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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2008/07/18 (Fri)
 
 
あなたがブリキの本を開く

かつて繁栄した都と
路地裏で生き抜いた猫の
長い物語が始まる

朝から駐車場を壊す音がする日
僕は電柱を売りに出かける

どこか遠くで
孤独に電柱を
つくり続ける人のために

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2008/07/18 (Fri)
 
屋根をつくった
もう雨が降っても
濡れなくてすむ

立ったまま目をつぶると
近くや遠くから
夏の音が聞こえてくる
いつもと同じなのに
いつもと同じくらい懐かしい

誰か早く壁とか柱とか
つくってくれないだろうか
重みに腕が震える
 
2008/07/16 (Wed)
  
 
村田川の土手を歩いていると
おーい
誰かが僕の名を呼ぶ

振り返っても
きれいな夕日がひとつあるだけだった

僕の名前を呼んだのはおまえかー
違うよー、と夕日が答える
なんだ、違うのか

どうでもいい後日談
僕の死体が
冷蔵庫の中から見つかったそうだ
  
 
 
2008/07/15 (Tue)
 
 
魚のために
椅子をつくる
いつか
座れる日のために
 
背もたれのあたりを通過する
ふと、足りないものと
足りすぎているものとが
少しずつある

雨に濡れた生家が
生乾きのまま
風のようなものにゆれる
匂いがしている
 
恥ずかしいけれど
幸せも不幸せも
本当は鋳型なんて
最初からなかった
  
 
 
2008/07/09 (Wed)

伸ばした舌の先に
ビルがある
冷たい窓枠、の震える
階段のない腕で
わたしたちは穴を掘り
整地を繰り返す
積乱雲の遥か下
茂る葉がホーム
ざわめく
誰をも騙すことない
黙秘の代わりに
  
2008/07/07 (Mon)
 
 
コインロッカーの側に
コインロッカーがあって
そのことだけが
片隅のようなところで
どこまでも続く
何もない、の人が
鍵を開けていく
と、少しずつ
指はあやふやになり
僕らの拙い肉体がついた美しい嘘は
今日も詩と呼ばれる
 
 
2008/07/03 (Thu)
 
 
白地図に雪が降り積もる
数える僕の手は
色のない犬になる
古い電解質の父が
真新しい元素記号を生成している間に
妹は今日はじめて
言葉を書いた
それを言葉だと信じて疑わないので
僕は薄い溶液に嗚咽しながら
ひとつひとつ添削をして
あきらめていく
幅広の机から化学が溢れ出して
その向こう、暖かな場所では
母が微笑みを絶やすことなく
世界を切り刻んでる
  
  
2008/06/25 (Wed)


ありがとう
僕らの朝食
光あふれる幸福な食卓に
小型の爆弾は落ちた

ばらばらになって美しく輝く体を
ひとつひとつ拾い集め
元に戻していく
どちらのものかわからないところは
昔のように二人で仲良くわけあった

ありがとう
これから郊外の量販店まで
日用雑貨を買いに行く予定だった
ありがとう
今日、命として認められた
ひとやものたち

黙祷しようとして
どうしても瞼だけが
見つからなかった


2008/06/21 (Sat)


初夏の光
ひとつ前の駅で降ります
虫かごもないのに


+


栞はかつて
誰かの魚でした
本の中で溺れるまでは


+


夕日のあたたかいところに
古いネジが落ちています
いつか機械からはぐれて


+


六月の日よけに懐かしい
あなたの手が触れていました
ひとつのことのように


+


草行きのバスに乗ります
生きている魚にも
瞼をつけてあげたかった 


+


掌に残る水温の痕
大きな船で発ちます
音にもなれずに


+


ゆっくりと通過していくのは
海の内緒話でしょうか
柔らかな雲のお墓へと



2008/06/17 (Tue)

窓を拭いていました
ドーナツを食べるあなたが映っていたので
わたしは飛び込みました
泳ぎました
しばらくそのままでしたが
砂浜があったので座りましたが
どうやら無人島でした
何故無人島と知ったかということについては
安心が無かったからでした
それで見てみるとまだあなたがドーナツを食べていたので
水のついていた服を乾かそうと思い
ベランダに行ってなるべく干そうと思いつきました
6月の日よけをくぐると
頚椎のあたりに軽い痛みがあって
まだ皆が椅子に座っているところでした
何か授業で見たことのある風景のようでしたが
背もたれを壊すと怒られてしまって
それはわたしの納得のひとつでした
無人島だから机の引出しを開けました
ドーナツ、楽しみにとっておいたのに
言葉だけで
やはり晴れて今日は誰もいません
 

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* ILLUSTRATION BY nyao *