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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2024/12/05 (Thu)
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2012/03/23 (Fri)
 
 
ひまわりの振りをして 
きみが咲いている 
太陽の方を向いて 
きれいに咲いている 
ぼくは影の振りをして 
地面に横たわる 
こうしていると何だかとっても 
時間の無駄だね 
無駄だから
愛しいものばかり
増えて困るね
  

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2012/03/21 (Wed)
 
 
速度の中を歩く 
壊れた体温計を 
脇の下に挟んだまま 

街には乾燥注意報が出ている 
人が乾燥に注意している
拾い物が拾われてる
忘れ物が忘れられてる

ポケットに階段 
指で降りる 
誰も知らない 
指で降りる

きみに似た人を探す
本当はきみを探しているのに
街外れで速度は終わり
普通の中を歩き始める
  
  
 
2012/03/20 (Tue)
 
 
身体と言葉の境界に沿って
路面電車が夜を走る
ミルクをつなぐ、世界はまだ
つぶやきをやめない

みんな季節
みんな瞬間
みんな波、その動き
みんないつか
割れていきたい

呼気と吸気が交差する
駅はひとつずつ眠り始める
こぼれる文字、風になる文字
ぼくは手帳の
かすれた罫線になる
  
  
 
2012/03/19 (Mon)
 
 
毎朝なのかもしれない 
ぼくの指は豆腐に刺さって 
抜こうとすればするほど 
意味との距離が遠ざかっていく 
交番に住むアマガエルに 
おはようを言うきみの顔が 
今日もきれいだから
もう懐かしいことしか
思い出せない 
外は雨の日のように静か
雨の日と間違えた人が
傘を差して歩く
ぼくのついた嘘が
細々ときみに伝わる
 
 

2012/03/18 (Sun)


熱気球が関東地方の上空を
ゆっくりと飛ぶ
放課後のように
見損ねた夢のように
 
今日は世界のいたる所
一面の朝でしょう
と、ラジオの人が朗らかに言う
きみは台所で何か千切ってる
ぼくはコンクリートに
何か叩きつけてる
 
体操の音楽が流れ始めて
ぼくらはまだ
騙されなければならないのか
自分の国に産まれて
 

2012/03/16 (Fri)
 
 
信号待ちをしている間
わたしたちは話をしました
空は曇っていました
とても長い信号でした
三十メートルくらいはありました
話も長くなりました 
けれどわたしたちの身体と言葉では 
五メートルくらいが精一杯でした 
結論の出る話ではありませんでしたが 
信号が変わったので終わりにしました 
鳥が飛び立ちました 
そのことについて話をしました
よく見る形と大きさでした 
間違えるといけないので 
鳥の名前については
二人とも黙っていました
  
  
 
2012/03/14 (Wed)
 
 
山本さんが一人でぽつんと
落ちていた
落ちちゃったの?と聞くと
落ちちゃったよ、と山本さんは笑った
重力には勝てないよ、と笑った
いつか勝てるといいね、と僕も笑った
秋の空は晴れていた
何も無ければ地平線まで見えるくらいに
いつまでも晴れていた
こんな日は山本さんではない人とも
会いたいと思う
  
  
  
 
2012/03/12 (Mon)


空の重さを支えるように
家という家には屋根がある
その上をきらきらと
小魚の群れが通り過ぎて行く
人は言葉だけで幸せになれるのに
ご飯を食べないと生きていけない
今日の行事は家庭訪問
先生がカバン等を持って
町内を歩いている
 
2012/03/11 (Sun)
 
 
犬が僕の名前を呼ぶ
僕が返事をする

また犬が僕の名前を呼ぶ
また僕が返事をする

そんなやり取りが愉快で
何度も繰り返す
そうしているうちに
犬も僕もすっかり年を取った

今、僕はひとりで静かに
フェリーを待ってる
  
  
 
2012/03/10 (Sat)
 
 
アルミニウムの陰で 
子守歌を歌う
眠っている人は
おしゃべりだから
わたしも話せることは
すべて話したくなる
秋雨前線が北上して
他に何もないこの辺りにも
やがて雨が降るだろう
残っていた夏草の匂いで
わたしは指を切った
  
 
 
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* ILLUSTRATION BY nyao *