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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
56
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2024/04/29 (Mon)
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2011/11/28 (Mon)


ヒグラシが鳴き始めた
雨は降ったり、降らなかったり
時々、知らなかったり
 
フラスコ売りの兄は
すべてのキャベツを刻み終えると
沈まない潜水艦に乗って
埼玉に帰っていった
 
父はベッドに寝たまま
これから俺はどこに行けばいいんだ
と言って小銭入れを握りしめている
 
もう死にたいよ、と母が呟く
俺だって死にたいよ、と返す
いいんだよ、明日になれば
みんな忘れてるんだから
誰も何も覚えてないんだから
 


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2011/11/27 (Sun)
 
 
深夜、小さな
発車ベルが鳴って
ジェット・コースターは
動き出す
大きな音をたてずに
ゆっくりと
星と星の間を落下する
乗っている人を
起こさないように
幸せな夢を
壊さないように
 
 
 
2011/11/24 (Thu)


テレビで野球中継を見ていると
ボールを渡される
九回裏ツーアウト・スリーボール・ツーストライク
最後の一球を投げるのがぼくの役目らしい
キャッチャーの構えたところに渾身の直球を投げる
バッターが空振りをする
チームメイトがマウンドに走って集まってくる
優勝したのだ
監督が僕の肩に手を置き
もうこんな所に戻ってくるんじゃないぞ、と言う
ぼくは頷いて薄暗いホームから列車に乗る
バッグの中には水着と浮き輪が入っている
海に行こうと思っていたのに
車内でクラゲに刺されて列車を降りる
これで何度目かの途中下車になる
病院の待合室に座っている間に
夜がすっかり更ける
名前を呼ばれて受付にいくと
きみがあの頃と同じ姿で待っている
会いたかったよ、ずっとだ、と
喉まで出かかった言葉を飲み込む
渡された問診票に
言いたくても言えなかった「さよなら」を
一文字一文字丁寧に書く
 


2011/11/23 (Wed)
 

縄跳び遊びをしていると
友だちの山村さんがやってきて
それ、ヘビだよ、と
声をあげて笑う
よく見るとわたしの握っているのは
ヘビの頭と尻尾
地面に何度も打ちつけられたヘビは
ぐったりと息絶えている
ヘビを殺してしまったのは初めてなので
とてもどきどきしていると
埋めてあげよう、と山村さんは言った
二人で穴を掘り、ヘビを入れて
シャベルで土をかける
しばらくすると、山村さんが
自分に土をかけてるよ、と
いっそう大きな声で笑いだした
気がつくと穴の中にはわたしがいて
自分で頭から土をかけている
泣きながら土をかけている
穴から出て辺りを見まわす
山村さんもヘビもいなければ
縄跳びも穴もない
だだっ広いところに一人で立っている
迷子になったことまでは理解できたけれど
誰を探せばよいのか忘れてしまった
 

2011/11/22 (Tue)
 
 
潮風が吹くだけの頁がある
そこまで読むと
少年はいつも眠くなってしまう
少しずつ部屋に隙間ができる
西日とともに
明日、と呼ばれる不安が
部屋を満たし始める
ハエが小さな声で鳴く
テーブルの隅で
夏に別れを告げている
  
  
 
2011/11/21 (Mon)
 
 
壊れたヤドカリが階段を上る
その先には二階があるだけなのに
暑いと感じる人は、暑い、と言う
今日という退屈な一日
下駄屋のおじいさんが亡くなった
母を斎場まで車で送った
一時間後に迎えに行った
昨日は普段着で買い物をしていたけれど
今は喪服で話をしている
読みかけの本には栞の代わりに
小型のウミウシを挟んでおいた
頁は水分で湿っているだろう
  
  
 
 
2011/11/20 (Sun)
 
 
どこかで小型犬が吠えている
真夏なのに帽子を被った女性の人が
オレンジ色の自動車を運転している
ガソリンは昨日より一リットルあたり二円安い
空は曇っている、天気予報士がしゃべったとおりに
さっきまで、きみと手を繋いで歩いていたはずなのに
いつの間にか壊れたメトロノームを引きずっている
メトロノームは壊れていく
外側のプラスチックはあちらこちら欠けて
いろいろな音をたてて壊れていく
同じくらいの背丈の人とすれ違う
その背中ではセミの幼虫が羽化している
観察日記をつけながら少年がその後を歩いて行く
もしかしたら、きみ、なんて人は
最初からいなかったんじゃないか、と思い始めてる
でも、実際にこうして手を繋いでいるし
いくつかの口癖も鮮明に思い出せるのだ
 
  

 
2011/11/19 (Sat)
 
 
キャッチャーがサインを出す
マウンドでは扇風機が首を振っている
サインを変える
それでも扇風機は首を振る
そうしているうちに
野手も打者も応援団も実況席も
夏の暑さに溶けていく
サインは一向に決まらない
たとえ一人と一台だけ残されても
戦いは続く
  
 
 
 
2011/11/18 (Fri)
 
 
とけいのは
ぐるまがた
くしーのこ
うぶ

せきでだ
らしなく
ころが
る、ゆうや
けのなか
どこまでも
すすむ
ゆうや
すすむ
なつやすみお
わるよ、
わるね、もうね
なさいい
きてるう
ちに
 
 
 
2011/11/17 (Thu)
 
 
午後八時五十分発の
てんとう虫に乗る
潰さないように気を付けていると
言葉に疲れた兄が一人やってきて
優しい飲み水を差し入れしてくれた
ありがとうございました
そうお礼言う前に
てんとう虫は発車してしまった
月が明るくて
星の少ない夜だけど
今度てんとう虫が停車したら
洒落たカーテンを買って
窓に飾ろうと思う
こうして少しずつ剥がれていくんだね
剥がれて小さくなって
見えなくなっていくんだね
 
  
 
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* ILLUSTRATION BY nyao *