プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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ありったけの小銭を持って
僕らはオークションに出かけた
実家が火事なんです
と泣きじゃくる男の人に競り勝ち
三匹のサワガニを落札した
一匹は僕が名前をつけて
一匹は彼女が名前をつけ
もう一匹は帰りの地下鉄の中で
行方を見失ってしまった
駅の係にその旨を伝え
ついでに火事のことも聞いてみたが
上司に相談してきます
と言ったきり姿を見せない
何かの間違いだったのかもしれないねえ
ということになって
以来、僕らの間で火事の話はタブーとなった
一方、二匹のサワガニはといえば
水槽においた石の陰のようなところから出てこようとしない
そんなに好きならば、と
陰のようなところを増やしてやると
サワガニはこっちの意図を見透かしているように
冷ややかな目で見るものだから
何だか気まずい雰囲気になって
やがてサワガニの話もタブーになった
それからしばらくして
見つかったとの連絡があり駅の係に行くと
サワガニはきれいに干からびていた
その頃には
他の二匹もとうに生きてなかった
僕らはオークションに出かけた
実家が火事なんです
と泣きじゃくる男の人に競り勝ち
三匹のサワガニを落札した
一匹は僕が名前をつけて
一匹は彼女が名前をつけ
もう一匹は帰りの地下鉄の中で
行方を見失ってしまった
駅の係にその旨を伝え
ついでに火事のことも聞いてみたが
上司に相談してきます
と言ったきり姿を見せない
何かの間違いだったのかもしれないねえ
ということになって
以来、僕らの間で火事の話はタブーとなった
一方、二匹のサワガニはといえば
水槽においた石の陰のようなところから出てこようとしない
そんなに好きならば、と
陰のようなところを増やしてやると
サワガニはこっちの意図を見透かしているように
冷ややかな目で見るものだから
何だか気まずい雰囲気になって
やがてサワガニの話もタブーになった
それからしばらくして
見つかったとの連絡があり駅の係に行くと
サワガニはきれいに干からびていた
その頃には
他の二匹もとうに生きてなかった
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笑いたくなければ
あなたはいつまでも笑わなくとも良い
右手からどうぞ、なんて看護師の言葉など
僕は信じないのだから
この幹線道路は交差点ばかりで
干からびた愛も楽器も戦車も
安く買うことができる
油性ペンで描いた秋の空を
消しゴムで消し続けたら
爪を一枚
擦りむいてしまった
あなたはいつまでも笑わなくとも良い
右手からどうぞ、なんて看護師の言葉など
僕は信じないのだから
この幹線道路は交差点ばかりで
干からびた愛も楽器も戦車も
安く買うことができる
油性ペンで描いた秋の空を
消しゴムで消し続けたら
爪を一枚
擦りむいてしまった


僕の必殺技のことを奴らは知らないでしょう
とても細いところで空ばかり見上げている奴らですから
ああ、高い高いですねえ
と、その間に電話をかける仕事は朝飯前です
朝飯前なのでまだ歯も磨いていませんが
発音も鮮やかにつるつるの受話器に語りかけます
つるつるなのは仕方の無いことです
受話器はかつて生きていたものたちの頭蓋骨だ、と言っていました
試しに自分の皮膚をなぞるとざらざら音がします
奴らはそんな僕をサメハダと罵るばかりです
そのために殺されたサメがいるというのなら
やはり奴らは敵に違いありません
だからといってサメに恩義があるわけでもないのです
そのあたりは根回しとか腹芸とかそんな類の、大人は汚い
と言うのは寧ろ子供ではなく大人の方なのでしょう
秋ですねえ
秋ですよ
そういうわけですから奴らに必殺技を披露するのも
近からずとも遠からず、といったところでしょうか
ただただありていに言えば
受話器の光沢が純度を増しいる間に
食卓の上で着々と朝食は進行しています
とても細いところで空ばかり見上げている奴らですから
ああ、高い高いですねえ
と、その間に電話をかける仕事は朝飯前です
朝飯前なのでまだ歯も磨いていませんが
発音も鮮やかにつるつるの受話器に語りかけます
つるつるなのは仕方の無いことです
受話器はかつて生きていたものたちの頭蓋骨だ、と言っていました
試しに自分の皮膚をなぞるとざらざら音がします
奴らはそんな僕をサメハダと罵るばかりです
そのために殺されたサメがいるというのなら
やはり奴らは敵に違いありません
だからといってサメに恩義があるわけでもないのです
そのあたりは根回しとか腹芸とかそんな類の、大人は汚い
と言うのは寧ろ子供ではなく大人の方なのでしょう
秋ですねえ
秋ですよ
そういうわけですから奴らに必殺技を披露するのも
近からずとも遠からず、といったところでしょうか
ただただありていに言えば
受話器の光沢が純度を増しいる間に
食卓の上で着々と朝食は進行しています


手提げ袋いっぱいにイクラを入れて
食べ歩くあなたが
前頭葉のプールに浮かんで
今は秋の空になってる
風船は青い
わたしはいっぱいにあなたの似顔絵を描いて
あとファースト・ネームや
全部ひっくるめて安心してください
と、昨晩電話があった
食べ歩くあなたが
前頭葉のプールに浮かんで
今は秋の空になってる
風船は青い
わたしはいっぱいにあなたの似顔絵を描いて
あとファースト・ネームや
全部ひっくるめて安心してください
と、昨晩電話があった


本日はお日柄もよろしく
押入れの中は相変わらずのじめじめ模様が続きます
いつまでこの暗闇の中でかくれんぼをしなければならないのか
親方にも僕にもよくわかりません
ただ、かび臭い布団や枕に囲まれたり包まれたりしていると
親方の英語の発音もいつもより透きとおっている気がして
どうやら自分が鬼であることを忘れておられるようです
親方はカンナの使い方もピアノの弾き方も教えてくれませんが
親方、数えてください、と言うと
いち、にい、さん
親方は定理の説明を中断して
暗闇に溶けていくようにゆっくり数え始めます
きっと親方の唇は正確に動いているのでしょう
僕には無理なことだし、その必要もないことです
親方、こんなことを考える僕は生徒に喩えるなら
良くない生徒なのかもしれません
ふすま一枚隔てた向こう側はハイウェイで満たされて
緑色のスポーツカーや何やらも軽快に走っている頃と思います
気管支の弱い僕の咳がまた一つ増えるわけですが、親方
それは忘れられないということとどう違うのでしょうか
たとえば親方が好きだった整然と並ぶ故郷の模型
親方が愛していた綺麗な声で鳴くカエルたち
そしてその一匹一匹を僕が死なせてしまったこと
なども
親方は「もういいかい?」とだけ訊きます
僕の「まあだだよ」はこの暗闇では「もういいよ」と同じことです
顔が見えなくて良かった
それでも親方の変なところにある黒子を思い出して
ついつい笑ってしまうのだけど
乙女の純情みたい
という言葉で恥ずかしがったのは僕ではなく
親方の方でしたね
お日柄のよろしい一日の終わりを告げる音楽が流れ
扉や窓が閉じられる時刻となりました
親方がふすまを開けると光が目に痛くて
かくれんぼの終わりを知らなかったのは僕だけでした
知らないことは知らなかったという事実に気づいた後で
いつもそのことに小さく鳴いてしまう
親方はゆっくりとスポーツカーに近づいていきます
やはりまだ僕には乗れません
親方、そこから僕の姿が見えますか
決して振り返りもしないで
押入れの中は相変わらずのじめじめ模様が続きます
いつまでこの暗闇の中でかくれんぼをしなければならないのか
親方にも僕にもよくわかりません
ただ、かび臭い布団や枕に囲まれたり包まれたりしていると
親方の英語の発音もいつもより透きとおっている気がして
どうやら自分が鬼であることを忘れておられるようです
親方はカンナの使い方もピアノの弾き方も教えてくれませんが
親方、数えてください、と言うと
いち、にい、さん
親方は定理の説明を中断して
暗闇に溶けていくようにゆっくり数え始めます
きっと親方の唇は正確に動いているのでしょう
僕には無理なことだし、その必要もないことです
親方、こんなことを考える僕は生徒に喩えるなら
良くない生徒なのかもしれません
ふすま一枚隔てた向こう側はハイウェイで満たされて
緑色のスポーツカーや何やらも軽快に走っている頃と思います
気管支の弱い僕の咳がまた一つ増えるわけですが、親方
それは忘れられないということとどう違うのでしょうか
たとえば親方が好きだった整然と並ぶ故郷の模型
親方が愛していた綺麗な声で鳴くカエルたち
そしてその一匹一匹を僕が死なせてしまったこと
なども
親方は「もういいかい?」とだけ訊きます
僕の「まあだだよ」はこの暗闇では「もういいよ」と同じことです
顔が見えなくて良かった
それでも親方の変なところにある黒子を思い出して
ついつい笑ってしまうのだけど
乙女の純情みたい
という言葉で恥ずかしがったのは僕ではなく
親方の方でしたね
お日柄のよろしい一日の終わりを告げる音楽が流れ
扉や窓が閉じられる時刻となりました
親方がふすまを開けると光が目に痛くて
かくれんぼの終わりを知らなかったのは僕だけでした
知らないことは知らなかったという事実に気づいた後で
いつもそのことに小さく鳴いてしまう
親方はゆっくりとスポーツカーに近づいていきます
やはりまだ僕には乗れません
親方、そこから僕の姿が見えますか
決して振り返りもしないで


軍艦巻きは週に一度
それが我が家のおきて
ちぐりす飲んでゆうふらてす
シャバのシャバダバ
シャバダバ・ダバダ
うちのじーさん、ひーじーさんの子供
じーさんの子供はとーさん
じゃなくて、かーさん
ひとりっこのかーさん
しんぶんしは逆さまから読んでもしんぶんし
しんぶんしのこども
大切なこども
してみたい
深刻な話
極端な話
面倒くさい話
緑の中を走り抜けていかない
真っ赤じゃないポルシェじゃない
けもの
足が四本
ツノじゃないのが二本
塩辛の逆襲
美味しい美味しい帝国の塩辛
ひーじーさんの作った
塩辛
走るな
止まるな
泣くな
笑うな
むしろ泣くな
布団が空を飛んでいく
いつまでも
涼しげ
気がつけば
一面の鼻筋
それが我が家のおきて
ちぐりす飲んでゆうふらてす
シャバのシャバダバ
シャバダバ・ダバダ
うちのじーさん、ひーじーさんの子供
じーさんの子供はとーさん
じゃなくて、かーさん
ひとりっこのかーさん
しんぶんしは逆さまから読んでもしんぶんし
しんぶんしのこども
大切なこども
してみたい
深刻な話
極端な話
面倒くさい話
緑の中を走り抜けていかない
真っ赤じゃないポルシェじゃない
けもの
足が四本
ツノじゃないのが二本
塩辛の逆襲
美味しい美味しい帝国の塩辛
ひーじーさんの作った
塩辛
走るな
止まるな
泣くな
笑うな
むしろ泣くな
布団が空を飛んでいく
いつまでも
涼しげ
気がつけば
一面の鼻筋


二時間待たされたあげく
僕はタクシーの助手席に通された
運転席の医者がちらりと僕のお腹を見ながら
おめでたですね、と言う
何か心あたりは?
そういえば確かに最近酸っぱいものの数ばかり数えているし
犬にもよく吠えられる
ついでに言うと隣ん家の関さんは関さんなのに関サバが嫌いだし
僕の奥さんは化粧ののりが悪いと一日中文句をたれる
ちょうど三ヶ月くらいですね、このまま空港に行きます
と医者は言う
そうか高飛びしなければいけないのだなあ
流れていく景色を見ながらぼんやり考える
高飛びの資金として医者はいくらか用立ててくれた
ついでに高飛びに美女はつきものだそうで
後部座席から一番豊満な看護婦も選んでくれた
豊満なはずだ、何しろ牛なのだから
牛の手綱を引いてタラップを上がると
牛はご遠慮いただいてます
搭乗員に注意される
そんなこと言われても牛との思い出などまだ全然ないのに
淋しさのあまり尻尾の毛を引っ張ってみる
牛は解れて巻き取ると大きな毛玉になった
それならいいですと搭乗員が言うので
毛玉になった牛を持って飛行機に乗り込む
レバーとかが美味しそうな牛ですね
皆から声をかけられる
これは乳牛ですからと言うと祝福の拍手が起こる
このままどこに飛んでいくのかわからないが
今日は勝負パンツを履いているから大丈夫かもしれない
僕はタクシーの助手席に通された
運転席の医者がちらりと僕のお腹を見ながら
おめでたですね、と言う
何か心あたりは?
そういえば確かに最近酸っぱいものの数ばかり数えているし
犬にもよく吠えられる
ついでに言うと隣ん家の関さんは関さんなのに関サバが嫌いだし
僕の奥さんは化粧ののりが悪いと一日中文句をたれる
ちょうど三ヶ月くらいですね、このまま空港に行きます
と医者は言う
そうか高飛びしなければいけないのだなあ
流れていく景色を見ながらぼんやり考える
高飛びの資金として医者はいくらか用立ててくれた
ついでに高飛びに美女はつきものだそうで
後部座席から一番豊満な看護婦も選んでくれた
豊満なはずだ、何しろ牛なのだから
牛の手綱を引いてタラップを上がると
牛はご遠慮いただいてます
搭乗員に注意される
そんなこと言われても牛との思い出などまだ全然ないのに
淋しさのあまり尻尾の毛を引っ張ってみる
牛は解れて巻き取ると大きな毛玉になった
それならいいですと搭乗員が言うので
毛玉になった牛を持って飛行機に乗り込む
レバーとかが美味しそうな牛ですね
皆から声をかけられる
これは乳牛ですからと言うと祝福の拍手が起こる
このままどこに飛んでいくのかわからないが
今日は勝負パンツを履いているから大丈夫かもしれない


アパートの二階で
ワニに噛み付かれた瞬間
窓から見えた
新しい快速列車の青さや
大人びたきみの
二の腕のこと
何故花屋に生まれたかったのか
橋の欄干にもたれながら
何度も懐かしんで
愛しくした
ワニに噛み付かれた瞬間
窓から見えた
新しい快速列車の青さや
大人びたきみの
二の腕のこと
何故花屋に生まれたかったのか
橋の欄干にもたれながら
何度も懐かしんで
愛しくした


あの人の好きな牛乳羹を持っていくことにしました
手作りを重宝するあの人のことですから
わたしの選択肢としては何よりも手作りが一番だったのですが
朝から冷蔵庫の調子が悪いようで程よく牛乳が手に入りません
それならばせめてもと歩いて数分のところにある老舗で用事をしました
老舗の女将は気難しいことでこの界隈でも有名な人です
私とは長い付き合いになるので姉妹のように良くしてくれます
それなのに、誰からも姉妹のようだと言われたことはありません
細かく見れば爪の形とか引き際の様子とか似ているところは多々あるのですが
老舗というのはそれだけでも大変なことなのです
簡単な挨拶だけして牛乳羹をひとつ買うと
やはりわたしの作るものよりやや緩めで
タプンタプンという言葉がぴったりでしょうか
いつもタプンタプンよねえ、と女将は歯を見せて笑います
それよりもわたしは店内の塗装の剥げたところが気になって仕方がないのです
実の姉にも言ったことがないので言わないことにしています
あの人は家で地図帳を開き
頁の上を指でなぞっていました
牛乳羹だけを置いて帰るつもりでしたが
あの人がいっしょに食べていけ、と言うものですから
地図帳を見ながら二人で食べました
途中、いつもよりタプンタプンだな、という言葉に頷いたのは
ほんの少しでも似ているところがあればいいと思ったからかもしれません
気が付くとすっかり日が暮れていて
もうそんな時間ではないな
と、あの人は地図帳を閉じました
手作りを重宝するあの人のことですから
わたしの選択肢としては何よりも手作りが一番だったのですが
朝から冷蔵庫の調子が悪いようで程よく牛乳が手に入りません
それならばせめてもと歩いて数分のところにある老舗で用事をしました
老舗の女将は気難しいことでこの界隈でも有名な人です
私とは長い付き合いになるので姉妹のように良くしてくれます
それなのに、誰からも姉妹のようだと言われたことはありません
細かく見れば爪の形とか引き際の様子とか似ているところは多々あるのですが
老舗というのはそれだけでも大変なことなのです
簡単な挨拶だけして牛乳羹をひとつ買うと
やはりわたしの作るものよりやや緩めで
タプンタプンという言葉がぴったりでしょうか
いつもタプンタプンよねえ、と女将は歯を見せて笑います
それよりもわたしは店内の塗装の剥げたところが気になって仕方がないのです
実の姉にも言ったことがないので言わないことにしています
あの人は家で地図帳を開き
頁の上を指でなぞっていました
牛乳羹だけを置いて帰るつもりでしたが
あの人がいっしょに食べていけ、と言うものですから
地図帳を見ながら二人で食べました
途中、いつもよりタプンタプンだな、という言葉に頷いたのは
ほんの少しでも似ているところがあればいいと思ったからかもしれません
気が付くとすっかり日が暮れていて
もうそんな時間ではないな
と、あの人は地図帳を閉じました