春だから全員集合

またね
春風から一番遠いところで
皆でそうつぶやいたら
誰かの下唇に
名前の知らない花が咲いた
なあ、せっかくだからさ
もうしばらく
楽しいおしゃべりをしよう

歩く箱

朝、リビングにあった箱が
帰宅すると寝室にあった
次の日はお風呂場
そしてトイレに
週末は首輪と鎖を買ってこよう
公園の桜はまだ早いだろうけど

戦っている

目が覚めると
右手がチョキになっていた
いったい僕は何と戦ったというのだろう
夜中、こんなものを振り回して
援軍の来ない小さいベッドの上で

極楽浄土

国民的アイドル！
という犬の鳴き声をきいて
ああ、自分は死んでしまったんだなあ
そう気がついてからずっと
同じセーターばかり着ています
夢のように毎日は過ぎて行くけれど
どんなに楽しくても
思い出は増えません

退室

部屋にはもう
君の姿はなかった

外に向かって開かれた窓
そして
その向こうに広がっている青い空
の絵

おそらく君は靴をはいて
ドアから出て行った

クレゾールは時計仕掛け

クレゾール、くれ！
と象からの留守番電話
鳩のために刑事はかける

それは喩えるなら
きっと春

明日はもっと優しい

声

吉岡君
電車の中で思わず声をかけそうになった

よく考えてみれば
こんな時間、こんな場所に
吉岡君がいるはずもないというのに
あの日と同じ顔
学生服のままで

そんな僕はまだ
きみに謝りたかった

モンキーマジック

今、この瞬間
広大な宇宙のどこかで
サルが一本のマジックペンを拾った

２００４年

こうしてまた一つ
新たな旅が始まったのだ

ポエム・ミーツ・ミー

ポエムだよ！全員集合！
チャンチャラチャンチャンチャンチャンチャーン
オーッス！声が小さい！

博物館の一番隅で
そうつぶやいたら
僕の知らないどこかの庭に
春の花が咲いた

素晴らしい世界

慈しんだ
あの空を
この朝を
食卓のピーナッツバターを
素晴らしい、素晴らしいと言っても
それを咎める者など
誰もいなかった