるかのようにあなたの腕の湾曲を
私のここから私は俯瞰する

キトキト、糸の車
からまりほつれ
てキトキト
湾曲し始めたあなたの一部が腕として
濡れたまま夏の始めそして
終わりへと小走りに過ぎていく
腕の発疹は昨晩私が潰しておいた

羽化したばかりのゆすりか
色を思い出せずにまたしなり湾曲する
裏表紙の近くあなたの
キトキト
私はやがて位置を持たない
2004/12/03 (Fri)
夕暮れ時のトイレで俺は
花子を殴る
ドリフの大爆笑のオープニングテーマを高らかに歌い
俺は花子を殴り続ける
だって、お化けだぜえ、恐怖だぜえ、恐いんだぜえ
俺は花子を殴る
花子は微笑み俺を殴り返さない
俺の手は痛くない
俺はその手で何度も後出しジャンケンをしてきたが
俺の手は痛まない
俺 殴る 花子 激しく 殴る 花子 微笑む 花子
激しく 微笑み 激しく 殴り 返さない 花子
花子が水について独白し始めると
花子の手紙は静かに文字化けしていく
ドリフの大爆笑は既に末端の細胞まで浸透してしまった
それでも俺は高らかに歌いつづけ
爪の隙間から溢れ出そうとする仲本工事
を俺は殴る
違う 花子
俺が殴るのは花子
季節がすべておまえの名と一字違いだったらいい
ファミレスのメニューはすべて俺の名と一字違いだった
順に料理を注文し 食べ 飲み 短くなった
足の分まで
俺は花子を殴る
何故 殴らない 俺を 花子 生きる ことは とても 
楽しい 花子 楽しい 何故 花子 こんなにも 花子
ドアの隙間から出て行こうとする半分のブー
それでも俺は花子を殴り続ける
痛まぬ拳で 花子
微笑むのはいつもおまえだけだ


2004/12/01 (Wed)
国籍不明の輸送船がファミリーレストランの奥まった席で座礁した頃
辰巳台東三丁目のバス停に漂着した流れ星は音もなく発光し
あなたはまだ客室乗務員になりたての綺麗な夢の中
僕は無菌室の白いシーツの上 クリーンなサラダを食べる
おまえらも食べろ

おはようございます 出発の朝です おまえらも僕も
厳選されたクリーンな素材は朝一番の悲しみに似た喜び
終着すべきところはあやふやな形状のままイメージ
おまえらが首からぶら下げた三千円のネクタイには幾千の鞭毛や産毛びっしり
あなたを起こそうとするな その三千円のネクタイで どうかおまえら

出発の妨げとなる派手なシャツはお控えください
クリーンに あくまでもクリーンにひとつお願いします おまえら いや 僕も
料金所に停車する度に名前を失っていく僕 いや おまえらと僕と
ファースト・ネームたちはまだ眠っているあなたのミドル・ネームとなってしまった
僕は身代わりです 身代わりとして食べます クリーンに あくまでもクリーンに
それでも何と人は簡単に笑うことができるんだろう と 僕
いやいや おまえらも僕もおまえらも

目を覚ましたあなたは遮光カーテンを開ける
光が溢れたテーブルの上にはサラダ
サラダのために作られたサラダを見て少し微笑むかもしれない
ドレッシングを取りにキッチンへと行く
あなたの一日はクリーンであることが約束されている

2004/11/28 (Sun)
交差点で白いす・うどんに呪いをかけている
たくさんのうどん屋の店主
ただひたすらに紙を排出する事務機器の前
笑いすぎて釣り合いがとれなくなった僕の右と左側は
吸い込まれていく 具の無い麺汁の一番奥まったところ
輪転機で刷り込まれた自分の生命に似たものたち
刷り込んで刷り込まれて擦りむいてしまった
僕のまだ幼い脛のあたり
す・うどん もちもちとして 僕を侵食する


魚眼レンズで覗き込む明るい午後はそこはかとなく脱線
いたるところのステイションで僕は列車を乗り換える
食堂車のメニューは上から す・うどん す・うどん
朗読する声も晴れやかに朗らかに軽やかに透明な空気の振動
ってバカ 忘れろ 僕が僕であることを
僕を侵食する白いす・うどん す・うどん ですもの
トイレに引きこもったまま出てこない兄の名を順番に呼ぶ少女は
昨日 朝礼の最中に貧血で倒れました
それは蛇使い座の僕の妹


敵のいない兵士が宿営地で禁止されている笑い方をすると
瞬く間にニュースとなりうどん屋のメニューの隅々まで配信される
そんな街でいつまでもくっつかない
お腹と背中を抱えて僕は笑い続ける
その隣で笑い損なっている妹
青い空は膨張していると不謹慎な発想の途中
とてつもなく す・うどん
とほうもなく す・うどん
さよならを呟くとまた形成される底なしのす・うどん


何でもいいですから
具を入れてください

2004/11/24 (Wed)
薄透明の液体の中で僕の体積が膨張する
と PMとAMは分解され
いつか見たことのある景色へと再生が始まる
沈殿していく毛髪という毛髪 関節という関節
は祭の夜のような雄叫びをあげるが
そのすべてを視線がかき消してしまう
言葉は時としていくつかの選択肢である
僕が ではない
液体が!
僕を直視している
2004/11/19 (Fri)
美味しい美味しいブブンヤキソバを君は作っている
キッチンは甲状腺のような白い匂いに包まれ
外の方はきっともっと広い世界が連綿と続き
幾多の人々が美味しい美味しいゼンブヤキソバを
美味しい美味しいと食べているのだろう

僕らはいつまでも部分であるということ
いつまでも全部にはなれないということ 
それは硬く 甲殻類の甲羅のように硬く あるいは
裏の動物園に潜む優しい目をした凶暴なゴリラの頭蓋骨のように硬く
もしくは病院の待合室でいつまでも誰かを待ち続ける男の
足にできたウオノメのように硬く もっと硬く
でも もじゃもじゃ

白血球の中を吹き抜けていく風の強度なら負けないぞ
君が腕まくりをすると わいいん わいいん
刃のこぼれた鋸の音が強く強く鳴り響く と
言っていたかつての知り合いは他の知り合いを探しにいったまま
帰ってこない 冷蔵庫にはブブンヤキソバの一部分 腐りかけて
まだ腐っている最中

麺の中で繰り返される小規模な分裂と結合
僕らの言葉の中心は恐ろしいまでの真空
良い形の赤血球が通過していく という
僕らの通過儀礼は世界によって断罪される!
の瞬間雨量は雨量計の針を振り切ってどこまでも逃走

滑走路の直中 歌を忘れて飛び立てない手漕ぎボート
そのオールももじゃもじゃのブブンヤキソバ
なんてことだろう君 僕は君のことが好きでたまらないよ
と囁いて行く一陣のもじゃもじゃ
僕らはいつまでも部分でいつまでも全部にはなれない
出来上がったブブンヤキソバを美味しい美味しいと食べる
残りは全部 言葉を失ったまま風の音ばかりが吹く明日の弁当箱へ


2004/11/12 (Fri)
触覚の先端ではもう無くしたての繊細な産毛
 幾千とおりの声が転回を始めている
  その閃光は深く深く脳を焦がし
   僕の両手から溢れるハチミツを虹色に染め
    やわらかく着地を始める そして舐める 

 薄透明な羽に浮かぶ葉脈のような羽脈
  ジョン と呼んで アン と犬は吠えた
   犬の名はジョンではない
    何と呼んでも アン と吠える犬
     ジョン 淋しいジョン
      シカゴの埃くさいマンションの一室で朝を待ちきれずに
       大好きな四月の暗闇の中にダイブしたジョン

  複眼を構成する眼 そのすべてに僕は映っているか
   重たい瞼に耐えかねて世界を遮断してはいないか
    たとえば恐怖 たとえば怒声 たとえば懇願
     僕は映っているか 僕は見ているか
      たとえばダイブ ジョンのダイブ
       誰も見届けなかった 淋しいジョンのダイブ

   花を見つけられないミツバチが柔らかな空気のなか
    透明なコップの縁にとまっている
     ジョンと呼んでも返事をしない それはもっと別の音
      僕を刺して絶命していったたくさんのミツバチたち
       かつて僕はその毒嚢で溺れたかった
        気がつけばジョンもミツバチも消えている
         コップから僕がこぼれ始める

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* ILLUSTRATION BY nyao *