プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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湿った自転車を押して
海に向かいます
水つながりで
相性がとても良いのです
防風林の間を進むと
しばらく進むと
ポケットに小銭があります
ものが買えるくらいあります
壁に手をついているうちに
大人になっていた
大人ってみんなそんな感じがします
そして草や虫の
名前とか性質とかについても
話をしたりするようになります
海が見えてきました
さあ、楽しみましょう


窓ふきをしていたはずなのに
気がつくと父の背中を流している
こうしてもらうなんて何年ぶりだろう
父が嬉しそうに言う
十五年ぶりくらいじゃないかな
僕が答える
父の狭い背中から垢がポロポロと落ちる
お風呂、週一回じゃ駄目だよ
俺が風呂嫌いなの、知っているだろう
父の背中はどんどん薄くなっていく
透明になってしまうのではないか、
と心配になるくらいに
よし今度はおまえの番だ
そう言われて僕は後ろを向く
きれいに磨かれた窓ガラスには
僕の背中だけがうっすらと映り
外にあるのは寒い色をした空だろう


遊園地に「回転しない木馬」があった
妻と娘が乗り
僕が写真を撮ることになった
バーにおつかまりください
というアナウンスの後にブザーが鳴り
回転しない木馬が
回転し始めなかった
妻と娘が同じ場所から
笑いながら手を振っている
僕もシャッターを切りながら
時々手を振って応える
長かったり、長くなかったり
そんな一生のうちのほんの数分間
みんなで笑って
みんなで手を振る
終了のブザーが鳴るまで
夢中に家族であり続ける


紙を飛行機にして
窓から飛ばす
しばらくして
砂漠に不時着する
近くでは
砂場と間違えて迷い込んだ男の子が
砂遊びをしている
こんなに集めたよ
振り返って
砂でいっぱいになった
プラスチックのバケツを掲げる
その姿を見て
居間でアイロンをかけながら
母親が微笑んでいる
飛行機は元の一枚の紙に戻り
紙として再び
何処かに飛んでいく
窓を閉めて
室内を眺める
幸せとか不幸せとか関係なく
自分にとっては
あれが最後の一枚だった


歩いていた犬が棒に当たったころ
風が吹いて桶屋は儲かっていた
僕は爪に火をともしながら
石の上で三年間
糠に釘を打ち続けたのだった
壁には耳があった
障子には目があった
けれど死んだ人には口がなかった
類が友を呼んで
飛ぶ鳥はすべて落とされてしまった
秋ナスを食べさせてもらえなかった君が
石橋を叩いて渡っている
その下の川を河童が流れていく
長いものに巻かれたまま
どこまでも
いつまでも


朝の涼しい職員室で
担任の先生が亡くなっていた
若い女の先生だった
青白い横顔が見えた
海のように
とてもきれいだった
話は変わって
雲には感情がないと思う
感情があったら
空になど浮いてないと思う
翌日の天気も関係ないと思う
話は何も変わってない気がする


群れからはぐれたのだろうか
一頭のキリンが
丸の内のオフィス街を歩いていた
時々街路樹の葉を食べながら
それでもなるべく目立たないように
歩道の端の方を歩いていた
郵便ポストを見つけると
長い首と手足を畳んで
投函口から中に入った
遅くてもクリスマスまでには
故郷の草原に届くことだろう


水槽をおよぐ絵本に
住宅街のパンフレット
駐輪場は閉鎖された
ネクタイがまぶしい
夏の最後の午後に
アスファルトは坂道になり
知らない街へと続く
土のことなら、昨日
すべて語りつくしてしまった
真新しい公園のベンチ
お互い年を取ったね、と
年を取った人が
誰かに独り言ちている


浮遊する
言葉の粒子
その隙間に建ち並ぶ
高層の建築物
形づくられた
時間のない怒りは
未整理のまま
風が吹くのを
待ち続けている
空き地に咲く草花を
斥候が手土産に摘む
やがて
撃ち抜かれるまで